【金こそパワー】ITスキルで異世界にベンチャー起業して、金貨の力で魔王を撃破!

月城 友麻

文字の大きさ
52 / 73

52. 銀の鎖の男

しおりを挟む
 奪還作戦最終日――――。

 Orange軍は毎週奪われた村々の奪還作戦を粛々と実施し、数か月もすると旧領土は残すところ村一つとなっていた。

「さーて! バッチリ決めますよぉ!」

 氷結クリスタル幻影ミラージュで出撃したクレアは、純白の翼を青空に輝かせながらグングンと高度を上げていった。

 いつも通り超音速でターゲットの村をカッ飛んでいくクレア。氷結クリスタル幻影ミラージュに取り付けられた魔力探知機が、地上の魔物の位置をレーダーのように捕捉していった。

 すると前方に大きめの反応がいくつか浮き上がる。明らかに待ち伏せしているような布陣である。

「クレア! 右急旋回ハードスターボード!」

 画面を食い入るように見つめていたタケルは、焦って叫んだ。

了解ラジャー! くっ!」

 クレアは素早く操縦桿を倒すが、同時に森の中からファイヤーブレスの火柱がすっ飛んでくる。ワイバーンが潜んでいたのだ。

 ゴォォォォ!

 ギリギリで直撃は免れたものの、激しい灼熱の閃光が画面を真っ白にしてしまった。

 しかし、クレアは慌てず目を閉じゾーンに突入すると、冷静に体に染みついた機体の動きを思い出しながらバレルロールでファイヤーブレスをくるりと回避し、スロットル全開で上空へと離脱した。それはクレアでなければできない神がかった凄技だった。

 やがてカメラの視界が戻ってくるとクレアはニヤッと笑い、機体を背面宙返りさせていく。青空に純白の美しい機体が陽の光を浴びてキラリと輝いた。

 追いかけ始めていたワイバーンたちはそれを見て本能的に恐怖を感じる。華奢で小さな機体。しかし優雅に宙返りする姿には王者のオーラの香りが漂っていたのだ。

「おいおい! 敵は三体だぞ! 無理するな」

 タケルは思わず叫んだが、クレアは操縦桿の先端に付けられた発射ボタンのカバーをパカッと開けた。

「この空は私のよ! ファイヤー!」

 超音速で急降下しながら炎槍イグニスジャベリンが次々と放たれていく。

 ズン! ズン! ズン!

 慌てて逃げようとしていたワイバーンたちに正確に着弾し、爆音が森に響き渡った。

 ギュァァァァ!

 断末魔の叫びが響く中を氷結クリスタル幻影ミラージュは純白の翼を陽の光に煌めかせながら飛び去って行く。

「おぉぉ……神……か?」

 タケルはあっという間にワイバーンを三体も撃墜したことに圧倒され、言葉を失ったまま静かに首を振った。


         ◇


 後からやってきたドローンたちは、魔石爆弾を魔物の反応があった位置に向けてバラバラと落としていく。やがて魔物に占拠された村のあちこちで大爆発が起こり、キノコ雲が次々と立ち上がっていった。特に砦跡には集中的に爆弾が投下され、逃げ惑う魔物たちもろとも粉々に吹き飛ばしていった。

 あらかた掃討が終わるとゴーレムたちが残党狩りを始める。廃墟の中を、洞窟を、森の中を丹念に探し、隠れている魔物たちを撃破していく。

 やがて、教会の三角屋根のてっぺんに『食べかけのオレンジ』の旗がはためいた――――。

 ウォォォォ! やったぞ! バンザーイ!

 作戦司令室は歓声に沸いた。ついに失われた領土を全て人類の手に取り戻したのだ。それは一方的に押され続けてきた人類にとって、希望となる勝利だった。

 クレアはそんな歓声を聞きながら基地へと舵を切る。今回も無事に任務を達成し、貢献できた興奮が静かにクレアの心地よい疲れに色を添えた。

 ふぅと大きく息をつくとコーヒーを一口すするクレア。その時、照準カメラの隅に何かが動くのを見つけた。

 え……?

 若い長髪の男が翼の上に立っている。それもカチッとしたフォーマルのジャケットに銀の鎖を煌めかせてニヤリと笑っているのだ。

 飛んでいる飛行機の上に乗り込む男、それは常識を超えた禍々しさをはらみ、クレアの背筋にゾッと冷たいものが走った。

 慌ててクレアはバレルロールをし、曲芸飛行のようにクルクルと回る。さすがにこれには対応できなかったのか、それ以降カメラには捉えられなかった。

 しかし、これは明らかに異常事態である。

 クレアは帰投すると急いでタケルのところへ駆けて行った。

「タケルさん! 大変! 大変なの!」

 作戦成功に沸く指令室は歓喜に包まれ、タケルは多くの祝福攻めにあっていた。

「ク、クレア、どうしたんだ?」

氷結クリスタル幻影ミラージュの翼に男が乗っていたのよ!」

「は……? 誰が?」

「分かんないんだけど、ジャケットを着たキザな男が帰投中の翼に立ってたの」

「いやいやいや、飛行中の翼の上に立つなんてことはあり得ないよ」

 タケルは苦笑いをして肩をすくめる。

「でも、見たのよ!!」

 クレアは必死に訴えた。あんな明らかにヤバい奴を連れ帰ってきたとしたら大変な事になってしまうのだ。

「着陸する時も乗ってた?」

「いや……、私がクルクルって回ったら姿は見えなくなったんだけど……」

「なら大丈夫だよ、後で見てみるよ……。あっ! わざわざいらしてくれたんですか? ありがとうございます!」

 タケルはお世話になった協力者を見つけると、慌てて駆けて行った。

「あっ! ちょっともう!」

 クレアは逃げて行ってしまったタケルにムッとして、こぶしをブンと振る。

「もう!! どうなっても知らないわよ!」

 クレアはそう叫ぶと、プリプリしながら作戦指令室を後にした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...