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54. 可憐なる抵抗
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その直後、炎がブルブルっと震えた――――。
え……?
真紅に輝く目をギラリと光らせながら魔人が炎の中から飛び出してくる。魔人は紫色に輝く短刀を振りかざし、一気にクレアに襲い掛かった。
キャァッ!
ゾーンに入っているクレアは何とかギリギリ、銃身で受け止める。
くぅぅ……。
「おい、小娘! 今のはちぃとばかしヤバかったぞ?」
銀髪をチリチリと焦がした魔人は、赤い目をギラリと光らせながら短剣を押し込んでくる。
「なんで無事なのよぉ!」
力では到底かないっこないクレアは銃を振り切りながら横にすっと回避し、ファイヤーボールを撃ちながら逃げ出した。
魔人は涼しい顔でファイヤーボールを一刀両断にすると、嗜虐的な笑みを浮かべながら紫色に輝く刀身をペロリと舐めた。
◇
洞窟で緊急魔法が炸裂したことは第一級の緊急事態であり、タケルのスマホにも緊急速報が流れる。しかし、タケルは祝勝会の席で盛り上がっており、その警告音に気がつかなかった。
次々と大声で話しかけてくる酔っぱらいに囲まれ、タケルも辟易としていたが、功績のある者達をむげにはできない。ポケットの奥で鳴り響いてるスマホの音は運命の悪戯にかき消されていってしまった。
◇
クレアは奥の倉庫に逃げ込むと重い鉄の扉を閉め、しっかりとカギをかけた。サーバーの異常はタケルにも伝わっているはずだから、きっとタケルが助けに来てくれる。クレアはそう信じて時間稼ぎに出たのだった。
「タケルさん……、早くぅ……」
クレアはガタガタ震えながら手を組んで、来ないタケルを待ち続けてしまう。
ガンガンガン!
扉を乱暴に叩く音が響き、クレアは縮みあがる。
「ひぃぃぃぃ! タケルさぁぁぁん!」
クレアの碧い瞳には涙があふれてきた。
ブシュー!
その時、ドアのノブのがいきなり蒸気を上げてポロリと溶け落ちた。
穴の向こうに魔人の赤い瞳がのぞく。
「くっくっく……。あなたは私のペットの仇……。逃がしませんよぉ……」
ガン! とドアを蹴り、押し入ってくる魔人。
くっ!
クレアはポーチから護身用のナイフを取り出し、魔導のボタンを押して青く輝かせた。逃げる場所ももうなく、武器はこれだけである。これで何とか運命を切り開かねばならなかった。
「ははは、そんなもので私に歯向かおうというのか……ねっ!」
魔人は一気に間を詰めると素早い斬撃を次々と繰り出してきた。
キンキンキンキン!
目にも止まらぬ速さで繰り出されてくる紫の短剣を、クレアはゾーンで見切りながら何とかナイフで合わせ、かわし続ける。
くぅぅぅ……。
「そらそらそらそら! どうした? そのかわいい顔を切り刻んでやるよぉ。うっひっひぃ!」
魔人は興奮を隠さず、さらに斬撃の速度を上げてきた。
何とかゾーンでギリギリ対応できていたクレアだったが、腕がそろそろ限界である。どんなに見切れていても、身体がついてこれなければ待っているのは死なのだ。もう残り時間が少ないことに焦りは募る。
クレアは一計を案じ、短剣を受けながら一気に後ろに飛び、距離を取った。
「逃げたって無駄だよ!」
魔人は調子に乗って一気に間を詰める。
と、その時、クレアの碧い瞳がきらりと光った。なんとクレアは前に飛ぶ。一か八か捨て身の戦法に勝機をかけたのだった。
へっ!?
虚を突かれた魔人は短剣で合わせようとする。しかし、そんな力ない斬撃をクレアは横に弾くと、魔人の胸元にまんまと滑り込む。
「チェックメイト!」
クレアは全身の力を込め、ナイフを真っ青に輝かせると会心の一撃を魔人の胸元に叩き込んだ――――。
渾身の力を込めた青く輝くナイフが魔人のジャケットを切り裂き、胸の奥を貫く。
やぁぁぁぁ!
クレアは捨て身の戦法で活路が開けた……はずだった。
しかし……。
ナイフは手ごたえ無く、そのまま腕ごとどこまでも魔人の胸奥深くまでずっぽりと潜って行ってしまったのだ。
え……?
破れたジャケットの向こうに見えたのは虚無。光のない漆黒の闇だった。
「飛んで火にいる夏の虫。お馬鹿さん……。くふふ……」
刹那、魔人の胸に開いた虚無の穴から鋭い紫色のトゲが高速で射出され、クレアの胸を貫いた――――。
グフッ!
灼熱の激痛がクレアを硬直化させ、ピクピクと痙攣させる。
可愛い口から、鮮やかな赤い血がタラリと白い肌を染めていった。
「な、なぜ……」
「私は魔人だよ。狙うならのどだったねぇ? くふふふ……」
クレアはギリッと奥歯を鳴らすと、かすれ声をもらす。
「タ、タケルさん……、ごめんなさい……」
眼から光が失われ、ガクリと力尽きるクレア。
「可憐なる抵抗の終えん。美しい……。魔王軍の快進撃を黄泉から見ていたまえ。くふふふ……、はーっはっはっは!」
人類の運命を暗闇に沈める魔人の、陰湿な笑い声が洞窟に響きわたり、その残響はいつまでもこだました。
え……?
真紅に輝く目をギラリと光らせながら魔人が炎の中から飛び出してくる。魔人は紫色に輝く短刀を振りかざし、一気にクレアに襲い掛かった。
キャァッ!
ゾーンに入っているクレアは何とかギリギリ、銃身で受け止める。
くぅぅ……。
「おい、小娘! 今のはちぃとばかしヤバかったぞ?」
銀髪をチリチリと焦がした魔人は、赤い目をギラリと光らせながら短剣を押し込んでくる。
「なんで無事なのよぉ!」
力では到底かないっこないクレアは銃を振り切りながら横にすっと回避し、ファイヤーボールを撃ちながら逃げ出した。
魔人は涼しい顔でファイヤーボールを一刀両断にすると、嗜虐的な笑みを浮かべながら紫色に輝く刀身をペロリと舐めた。
◇
洞窟で緊急魔法が炸裂したことは第一級の緊急事態であり、タケルのスマホにも緊急速報が流れる。しかし、タケルは祝勝会の席で盛り上がっており、その警告音に気がつかなかった。
次々と大声で話しかけてくる酔っぱらいに囲まれ、タケルも辟易としていたが、功績のある者達をむげにはできない。ポケットの奥で鳴り響いてるスマホの音は運命の悪戯にかき消されていってしまった。
◇
クレアは奥の倉庫に逃げ込むと重い鉄の扉を閉め、しっかりとカギをかけた。サーバーの異常はタケルにも伝わっているはずだから、きっとタケルが助けに来てくれる。クレアはそう信じて時間稼ぎに出たのだった。
「タケルさん……、早くぅ……」
クレアはガタガタ震えながら手を組んで、来ないタケルを待ち続けてしまう。
ガンガンガン!
扉を乱暴に叩く音が響き、クレアは縮みあがる。
「ひぃぃぃぃ! タケルさぁぁぁん!」
クレアの碧い瞳には涙があふれてきた。
ブシュー!
その時、ドアのノブのがいきなり蒸気を上げてポロリと溶け落ちた。
穴の向こうに魔人の赤い瞳がのぞく。
「くっくっく……。あなたは私のペットの仇……。逃がしませんよぉ……」
ガン! とドアを蹴り、押し入ってくる魔人。
くっ!
クレアはポーチから護身用のナイフを取り出し、魔導のボタンを押して青く輝かせた。逃げる場所ももうなく、武器はこれだけである。これで何とか運命を切り開かねばならなかった。
「ははは、そんなもので私に歯向かおうというのか……ねっ!」
魔人は一気に間を詰めると素早い斬撃を次々と繰り出してきた。
キンキンキンキン!
目にも止まらぬ速さで繰り出されてくる紫の短剣を、クレアはゾーンで見切りながら何とかナイフで合わせ、かわし続ける。
くぅぅぅ……。
「そらそらそらそら! どうした? そのかわいい顔を切り刻んでやるよぉ。うっひっひぃ!」
魔人は興奮を隠さず、さらに斬撃の速度を上げてきた。
何とかゾーンでギリギリ対応できていたクレアだったが、腕がそろそろ限界である。どんなに見切れていても、身体がついてこれなければ待っているのは死なのだ。もう残り時間が少ないことに焦りは募る。
クレアは一計を案じ、短剣を受けながら一気に後ろに飛び、距離を取った。
「逃げたって無駄だよ!」
魔人は調子に乗って一気に間を詰める。
と、その時、クレアの碧い瞳がきらりと光った。なんとクレアは前に飛ぶ。一か八か捨て身の戦法に勝機をかけたのだった。
へっ!?
虚を突かれた魔人は短剣で合わせようとする。しかし、そんな力ない斬撃をクレアは横に弾くと、魔人の胸元にまんまと滑り込む。
「チェックメイト!」
クレアは全身の力を込め、ナイフを真っ青に輝かせると会心の一撃を魔人の胸元に叩き込んだ――――。
渾身の力を込めた青く輝くナイフが魔人のジャケットを切り裂き、胸の奥を貫く。
やぁぁぁぁ!
クレアは捨て身の戦法で活路が開けた……はずだった。
しかし……。
ナイフは手ごたえ無く、そのまま腕ごとどこまでも魔人の胸奥深くまでずっぽりと潜って行ってしまったのだ。
え……?
破れたジャケットの向こうに見えたのは虚無。光のない漆黒の闇だった。
「飛んで火にいる夏の虫。お馬鹿さん……。くふふ……」
刹那、魔人の胸に開いた虚無の穴から鋭い紫色のトゲが高速で射出され、クレアの胸を貫いた――――。
グフッ!
灼熱の激痛がクレアを硬直化させ、ピクピクと痙攣させる。
可愛い口から、鮮やかな赤い血がタラリと白い肌を染めていった。
「な、なぜ……」
「私は魔人だよ。狙うならのどだったねぇ? くふふふ……」
クレアはギリッと奥歯を鳴らすと、かすれ声をもらす。
「タ、タケルさん……、ごめんなさい……」
眼から光が失われ、ガクリと力尽きるクレア。
「可憐なる抵抗の終えん。美しい……。魔王軍の快進撃を黄泉から見ていたまえ。くふふふ……、はーっはっはっは!」
人類の運命を暗闇に沈める魔人の、陰湿な笑い声が洞窟に響きわたり、その残響はいつまでもこだました。
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