41 / 52
41. 煌めきの中に
しおりを挟む
目をつぶっていても眩しい、激しい閃光を通り抜けた瑛士は、重力が戻ってきたことにホッとしてそっと目を開いた。しかし、そこは見渡す限り真っ白の何もない空間である。
あ、あれ……?
瑛士は何もないところに一人放り出されていることに気がつき、困惑して辺りを見回した。
そこは床も真っ白、天井はあるのかないのかすら分からない、ただボウっと光る白い空間だけがどこまでも続いている。
「お、おーい! シアーン!」
瑛士は心細げな叫び声をあげて辺りを見回すが、ただ声は白い空間に吸い込まれていくだけだった。
「くぅ……、困ったなぁ……」
その時だった、ヴゥンという電子音がかすかに響き、一人の少女がすうっと現れた。
え……?
白いサイバースーツにシルバーのジャケットを羽織る少女は、ブラウンの長髪を揺らしながらじっと瑛士の顔をのぞきこむ。
「なんでシアンちゃんはこんな弱っちいのを……」
「あ、あなたは……?」
眉をひそめる少女に気おされながら瑛士は聞いてみる。
「ここはイミグレーション。神殿に入る資格があるかどうかチェックするところよ。でも……、キミに資格があるようには……見えないなぁ」
「し、資格……? 自分はシアンに連れられてきただけなので、資格と言われても……」
瑛士は冷汗を浮かべながら返す。
「人のせいにしない! 神殿に入るにはそれなりの能力と品格が求められるわ。あなたみたいのを入れたら私もシアンちゃんも責任も問われるんだから!」
少女は人差し指で瑛士の鼻先を押し、頬を膨らましながら怒りをぶつけてくる。
「そ、そりゃ、自分は見習いなので……。能力は低いかもしれませんが、人として恥ずかしくない生き方はしてきてるつもりです!」
シアンも責任が問われるとなると、自分だけの問題ではない。瑛士は頑張って言い返した。
「ふぅん……」
少女は斜に構え、瑛士をなめるように全身を見回し……、ニヤッと笑うとバッと腕を高く掲げた。
「じゃあ、試させてもらうわ!」
刹那、急に景色が変わった。ガラスの巨大なシャンデリアのような円柱状の構造物がずらりと並ぶ通路に転送されたのだ。
へっ!?
瑛士は驚いて辺りを見回し、その息を呑むような美しい光景に圧倒された。ガラスの巨大構造物はまるで生き物のようにキラキラと微細な輝きを放ち、その不思議な煌めきにはどこか心に迫るリズムを感じる。
そんな、小屋サイズのガラス構造体がずらりと見渡す限り並び、それだけでなく通路の金網の下にも上にも幾重にもそれが重なっているのだ。
「ここはどこかわかるかしら?」
少女はいたずらっ子の笑みを浮かべながらドヤ顔で聞いてくる。
「ど、どこって……」
瑛士は困惑した。こんな初めて見る壮大な構造物など答えようがない。
ただ……。
思い当たるとしたらさっきシアンが言っていた『キミの故郷だぞ?』という言葉だった。海王星にあるのは神殿と故郷。であれば、ここは故郷、つまり、地球を創造しているコンピューターのデータセンター……ではないだろうか?
「も、もしかして……僕の故郷……?」
「へぇ……、思ったより賢いじゃん」
少女は意外そうな顔をしてうなずいた。
「マ、マジか……」
と、なると、このガラスの構造体は地球を創っているコンピューターということになる。
瑛士はガラス構造体に駆け寄るとじっと眺めてみた。それはキラキラと微細な光を放つ畳サイズのガラス板が、中心に向かってたくさん挿さって作られた円筒だった。その円筒がいくつも重ねられて一つのシャンデリアのように見えている。これが本当にコンピューターだとするならば、ガラスでできた光コンピューターで、この溢れ出す煌めきは今この瞬間の地球の誰かの営みそのものということになる。そして、自分もまた、この煌めきの中に生まれ、暮らしてきたに違いない。
ほわぁ……。
瑛士は上下左右を見回し、その壮大な光コンピューターの群れに圧倒され、思わず首を振った。
「では、試験開始だよ! どこかに時限爆弾を隠したんだ。見つけられたら合格。見つけられなければ……ドッカーン! きゃははは!」
少女は嬉しそうに笑った。
「じ、時限爆弾!?」
「そう、キミが本当にシアンちゃんが思うような人なら見つけられるはず。失敗したら八十億人の人達と共にドカーン! くふふふ……」
「な、なんだよそれ……」
パパを生き返らせるどころか、地球が木端微塵になってしまうかもしれない事態に瑛士は頭を抱えた。
なぜ、自分の資質を見るだけに八十億人の人たちの命を危険にさらすのか? 神殿にはぶっ飛んだ少女しかいないのか? 瑛士はあまりにも無配慮な試験に頭が痛くなってきた。
「ほらほら、時間ないよ! 早く見つけないとドカーンだぞ! ぐふふ」
少女は嬉しそうにけしかける。
瑛士は楽し気な少女の方をキッとにらむと、大きく息をついて辺りを見回した。
通路はどこまでも向こうまでサーバーが並び、それが奥にも上下の階にも延々と続いている。走り回って探せるような広さじゃない。
はぁ……。
瑛士はその意地悪な試験にウンザリしてガックリとうなだれた。
あ、あれ……?
瑛士は何もないところに一人放り出されていることに気がつき、困惑して辺りを見回した。
そこは床も真っ白、天井はあるのかないのかすら分からない、ただボウっと光る白い空間だけがどこまでも続いている。
「お、おーい! シアーン!」
瑛士は心細げな叫び声をあげて辺りを見回すが、ただ声は白い空間に吸い込まれていくだけだった。
「くぅ……、困ったなぁ……」
その時だった、ヴゥンという電子音がかすかに響き、一人の少女がすうっと現れた。
え……?
白いサイバースーツにシルバーのジャケットを羽織る少女は、ブラウンの長髪を揺らしながらじっと瑛士の顔をのぞきこむ。
「なんでシアンちゃんはこんな弱っちいのを……」
「あ、あなたは……?」
眉をひそめる少女に気おされながら瑛士は聞いてみる。
「ここはイミグレーション。神殿に入る資格があるかどうかチェックするところよ。でも……、キミに資格があるようには……見えないなぁ」
「し、資格……? 自分はシアンに連れられてきただけなので、資格と言われても……」
瑛士は冷汗を浮かべながら返す。
「人のせいにしない! 神殿に入るにはそれなりの能力と品格が求められるわ。あなたみたいのを入れたら私もシアンちゃんも責任も問われるんだから!」
少女は人差し指で瑛士の鼻先を押し、頬を膨らましながら怒りをぶつけてくる。
「そ、そりゃ、自分は見習いなので……。能力は低いかもしれませんが、人として恥ずかしくない生き方はしてきてるつもりです!」
シアンも責任が問われるとなると、自分だけの問題ではない。瑛士は頑張って言い返した。
「ふぅん……」
少女は斜に構え、瑛士をなめるように全身を見回し……、ニヤッと笑うとバッと腕を高く掲げた。
「じゃあ、試させてもらうわ!」
刹那、急に景色が変わった。ガラスの巨大なシャンデリアのような円柱状の構造物がずらりと並ぶ通路に転送されたのだ。
へっ!?
瑛士は驚いて辺りを見回し、その息を呑むような美しい光景に圧倒された。ガラスの巨大構造物はまるで生き物のようにキラキラと微細な輝きを放ち、その不思議な煌めきにはどこか心に迫るリズムを感じる。
そんな、小屋サイズのガラス構造体がずらりと見渡す限り並び、それだけでなく通路の金網の下にも上にも幾重にもそれが重なっているのだ。
「ここはどこかわかるかしら?」
少女はいたずらっ子の笑みを浮かべながらドヤ顔で聞いてくる。
「ど、どこって……」
瑛士は困惑した。こんな初めて見る壮大な構造物など答えようがない。
ただ……。
思い当たるとしたらさっきシアンが言っていた『キミの故郷だぞ?』という言葉だった。海王星にあるのは神殿と故郷。であれば、ここは故郷、つまり、地球を創造しているコンピューターのデータセンター……ではないだろうか?
「も、もしかして……僕の故郷……?」
「へぇ……、思ったより賢いじゃん」
少女は意外そうな顔をしてうなずいた。
「マ、マジか……」
と、なると、このガラスの構造体は地球を創っているコンピューターということになる。
瑛士はガラス構造体に駆け寄るとじっと眺めてみた。それはキラキラと微細な光を放つ畳サイズのガラス板が、中心に向かってたくさん挿さって作られた円筒だった。その円筒がいくつも重ねられて一つのシャンデリアのように見えている。これが本当にコンピューターだとするならば、ガラスでできた光コンピューターで、この溢れ出す煌めきは今この瞬間の地球の誰かの営みそのものということになる。そして、自分もまた、この煌めきの中に生まれ、暮らしてきたに違いない。
ほわぁ……。
瑛士は上下左右を見回し、その壮大な光コンピューターの群れに圧倒され、思わず首を振った。
「では、試験開始だよ! どこかに時限爆弾を隠したんだ。見つけられたら合格。見つけられなければ……ドッカーン! きゃははは!」
少女は嬉しそうに笑った。
「じ、時限爆弾!?」
「そう、キミが本当にシアンちゃんが思うような人なら見つけられるはず。失敗したら八十億人の人達と共にドカーン! くふふふ……」
「な、なんだよそれ……」
パパを生き返らせるどころか、地球が木端微塵になってしまうかもしれない事態に瑛士は頭を抱えた。
なぜ、自分の資質を見るだけに八十億人の人たちの命を危険にさらすのか? 神殿にはぶっ飛んだ少女しかいないのか? 瑛士はあまりにも無配慮な試験に頭が痛くなってきた。
「ほらほら、時間ないよ! 早く見つけないとドカーンだぞ! ぐふふ」
少女は嬉しそうにけしかける。
瑛士は楽し気な少女の方をキッとにらむと、大きく息をついて辺りを見回した。
通路はどこまでも向こうまでサーバーが並び、それが奥にも上下の階にも延々と続いている。走り回って探せるような広さじゃない。
はぁ……。
瑛士はその意地悪な試験にウンザリしてガックリとうなだれた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
日本新世紀ー日本の変革から星間連合の中の地球へー
黄昏人
SF
現在の日本、ある地方大学の大学院生のPCが化けた!
あらゆる質問に出してくるとんでもなくスマートで完璧な答え。この化けたPC“マドンナ”を使って、彼、誠司は核融合発電、超バッテリーとモーターによるあらゆるエンジンの電動化への変換、重力エンジン・レールガンの開発・実用化などを通じて日本の経済・政治状況及び国際的な立場を変革していく。
さらに、こうしたさまざまな変革を通じて、日本が主導する地球防衛軍は、巨大な星間帝国の侵略を跳ね返すことに成功する。その結果、地球人類はその星間帝国の圧政にあえいでいた多数の歴史ある星間国家の指導的立場になっていくことになる。
この中で、自らの進化の必要性を悟った人類は、地球連邦を成立させ、知能の向上、他星系への植民を含む地球人類全体の経済の底上げと格差の是正を進める。
さらには、マドンナと誠司を擁する地球連邦は、銀河全体の生物に迫る危機の解明、撃退法の構築、撃退を主導し、銀河のなかに確固たる地位を築いていくことになる。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。
生きるために走る者は、
傷を負いながらも、歩みを止めない。
戦国という時代の只中で、
彼らは何を失い、
走り続けたのか。
滝川一益と、その郎党。
これは、勝者の物語ではない。
生き延びた者たちの記録である。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる