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1-14.潰された子供
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キャンキャン!
叫び声が上がる。
やったか!? と思ったのもつかの間、四匹が構わず突っ込んできた。
やはり、まだ火力不足である。
ヴィクトルは往年のアマンドゥス時代の火力を懐かしく思いながら、剣に持ち替え、ギリッと奥歯を鳴らした。
果たして、次々と飛びかかってくるウォーウルフ。
ヴィクトルは一匹目を一刀両断にするも、次のウォーウルフの爪の餌食となって切り裂かれ転がった。
グハァ!
同時に攻撃したウォーウルフもアイテムの効果を受けて転がる。
後続のウォーウルフはお構いなしに血まみれのヴィクトルの腕に噛みついた。ヴィクトルは自由になる手で口元に向けて、
「風刃!!」
と、叫び、ウォーウルフの内臓をズタズタに切り裂いた。
しかし、まだ一匹残っている。
ヴィクトルはヒールをかけ、体勢を立て直すと、ウォーウルフに対峙した。
はぁはぁと肩で息をするヴィクトル。
仲間をやられた怒りで金色の瞳の奥を赤く光らせるウォーウルフ……。
にらみ合いながら、ジリジリとお互い間合いを計る……。
直後、覚悟を決めたウォーウルフが飛びかかってきた。
ヴィクトルは鋭く剣を走らせるが、ウォーウルフは巧みに前足で剣の軌道をそらしヴィクトルの喉笛に鋭い牙を食いこませた。
グフッ!
ヴィクトルは真っ赤な血を吐きながらウォーウルフと共に倒れ、ゴロゴロと転がる……。
直後、ウォーウルフはギャン! という断末魔の叫びを上げながらアイテムの効果で絶命し、ヴィクトルは朦朧としながら草原に転がった。
「七匹は……無理だよ……」
そうつぶやき、しばらく大の字になってぼーっと空を眺める。
青空には真っ白な雲がぽっかりと浮かび、爽やかな風がサーっと草原を走った。
◇
さらに一カ月たち、一万匹の魔物を倒したヴィクトルのレベルは91にまでなっていた。魔石を食べる効果で強さはレベル200相当にまで達している。
暗黒の森のダンジョンに来ていた冒険者のパーティはその日、信じられないものを目撃した。
パーティで巨大な岩の魔物、ゴーレムと対戦するも、予想以上に硬い防御に苦戦していた時のこと――――。
「ダメ――――! もうMP切れだわ!」
黒いローブをまとった女性が叫ぶ。
直後、ゴーレムは、
グォォォォ!
と、叫びながら全身を光らせ、鋭いパンチを盾役に浴びせる。
ぐはぁ!
盾役はたまらず転がった。
「ダメだ! 撤退! 撤退! シールド張って!」
剣士が叫んだが、
「あれっ!? ごめんなさーい! もうMP切れ――――!」
僧侶が泣きそうになりながら答える。
「バッカ野郎! どうすんだよぉ!」
剣士は真っ青になって喚く。
パーティは崩壊寸前だった。
走って逃げてもゴーレムの方が足は速い。逃げるのにシールドは必須なのだ。
すると、小さな子供がやってきてニコニコと可愛い顔で剣士に聞いた。
「僕が倒しちゃっていいですか?」
子供はあちこち破れたズタボロの服を着ているだけで、装備らしい装備もしていない。
「え!? 倒す……の? お前が?」
「うん!」
「そ、そりゃ……倒してくれたらありがたいけど……」
「じゃぁ、やっちゃうね!」
子供はそう言うとテッテッテとゴーレムに近づいて、
「ファイヤーボール! ファイヤーボール! ファイヤーボール!」
と、巨大な火の玉を次々とぶち当てた。
「お前ら! 逃げるぞ!」
剣士はメンバーに声をかけると駆け出し、安全な距離を取る。
そして、物陰からそっと戦いの様子をのぞいた。
しかし、ゴーレムはファイヤーボール程度ではビクともしない。
岩でできた巨大な腕をグンと持ち上げると、子供に向けて振り下ろした。ところが、子供は逃げるそぶりも見せず、そのまま潰される。
グチャッ!
嫌な音が広い洞窟に響いた……。
「あぁぁ! ……。あの子……、やられちゃったぞ……」
剣士は青い顔で言う。
しかし、同時にゴーレムもなぜかダメージを受け、ズシーン! とあおむけに倒れた。
「へ!?」
黒ローブの女性が驚く。
すると、潰されたはずの子供が光をまといながら立ち上がり、再度ファイヤーボールを唱え続けた。
ドーン! ドーン!
洞窟にはファイヤーボールの炸裂する爆音が響く。
ファイヤーボールを受けながらも、ゆっくりと立ち上がるゴーレム。
直後、子供は
「ウォーターカッター!」
と、叫び、鋭い水しぶきを放った。
真っ赤に熱されたゴーレムは水を受けてビシッ! と亀裂が走る。
「おっ! あいつすげぇぞ!」
剣士は声をあげた。
しかし、与えたダメージは亀裂止まりでゴーレムは止まらない。
ゴーレムは足を持ち上げると、子供を一気に踏みつぶした。
ブチュ!
聞くに堪えない音が再度洞窟に響く……。
「きゃぁ!」
黒ローブの女性は思わず耳を押さえ、悲鳴を上げた。
が、次の瞬間、ゴーレムは、
グァゴォォォ!
と、断末魔の叫びを上げ、消えていった。
なんと、子供がゴーレムを倒したのだった。
「はぁ!?」「へ?」
剣士も女性も信じられなかった。自分達でも倒せなかったあの頑強なゴーレムが、何の装備もない、可愛らしい子供に倒されたのだ。
やがて、子供は起き上がり、魔石を拾うと、何事もなかったようにテッテッテと駆け出して、階段を下りて行った。
「おい! あの子、下へ行ったぞ!」
剣士は仰天した。この下にはもっと強い魔物が居るというのに、何の躊躇もなく、休む事もなく下へ行ったのだ。
パーティの面々は訝しげにお互いの顔を見合わせながら、無言で首をかしげるばかりだった。
叫び声が上がる。
やったか!? と思ったのもつかの間、四匹が構わず突っ込んできた。
やはり、まだ火力不足である。
ヴィクトルは往年のアマンドゥス時代の火力を懐かしく思いながら、剣に持ち替え、ギリッと奥歯を鳴らした。
果たして、次々と飛びかかってくるウォーウルフ。
ヴィクトルは一匹目を一刀両断にするも、次のウォーウルフの爪の餌食となって切り裂かれ転がった。
グハァ!
同時に攻撃したウォーウルフもアイテムの効果を受けて転がる。
後続のウォーウルフはお構いなしに血まみれのヴィクトルの腕に噛みついた。ヴィクトルは自由になる手で口元に向けて、
「風刃!!」
と、叫び、ウォーウルフの内臓をズタズタに切り裂いた。
しかし、まだ一匹残っている。
ヴィクトルはヒールをかけ、体勢を立て直すと、ウォーウルフに対峙した。
はぁはぁと肩で息をするヴィクトル。
仲間をやられた怒りで金色の瞳の奥を赤く光らせるウォーウルフ……。
にらみ合いながら、ジリジリとお互い間合いを計る……。
直後、覚悟を決めたウォーウルフが飛びかかってきた。
ヴィクトルは鋭く剣を走らせるが、ウォーウルフは巧みに前足で剣の軌道をそらしヴィクトルの喉笛に鋭い牙を食いこませた。
グフッ!
ヴィクトルは真っ赤な血を吐きながらウォーウルフと共に倒れ、ゴロゴロと転がる……。
直後、ウォーウルフはギャン! という断末魔の叫びを上げながらアイテムの効果で絶命し、ヴィクトルは朦朧としながら草原に転がった。
「七匹は……無理だよ……」
そうつぶやき、しばらく大の字になってぼーっと空を眺める。
青空には真っ白な雲がぽっかりと浮かび、爽やかな風がサーっと草原を走った。
◇
さらに一カ月たち、一万匹の魔物を倒したヴィクトルのレベルは91にまでなっていた。魔石を食べる効果で強さはレベル200相当にまで達している。
暗黒の森のダンジョンに来ていた冒険者のパーティはその日、信じられないものを目撃した。
パーティで巨大な岩の魔物、ゴーレムと対戦するも、予想以上に硬い防御に苦戦していた時のこと――――。
「ダメ――――! もうMP切れだわ!」
黒いローブをまとった女性が叫ぶ。
直後、ゴーレムは、
グォォォォ!
と、叫びながら全身を光らせ、鋭いパンチを盾役に浴びせる。
ぐはぁ!
盾役はたまらず転がった。
「ダメだ! 撤退! 撤退! シールド張って!」
剣士が叫んだが、
「あれっ!? ごめんなさーい! もうMP切れ――――!」
僧侶が泣きそうになりながら答える。
「バッカ野郎! どうすんだよぉ!」
剣士は真っ青になって喚く。
パーティは崩壊寸前だった。
走って逃げてもゴーレムの方が足は速い。逃げるのにシールドは必須なのだ。
すると、小さな子供がやってきてニコニコと可愛い顔で剣士に聞いた。
「僕が倒しちゃっていいですか?」
子供はあちこち破れたズタボロの服を着ているだけで、装備らしい装備もしていない。
「え!? 倒す……の? お前が?」
「うん!」
「そ、そりゃ……倒してくれたらありがたいけど……」
「じゃぁ、やっちゃうね!」
子供はそう言うとテッテッテとゴーレムに近づいて、
「ファイヤーボール! ファイヤーボール! ファイヤーボール!」
と、巨大な火の玉を次々とぶち当てた。
「お前ら! 逃げるぞ!」
剣士はメンバーに声をかけると駆け出し、安全な距離を取る。
そして、物陰からそっと戦いの様子をのぞいた。
しかし、ゴーレムはファイヤーボール程度ではビクともしない。
岩でできた巨大な腕をグンと持ち上げると、子供に向けて振り下ろした。ところが、子供は逃げるそぶりも見せず、そのまま潰される。
グチャッ!
嫌な音が広い洞窟に響いた……。
「あぁぁ! ……。あの子……、やられちゃったぞ……」
剣士は青い顔で言う。
しかし、同時にゴーレムもなぜかダメージを受け、ズシーン! とあおむけに倒れた。
「へ!?」
黒ローブの女性が驚く。
すると、潰されたはずの子供が光をまといながら立ち上がり、再度ファイヤーボールを唱え続けた。
ドーン! ドーン!
洞窟にはファイヤーボールの炸裂する爆音が響く。
ファイヤーボールを受けながらも、ゆっくりと立ち上がるゴーレム。
直後、子供は
「ウォーターカッター!」
と、叫び、鋭い水しぶきを放った。
真っ赤に熱されたゴーレムは水を受けてビシッ! と亀裂が走る。
「おっ! あいつすげぇぞ!」
剣士は声をあげた。
しかし、与えたダメージは亀裂止まりでゴーレムは止まらない。
ゴーレムは足を持ち上げると、子供を一気に踏みつぶした。
ブチュ!
聞くに堪えない音が再度洞窟に響く……。
「きゃぁ!」
黒ローブの女性は思わず耳を押さえ、悲鳴を上げた。
が、次の瞬間、ゴーレムは、
グァゴォォォ!
と、断末魔の叫びを上げ、消えていった。
なんと、子供がゴーレムを倒したのだった。
「はぁ!?」「へ?」
剣士も女性も信じられなかった。自分達でも倒せなかったあの頑強なゴーレムが、何の装備もない、可愛らしい子供に倒されたのだ。
やがて、子供は起き上がり、魔石を拾うと、何事もなかったようにテッテッテと駆け出して、階段を下りて行った。
「おい! あの子、下へ行ったぞ!」
剣士は仰天した。この下にはもっと強い魔物が居るというのに、何の躊躇もなく、休む事もなく下へ行ったのだ。
パーティの面々は訝しげにお互いの顔を見合わせながら、無言で首をかしげるばかりだった。
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