捨てられた前世【大賢者】の少年、魔物を食べて世界最強に、そして日本へ

月城 友麻

文字の大きさ
24 / 71

2-8. 野生を呼ぶステーキ

しおりを挟む
 ヴィクトルは水を一杯飲むとルコアを起こし、夕飯に誘った。
「ふぁ――――あ! 良く寝ちゃい……ましたね」
 あくびをしながらルコアが言う。
「君に思い切り叩かれたんだけど?」
 ヴィクトルはジト目で言う。
「えっ!? 主さまごめんなさい! どこ? どこ叩いちゃいました? 痛くないですか?」
 ルコアはヴィクトルを捕まえ、あちこちをさすってくる。
「あー、もういいから! はい、ディナーに行くよ!」
 そう言ってルコアを振り払う。
 どうも調子が狂うヴィクトルだった。

           ◇

 二人は石造りの建物の並ぶ夕暮れの街を歩き、ルコアお勧めのレストランにやってきた。
 ルコアはテラス席に陣取ると、
「おかみさーん」
 と、店の方に手を振る。
「ここは何が美味しいの?」
 ヴィクトルが聞くと、
「へ? 私はステーキしか食べたことないですねぇ」
 と、首をかしげる。ドラゴンに聞いたのは失敗だったようだ。
「あら、お嬢ちゃん久しぶり。今日は子連れでどうしたんだい?」
「ふふっ、ちょっと訳ありなの。それで、いつもの奴と、ステーキ十人前ね。主さまもステーキでいい?」
 ルコアはヴィクトルを見る。
「あ、はい……」
「飲み物はミルク?」
 おかみさんは優しくヴィクトルに聞く。
 ステーキにミルクは合わないだろう。だが、酒を頼むわけにもいかない。
「水でいいです……」
 ヴィクトルは残念に思いながらそう答えた。
「はい、わかったよ」
 おかみさんはそう言うと、店の裏に回り、酒樽を重そうに持ってきて、ドン! とルコアの前に置いた。
「キタ――――!」
 ルコアは歓喜の声を上げる。
「へ? 何これ?」
 ヴィクトルが驚いていると、ルコアはグーパンチでパン! と上蓋を割った。そしてそのまま樽を持ち上げ、飲み始める。

 ング、ング、ング、プハ――――!
 ルコアは恍惚の表情を浮かべ、しばらく動かなくなった。
 ヴィクトルが唖然あぜんとしていると、おかみさんが水を持ってきてヴィクトルの前に置き、耳元でささやく。
「驚いちゃうわよね、一体この細い身体のどこに入って行くんだろうね?」
 そして、ケラケラと笑いながら店内へと戻って行った。

      ◇

 しばらくしておかみさんがステーキを二皿持ってきたが……、ルコアのは厚さ三十センチ近くある。表面はカリカリだが、中はきっと生だろう。
「はい、嬢ちゃん、もってきたわよぉ~」
 おかみさんは嬉しそうにタワーのようなステーキをテーブルに置いた。ステーキは熱々のステーキ皿に熱されてジュー! と煙を上げており、肉の焦げる香ばしい匂いを辺りに漂わせている。
「美味しそ~!」
 ルコアはそう言うとガッと両手でつかみ、いきなり噛みついた。
「ルコア! ちょっとマナーという物を……」
 ヴィクトルが苦言を呈すると、おかみさんは、
「嬢ちゃんはいつもこうなのよ」
 そう言ってハッハッハと笑いながら戻って行った。
 ヴィクトルは渋い顔をしてルコアを見つめる。美味しそうに肉にかじりつくルコアは真剣そのもので、女の子というよりは野生動物であり、ヴィクトルはその鋭く光る瞳の迫力に気おされていた。
 その時、ルコアの口に鋭い牙が光る。
「ちょ、ちょっと、ルコア!」
 ヴィクトルは驚いて言った。
「主さまどうしました?」
 口の周りを真っ赤にしたルコアが、モグモグしながらヴィクトルを見る。
「牙! 牙!」
 ヴィクトルは自分の口を指さして教える。
「あっ、うふふ、失礼しましたわ」
 ルコアはそう言うと牙をしまい、また肉にかじりついた。
 ヴィクトルは、ふぅとため息をつき、自分のステーキにナイフを入れる。
 しかし、ルコアの豪快な食事を見ているうちに、食欲も失せてしまっていた。

 ふぅ……。
 ヴィクトルはフォークに刺した肉を眺めながら言う。
「ねぇルコア、朝の話だけどさぁ……」
「えっ? 何でしたっけ?」
 ルコアは肉を引きちぎりながら答える。
「レヴィア様に会いたいんだけど」
「あ、レヴィア様ね。呼んでみます?」
「えっ!? 今?」
 いきなりの話に驚くヴィクトル。ルコアを作り、魔法を作り上げた偉大なる神代真龍をそんな簡単に呼んで大丈夫なのだろうか?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。

八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。  彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。  しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。    ――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。  その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……

病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~

於田縫紀
ファンタジー
 ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。  しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。  そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。  対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...