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4-1. 堕ちた使徒、メイド
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「主さま! さすがですぅ~!」
ルコアが少女姿で飛んできてヴィクトルに抱き着いた。
「おわぁ! ちょ、ちょっと……あわわ……」
いきなり抱きつかれ、勢いでクルクルと回り、焦るヴィクトル。
でも、ルコアが街を守っていてくれたから全力で戦えたのだ。
ヴィクトルはルコアを優しくハグし、
「ありがとう……」
と、言って、甘く香る優しいルコアの匂いをゆっくりと吸い込む。
◇
その時だった、いきなり風景が全てブロックノイズに覆われる。城壁も山も焦げた麦畑もすべて大小の四角の群れと化し、色を失い……、やがてその姿は全て壊れていき……、最後には全て何もない真っ白の世界になってしまったのだった。
「な、なんだ!?」
ヴィクトルは唖然とする。ルコアは全身の力が抜け、まるで糸の切れた操り人形のようにぐったりと崩れていく。
ヴィクトルは必死に支えようとするが、全く力が入らない。とっさに飛行魔法を使おうと思ったが魔力を全く引き出せなかった。
「えっ!?」
支えきれずに、ルコアはゴロンと真っ白な床に転がった……。
「ああっ! ルコアぁ!」
ルコアは意識を失ってしまっている。
「な、なんだこれは!?」
ヴィクトルは周りを見渡すが……、そこは完全に真っ白な世界。何もなかった。真っ白な床に真っ白な空。距離感も狂う異常な空間だった。
一生懸命魔力を絞り出そうとするが一向に引き出せる気配がない。
「一体どうしちゃったんだ?」
急いでステータス画面を見ようとしたが、画面も開かない。全ての魔法、スキルが無効だった。
ここでヴィクトルは気づく。レヴィアは『魔法は後付け』と、言っていた。であればここは魔法のない『オリジナルの世界』なのではないだろうか?
「坊ちゃま! 妲己壊されたら困るのよね」
いきなり声をかけられ、ヴィクトルは驚いて振り返った。
そこには去年、自分を陥れたメイドが立っていた。メイドはくすんだ灰色の髪を長く伸ばし、胸元が大きく開いた漆黒のワンピースに身を包み、いやらしい笑みを浮かべている。
「お、お前は……?」
「改めましてこんにちは、私はヒルド、この星の元副管理人よ。まさかここまで強くなるとは……さすが大賢者だわ」
ヒルドはニヤッと笑った。
ヴィクトルは予想もしなかった展開に驚き、言葉を失った。レヴィアの言っていた心当たりとは、なんとあの偽証したメイドだったのだ。それも管理者権限を持ってる危険な存在……。ヴィクトルは全身の毛がゾワッと逆立ち、絶望が体中を支配していくのを感じていた。
「あら? もう忘れちゃった?」
ヒルドはドヤ顔で見下ろしながら言う。
一体いつから、何のために? ヴィクトルは必死に頭を働かせる。しかし、さっぱり分からない……。
ヴィクトルは大きく深呼吸をすると叫んだ。
「僕を暗黒の森に追放させたのもお前の仕業か!」
「ふふっ、だって坊ちゃまは無職とか選んじゃうんだもの。せっかくの計画が台無しだったわ。エナンドとハンツが坊ちゃまを疎ましく思ってたので、利用させてもらって追放させたの。でもまさか……生き残ってこんなになっちゃうなんてねぇ……」
ヒルドは感慨深げにヴィクトルを見た。
「ここはどこなんだ? 僕たちをどうするつもりだ?」
「ここは予備領域……、いろんなテストに使う空間よ。レヴィアに見つかると面倒だから来てもらったわ。坊ちゃまにはうちの広告塔になってもらうの。何といっても妲己を倒したアマンドゥスの生まれ変わり……、うってつけだわ」
ヒルドはうれしそうに言う。
「広告塔? ドゥーム教か?」
ヴィクトルはヒルドを鋭い目でにらんだ。
「そうよ。宗教がこの星を救うのよ」
ヒルドはニヤッと笑う。
「救う……?」
「今、この星はね、文化も文明も停滞してるの。このままだと消されるわ」
「消される!? いったい誰に?」
「この宇宙を……統べる組織よ。彼らは活きの悪い星を間引くのよ……」
ヒルドは肩をすくめる。
「それで宗教で活性化を狙うのか? でも、ドゥーム教にそんなことできるのか?」
「ドゥーム教はね、信じるだけで儲かるのよ」
「は!?」
「信者は毎月お布施を払うんだけど、その一部を紹介者はもらっていいの。たくさん開拓した人は大金持ちになるのよ」
ヒルドは手を広げ、うれしそうに言った。
「それはマルチ商法じゃないか!」
「そう、信者を通じて大きく金が動くわ。新たな経済圏が広がるのよ」
「バカバカしい! マルチは国民の多くが信者になった時点で破綻する!」
「そうよ。そしたら次の宗教を立てるの」
ヒルドはニヤッと笑う。
「はぁっ!?」
ヴィクトルは混乱をいとわないヒルドの強引な計画に頭が痛くなった。
ルコアが少女姿で飛んできてヴィクトルに抱き着いた。
「おわぁ! ちょ、ちょっと……あわわ……」
いきなり抱きつかれ、勢いでクルクルと回り、焦るヴィクトル。
でも、ルコアが街を守っていてくれたから全力で戦えたのだ。
ヴィクトルはルコアを優しくハグし、
「ありがとう……」
と、言って、甘く香る優しいルコアの匂いをゆっくりと吸い込む。
◇
その時だった、いきなり風景が全てブロックノイズに覆われる。城壁も山も焦げた麦畑もすべて大小の四角の群れと化し、色を失い……、やがてその姿は全て壊れていき……、最後には全て何もない真っ白の世界になってしまったのだった。
「な、なんだ!?」
ヴィクトルは唖然とする。ルコアは全身の力が抜け、まるで糸の切れた操り人形のようにぐったりと崩れていく。
ヴィクトルは必死に支えようとするが、全く力が入らない。とっさに飛行魔法を使おうと思ったが魔力を全く引き出せなかった。
「えっ!?」
支えきれずに、ルコアはゴロンと真っ白な床に転がった……。
「ああっ! ルコアぁ!」
ルコアは意識を失ってしまっている。
「な、なんだこれは!?」
ヴィクトルは周りを見渡すが……、そこは完全に真っ白な世界。何もなかった。真っ白な床に真っ白な空。距離感も狂う異常な空間だった。
一生懸命魔力を絞り出そうとするが一向に引き出せる気配がない。
「一体どうしちゃったんだ?」
急いでステータス画面を見ようとしたが、画面も開かない。全ての魔法、スキルが無効だった。
ここでヴィクトルは気づく。レヴィアは『魔法は後付け』と、言っていた。であればここは魔法のない『オリジナルの世界』なのではないだろうか?
「坊ちゃま! 妲己壊されたら困るのよね」
いきなり声をかけられ、ヴィクトルは驚いて振り返った。
そこには去年、自分を陥れたメイドが立っていた。メイドはくすんだ灰色の髪を長く伸ばし、胸元が大きく開いた漆黒のワンピースに身を包み、いやらしい笑みを浮かべている。
「お、お前は……?」
「改めましてこんにちは、私はヒルド、この星の元副管理人よ。まさかここまで強くなるとは……さすが大賢者だわ」
ヒルドはニヤッと笑った。
ヴィクトルは予想もしなかった展開に驚き、言葉を失った。レヴィアの言っていた心当たりとは、なんとあの偽証したメイドだったのだ。それも管理者権限を持ってる危険な存在……。ヴィクトルは全身の毛がゾワッと逆立ち、絶望が体中を支配していくのを感じていた。
「あら? もう忘れちゃった?」
ヒルドはドヤ顔で見下ろしながら言う。
一体いつから、何のために? ヴィクトルは必死に頭を働かせる。しかし、さっぱり分からない……。
ヴィクトルは大きく深呼吸をすると叫んだ。
「僕を暗黒の森に追放させたのもお前の仕業か!」
「ふふっ、だって坊ちゃまは無職とか選んじゃうんだもの。せっかくの計画が台無しだったわ。エナンドとハンツが坊ちゃまを疎ましく思ってたので、利用させてもらって追放させたの。でもまさか……生き残ってこんなになっちゃうなんてねぇ……」
ヒルドは感慨深げにヴィクトルを見た。
「ここはどこなんだ? 僕たちをどうするつもりだ?」
「ここは予備領域……、いろんなテストに使う空間よ。レヴィアに見つかると面倒だから来てもらったわ。坊ちゃまにはうちの広告塔になってもらうの。何といっても妲己を倒したアマンドゥスの生まれ変わり……、うってつけだわ」
ヒルドはうれしそうに言う。
「広告塔? ドゥーム教か?」
ヴィクトルはヒルドを鋭い目でにらんだ。
「そうよ。宗教がこの星を救うのよ」
ヒルドはニヤッと笑う。
「救う……?」
「今、この星はね、文化も文明も停滞してるの。このままだと消されるわ」
「消される!? いったい誰に?」
「この宇宙を……統べる組織よ。彼らは活きの悪い星を間引くのよ……」
ヒルドは肩をすくめる。
「それで宗教で活性化を狙うのか? でも、ドゥーム教にそんなことできるのか?」
「ドゥーム教はね、信じるだけで儲かるのよ」
「は!?」
「信者は毎月お布施を払うんだけど、その一部を紹介者はもらっていいの。たくさん開拓した人は大金持ちになるのよ」
ヒルドは手を広げ、うれしそうに言った。
「それはマルチ商法じゃないか!」
「そう、信者を通じて大きく金が動くわ。新たな経済圏が広がるのよ」
「バカバカしい! マルチは国民の多くが信者になった時点で破綻する!」
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ヒルドはニヤッと笑う。
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ヴィクトルは混乱をいとわないヒルドの強引な計画に頭が痛くなった。
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