64 / 71
4-16. ドラゴンスレイヤー
しおりを挟む
「え?」
あまりに意外な話にヴィクトルは驚く。
「今、急速に人工知能が進歩してるんじゃよ。あと二十年もすればシンギュラリティが来る」
「人工知能が人間を……上回るんですか?」
「そうじゃ、そうなったらあとは人工知能が人工知能を進化させるフェーズに入る」
「そうなったら……、人類はどうなっちゃうんですか?」
「どうもならんよ。静かに消えていくだけじゃ」
「消えていく……?」
「今のこの国の出生率は1.3。二人の大人が産む子供の数が1.3人しかおらんのじゃ。つまり、世代が進むごとに人口は35%ずつ減っていくんじゃ」
「自然とどんどん減る……なぜですか?」
「なんでじゃろうな? これはほかの星もみな同じなんじゃ。人工知能が生まれると急速に人口が減るんじゃ。きっと人類の遺伝子の中に、後継者を作ると子供を産まなくなるような設定がされておるんじゃろうな」
「それは……、人類にとっていい事なんでしょうか?」
「さて、我は人類じゃないから分からんのう」
そう言ってレヴィアはカッカッカとうれしそうに笑った。
ヴィクトルは大きく息をつくと考えこんでしまう。
「まぁええ、今は人類よりもルコアじゃ。お主覚悟はいいか?」
レヴィアは高級マンションの前で足を止め、緊張した面持ちで見上げながら言った。
「私はいつでも……。ここ……ですか?」
瀟洒なエントランスがのぞくマンションは、高級な石材をふんだんに使い、静かに佇んでいる。
「ここの最上階に全宇宙、百万個の星々を統べる最高機関『Deep Child』がある」
「見た目は……、普通なんですね……」
「見た目で判断しちゃイカン。中におられる方はそれこそ宇宙全体のあり方を決め、ヒト、モノ、星を自由に操作し、全ての生き物の生殺与奪の権利を持っておられる。不用意な一言で星が消された事などいくらでもあるんじゃ」
そう言ってレヴィアはブルっと震えた。
「それだけの力があるから、ルコアも生き返らせられるんですよね?」
「まぁ、そうとも言えるがな」
二人はエントランスを開けてもらって最上階へと上がる。
◇
ピンポーン!
呼び鈴を押すと、ドタドタと誰かがやってきてドアを開けた。青い髪の可憐な女の子だった。
「いらっしゃーい!」
彼女はにこやかにヴィクトルたちを迎え入れる。
「こ、これはシアン様。大和をありがとうございました」
レヴィアは焦って頭を下げる。
ヴィクトルは驚いた。この可愛い女の子が海王星で超弩級戦艦を運用しているオーナー……。その若く美しい見た目からは全く想像も及ばない話だった。
「あ、役に立った? 良かったね」
シアンはニコニコしながら言う。
「はい、それはもう助かりました。これはお礼の品でございます」
レヴィアは桃のタルトの箱を渡した。
「あら、サンキュー!」
シアンは目をキラッと輝かせて喜ぶ。
「ただ……」
口ごもるレヴィア。
「ん?」
「主砲が一機吹っ飛んでしまいまして……」
「へっ!?」
目を丸くするシアン。そして宙を見つめ、何かを思案すると、
「エネルギー充填し過ぎはダメって説明あったよね?」
と、今にも殺しそうな勢いの視線をレヴィアに向ける。
「そ、そうなんですが、この子が発射を渋りまして……」
真っ青になって弁解するレヴィア。
「子供のせいにしない!」
そう言うとシアンは、目にも止まらぬ速さでレヴィアの額にデコピンをバチコン! とかました。
あひぃ!
吹っ飛ぶレヴィア。
人間をはるかに凌駕してるはずのドラゴンを、いとも簡単に吹っ飛ばしたシアンの強さにヴィクトルは唖然とした。
「もー、直すの面倒くさいんだよ?」
シアンは腕を組んでプリプリとする。
「すみません。ボタンを押すのをためらったのは本当で、僕が悪いんです」
ヴィクトルはビビりながら頭を下げた。
するとシアンはひょいっとヴィクトルを持ち上げ、じっと見つめる。
その目鼻立ちのきりっとした美しい顔、長いまつげに鮮やかな碧眼にヴィクトルはドキッとする。そして、その澄んだ青い瞳に吸い込まれるような感覚にとらわれた……。
シアンはニコッと笑うとヴィクトルを抱きしめ、
「君、可愛いから許しちゃお~」
と、言いながら柔らかいプニプニとした頬に頬ずりをする。
ヴィクトルは爽やかな柑橘系の香りに包まれ、赤くなった。
「我も可愛いのに……」
レヴィアは額をさすりながら、ボソっとつぶやく。
◇
奥に通されると、そこはメゾネットタイプの広間となっていた。オフィスとして使われ、二階分の高さの天井と明るい大きな窓ガラスの開放感が心地よい。また、脇に階段があって、上の階の部屋へと繋がっている。
「気持ちのいいオフィスですね」
ヴィクトルが広間を見回しながら言うと、シアンは、
「ふふ、いい所でしょ? ここで働く?」
と、言ってニコッと笑った。
「えっ、い、いいんですか!? お、落ち着いたら相談させてください」
ヴィクトルは予想外のオファーに驚いた。全宇宙の最高機関で働く、それは想像を絶するチャンスである。ただ、今はルコアのことで頭がいっぱいなのだった。
あまりに意外な話にヴィクトルは驚く。
「今、急速に人工知能が進歩してるんじゃよ。あと二十年もすればシンギュラリティが来る」
「人工知能が人間を……上回るんですか?」
「そうじゃ、そうなったらあとは人工知能が人工知能を進化させるフェーズに入る」
「そうなったら……、人類はどうなっちゃうんですか?」
「どうもならんよ。静かに消えていくだけじゃ」
「消えていく……?」
「今のこの国の出生率は1.3。二人の大人が産む子供の数が1.3人しかおらんのじゃ。つまり、世代が進むごとに人口は35%ずつ減っていくんじゃ」
「自然とどんどん減る……なぜですか?」
「なんでじゃろうな? これはほかの星もみな同じなんじゃ。人工知能が生まれると急速に人口が減るんじゃ。きっと人類の遺伝子の中に、後継者を作ると子供を産まなくなるような設定がされておるんじゃろうな」
「それは……、人類にとっていい事なんでしょうか?」
「さて、我は人類じゃないから分からんのう」
そう言ってレヴィアはカッカッカとうれしそうに笑った。
ヴィクトルは大きく息をつくと考えこんでしまう。
「まぁええ、今は人類よりもルコアじゃ。お主覚悟はいいか?」
レヴィアは高級マンションの前で足を止め、緊張した面持ちで見上げながら言った。
「私はいつでも……。ここ……ですか?」
瀟洒なエントランスがのぞくマンションは、高級な石材をふんだんに使い、静かに佇んでいる。
「ここの最上階に全宇宙、百万個の星々を統べる最高機関『Deep Child』がある」
「見た目は……、普通なんですね……」
「見た目で判断しちゃイカン。中におられる方はそれこそ宇宙全体のあり方を決め、ヒト、モノ、星を自由に操作し、全ての生き物の生殺与奪の権利を持っておられる。不用意な一言で星が消された事などいくらでもあるんじゃ」
そう言ってレヴィアはブルっと震えた。
「それだけの力があるから、ルコアも生き返らせられるんですよね?」
「まぁ、そうとも言えるがな」
二人はエントランスを開けてもらって最上階へと上がる。
◇
ピンポーン!
呼び鈴を押すと、ドタドタと誰かがやってきてドアを開けた。青い髪の可憐な女の子だった。
「いらっしゃーい!」
彼女はにこやかにヴィクトルたちを迎え入れる。
「こ、これはシアン様。大和をありがとうございました」
レヴィアは焦って頭を下げる。
ヴィクトルは驚いた。この可愛い女の子が海王星で超弩級戦艦を運用しているオーナー……。その若く美しい見た目からは全く想像も及ばない話だった。
「あ、役に立った? 良かったね」
シアンはニコニコしながら言う。
「はい、それはもう助かりました。これはお礼の品でございます」
レヴィアは桃のタルトの箱を渡した。
「あら、サンキュー!」
シアンは目をキラッと輝かせて喜ぶ。
「ただ……」
口ごもるレヴィア。
「ん?」
「主砲が一機吹っ飛んでしまいまして……」
「へっ!?」
目を丸くするシアン。そして宙を見つめ、何かを思案すると、
「エネルギー充填し過ぎはダメって説明あったよね?」
と、今にも殺しそうな勢いの視線をレヴィアに向ける。
「そ、そうなんですが、この子が発射を渋りまして……」
真っ青になって弁解するレヴィア。
「子供のせいにしない!」
そう言うとシアンは、目にも止まらぬ速さでレヴィアの額にデコピンをバチコン! とかました。
あひぃ!
吹っ飛ぶレヴィア。
人間をはるかに凌駕してるはずのドラゴンを、いとも簡単に吹っ飛ばしたシアンの強さにヴィクトルは唖然とした。
「もー、直すの面倒くさいんだよ?」
シアンは腕を組んでプリプリとする。
「すみません。ボタンを押すのをためらったのは本当で、僕が悪いんです」
ヴィクトルはビビりながら頭を下げた。
するとシアンはひょいっとヴィクトルを持ち上げ、じっと見つめる。
その目鼻立ちのきりっとした美しい顔、長いまつげに鮮やかな碧眼にヴィクトルはドキッとする。そして、その澄んだ青い瞳に吸い込まれるような感覚にとらわれた……。
シアンはニコッと笑うとヴィクトルを抱きしめ、
「君、可愛いから許しちゃお~」
と、言いながら柔らかいプニプニとした頬に頬ずりをする。
ヴィクトルは爽やかな柑橘系の香りに包まれ、赤くなった。
「我も可愛いのに……」
レヴィアは額をさすりながら、ボソっとつぶやく。
◇
奥に通されると、そこはメゾネットタイプの広間となっていた。オフィスとして使われ、二階分の高さの天井と明るい大きな窓ガラスの開放感が心地よい。また、脇に階段があって、上の階の部屋へと繋がっている。
「気持ちのいいオフィスですね」
ヴィクトルが広間を見回しながら言うと、シアンは、
「ふふ、いい所でしょ? ここで働く?」
と、言ってニコッと笑った。
「えっ、い、いいんですか!? お、落ち着いたら相談させてください」
ヴィクトルは予想外のオファーに驚いた。全宇宙の最高機関で働く、それは想像を絶するチャンスである。ただ、今はルコアのことで頭がいっぱいなのだった。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
前世は不遇な人生でしたが、転生した今世もどうやら不遇のようです。
八神 凪
ファンタジー
久我和人、35歳。
彼は凶悪事件に巻き込まれた家族の復讐のために10年の月日をそれだけに費やし、目標が達成されるが同時に命を失うこととなる。
しかし、その生きざまに興味を持った別の世界の神が和人の魂を拾い上げて告げる。
――君を僕の世界に送りたい。そしてその生きざまで僕を楽しませてくれないか、と。
その他色々な取引を経て、和人は二度目の生を異世界で受けることになるのだが……
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる