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Finale 少女独房
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.....退屈。
看護師さんが持ってくるおもちゃもビデオも飽きちゃった。
早く死にたいはずなのに、死ねないという地獄。
........でも、これで神楽ちゃんも桜ちゃんも助かるんだよね......
院内にて......
「風渡さんの様子はどう?」
「正常ですよ。今回復に向けて頑張っています。この間はお友達がお見舞いに来てくれていました。」
「それはよかった。早く元気になって欲しいわね。」
「でも、退院しても行く宛がないそうですよ......?ご両親もお兄さんも火事で亡くなってしまったみたいで......」
「そうだったの......かわいそうに......」
「でもお友達の家に住むことになったと言っておられましたが.....」
「そっか。どちらにせよ、早く良くなってくれることを願いたいわね。」
「はい。私も担当医として頑張ろうと思います。」
そうして医師二人は別れた。
.......それから一週間が過ぎた。
私は自殺せず、頑張って耐えた。
神楽ちゃんと桜ちゃんが死んだというニュースは今のところ入って来ていない。
やっぱり私がいけなかったんだ。
全て死のうとする私のせい。
......でも、やっぱり今すぐに死にたくなってきた。
魔女である私はもう生きてちゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
.......もうどうすればいいのかわかんないよ........
「.......ん?」
風渡さんにどういうお話をしてあげようかと悩んでいると、救急車によって新たな患者さんが運ばれてきた。
行かなくちゃ.......!
私は急いで患者さんの元へと向かった。
「運ばれてきたのは蛍火 神楽さんと東雲 桜さん。どちらも幼い女の子です。」
.....また、幼い女の子が運ばれてきた。
ここ最近、少女を狙った事件が多く起きている気がする。
私が担当している風渡さんだってそう。
「状態はどうですか?」
「東雲さんはまだかろうじて息がありますが、蛍火さんは.......」
「......そうですか。」
二人はどうやら、暗い廃墟のような家で無惨な状態で転がっていたそうだ。
犯人は捕まっており、もう息のなかった蛍火さんに性行為をしたらしい。
ひどい.......
事件の酷さに、私の目からは自然と涙が溢れ出していた。
......現在、東雲さんは治療を受けている。
元気になってくれることを願うばかりだ。
「........!」
......また、この病院に救急車が入ってきた。
おもむろに上から見下ろした私は、降ろされた患者に驚きが隠せなかった。
「なんで.......どうしてなの........?」
自殺は我慢したはずなのに。
死んじゃだめと必死に耐えたはずなのに。
どうして二人は死んでしまったの?
私には全く分からなかった。
ガラガラ......
「失礼します。」
しばらくして、私の担当医さんが入って来た。
「風渡さん、体調はどうですか?」
「........元気です。」
「あまり元気なようには見えませんが.........どうかなさいましたか?」
「いえ........全く問題ありません。」
「でも、気分が優れていないように見え」
「だから健康だって言っているでしょう!気にしないでください!」
私は立ち上がって担当医さんに掴みかかった。
「あ......すみません、しつこく聞いてしまって......」
「......いいから放っておいてください。」
「はい.......」
「......。」
怒りを鎮めた私はベッドへと戻った。
「.......本当にすみません。実は私、ここに来てからあまり経っていない新米の医師でして.......まだ患者さんと話すのに慣れていないんですよ。」
「......そうですか。」
「はい........あ、そういえばさっきこちらに風渡さんと同年代くらいの二人の女の子が運ばれてきたのですが.......」
「........そうですか。」
「名前は蛍火 神楽さんと、東雲 桜さんというのですが.....」
「........知らない人です。」
「そうでしたか......」
「........あの。」
「はい、どうかしましたか?」
「.....その二人はもう死んでますか?」
「あ、えっと......蛍火さんはもう息絶えておりますが......東雲さんはまだ息があったようで、現在治療を受けています。」
「.......!」
私は少し希望を感じた。
「それがどうかしましたか?」
「あ、いえ......無事ならいいけどと思いまして......」
「そうですね。元気になったら風渡さんにも紹介しますね。きっといい友達になれると思いますよ!」
......もう友達なんだけどな......
........その晩。
私は病室を抜け出して、桜ちゃんのいる病室に向かっていた。
神楽ちゃんはここに運びこまれてきた時にはもう息がなかったらしい。
生きていればよかったと思ったが、思いは届かなかった。
......でも桜ちゃんはまだ息があるから生きられるかもしれない。
.......着いた。
ガラガラ......
扉を開けて、部屋に入った。
「すぅすぅ......」
桜ちゃんは元気そうに眠っていた。
よかった......
「.......桜ちゃん?」
私は小さく声をかけた。
「んぅ.......ひっ.......!?」
桜ちゃんは起きると共になぜか怯えていた。
「お願いします......もう許してください......」
........幻覚でも見ているのだろうか。
「......大丈夫だよ、桜ちゃん。私、炎だよ。」
「........ほ、炎.......ちゃん?」
「うん、私だよ。」
「炎ちゃん........ぐすっ.......」
桜ちゃんは私に泣きついてきた。
「どうしたの?一体貴方と神楽ちゃんに何があったの?」
「うぅ......実はね.......」
「.......ってことがあったんだけど.....」
「.......それは災難だったね......」
「私は助かったけど......神楽ちゃんが.......」
「うん......」
「.......ねぇ、炎ちゃん。」
「......何?」
「お願いがあるんだけど.....」
「.....うん。」
「......ここにいる間、ずっと一緒にいて欲しいの。」
「......悪いけど、私にはあまり近づかない方がいいよ。」
「.....どうして?」
「だって.......私、魔女なんだもん。」
「どういうこと......?魔女......花純さんはとっくに処刑されたはずでしょう!?」
「......じゃあどうして私の周りの人がどんどん死んでいくの?」
「えっと....」
「私のお父さんお母さん、お兄ちゃん。花蓮ちゃんに杏ちゃん、夢乃さんに紗菜ちゃんに......神楽ちゃんだって。」
「あ.....」
「それもこれも、魔女である私の呪いによって死んでいってる。」
「あの......」
「.......五十嵐さんも看守長も、もっと早く私を処刑するべきだったんだ。」
「.......そうだったとしても、私は炎ちゃんと一緒にいるよ!」
「........え?」
「.......炎ちゃんがたとえ魔女だろうと、人を殺したことがあったとしても、私は炎ちゃんの傍にいるよ。だって......私の友達なんだもの。」
「桜ちゃん......」
.......そう話す桜ちゃんは、ずっと私の傍にいたあの子に似ている気がした。
.......それから、私は桜ちゃんと一緒の病室にしてとお願いしてみた。
要求はあっさり受け入れられ、私と桜ちゃんは同じ病室で暮らすことになった。
「.....それでこういうことがあってね.....」
「あはは。」
会話は毎日尽きることはなかった。
あんなに驚異的な頻度で亡くなっていたはずなのに、桜ちゃんは一週間経っても死ぬことはなかった。
ようやく負の連鎖から抜け出せたのかな.......
とある一室にて......
「それで、風渡さんと東雲さんはどう?」
「すごく元気ですよ。前までのローテンションなんて嘘みたいに。」
「それは良かった。木枯さん、これからも頑張ってね。」
「はい!二人分、私が頑張って見守ります!」
「あ、くれぐれも無理はしないようにね。」
「分かってますよ!無理しない程度で頑張ります!」
「........そういえば、木枯さん。」
「なんですか?」
「.....貴方の母親についてなんだけど......」
「......私の母、ですか?」
「貴方の母親、とある収容施設で遺体となって発見されたそうよ.....」
「えっ........本当ですか!?」
「えぇ。貴方が幼い頃行方をくらましたあの人が.......ね。」
「そうでしたか.......教えて頂きありがとうございます、先輩。」
「あ、ちょっと待って。まだ伝えたいことが......」
「.....?」
「......実はその施設から回収された監視カメラに......」
「.......瓦礫に潰された貴方の母親を刺し殺す風渡さんと茶髪の少女が映っていたの。」
「......そういえばあの収容施設なんだけど......」
「.......できればその話はしないで欲しいんだけど......桜ちゃんも思い出したくないでしょ?あの辛い拷問の日々を.....」
「.......そうだね。そう言われたらあの心臓あたりに槍を刺されたこと思い出しちゃった.....」
「やめよ、この話。」
「......うん。」
ガラガラガラ!
私も桜ちゃんも例の話をやめようとしていた時、不意に病室のドアが強く開けられた。
「風渡さん!少しいいですか!?」
「えっと.......どうかしましたか?」
「じ、実は......です.....ね.......ハァ......ハァ......」
「.......一度呼吸を整えてからの方がいいんじゃないですか......?」
「そ、そうですね......では失礼して......」
......数分後。
「それで、要件って一体?」
「実はですね.......風渡さんと茶髪の少女が今は廃墟となった施設で女性を刺し殺していたとの情報が入ったのですが.....」
「「.......。」」
私と桜ちゃんはお互いを見つめた後、黙りこんでしまった。
「そうですよね......そんなはずないですもんね.....」
ガラガラガラ......
.....担当医さんはそれだけ言うと足早に去って行った。
「.....ね、ねぇ、炎ちゃん。」
「.........何?」
「あ、あれって....」
「.....うん。私と花蓮ちゃんが看守長を刺し殺したことだろうね。」
「そんなことしてたんだ.......それよりどうしてあの人があの件を知っていたの?」
「分からない......」
そうだよね......
風渡さんがそんなことするはずないよね.....
......というか一緒に映っていた少女、数日前にあった刑務所を襲撃した少女に似ていたような......
......気のせいか。
とりあえず、風渡さん達をもっと笑顔にできるように頑張らなくちゃ。
ガシャアアアアン!
「きゃああああっ!?」
.....すると、大きな音と共に女性の悲鳴が響き渡った。
.....今のは同僚の声!?
何があったんだろうか......
急いで行かなくちゃ.......!
......下の階が何やら騒がしい。
一体何があったのだろう。
「.....ね、ねぇ....一体何の騒ぎ?これ。」
「分からない......酔っ払いの患者さんが来たのかな.....?」
ガラガラガラ!
「ここにも隠れてやがったかァ!」
二人で話していた刹那、勢いよくドアが開かれ、黒い覆面を被った男が入って来た。
「「ひっ......」」
私達は恐怖で固まってしまった。
「ここの患者共は皆殺しだ!貴様らも同様にな!」
そう言って荒ぶる男は、手に鋭い包丁を持っている。
逃げなきゃ.....!
でももう逃げ道はどこにもない。
狭い病室では、どこから逃げても男の攻撃を避けられる可能性はない。
窓から飛び降りたとしても、4階であるここからだと無傷で助かるはずはない。
「......もう諦めるしかないのかな.....」
私は小声で桜ちゃんに囁いた。
「.....そう、みたいだね......」
桜ちゃんも同じ考えのようだ。
「.......死ぬ時は一緒だよ?」
「.....うん。」
私たちは抱き合って覚悟を決めた。
「死ねェ!」
ブスッ。
「あっ....がっ......」
私の下腹部に包丁が突き刺さる。
私は桜ちゃんを強く抱き締めていた手を弱めてしまう。
「お前もなァ!」
ブスッ。
「うっ.....」
桜ちゃんも同様に刺されていた。
私達は弱々しく倒れこんだ。
......倒れこんでもなお、私達はお互いに抱き合っていた。
視界がぼやける。
意識が遠のく。
......桜ちゃん。
一緒に行こう。
「..........さん.....りさん.......風渡さん!」
......うるさい。
もうお前の声は聞き飽きた。
.......目が覚めると見慣れた白い天井。
......やっぱり無理だったみたいだ。
早く私をあの世に行かせてよ。
「よかった....私、貴方がもう助からないと思って......」
......助からなくてよかったのに。
「.......桜ちゃんは?」
「.......刺された箇所が悪く、意識不明の重体となっています......」
.......分かっていた。
どうせみんな助からない。
私以外みんな死んでいく。
「......それにしても風渡さん、ここに来てから散々なことばかりですね......なぜかここから落ちて死にそうになっていたり、手術室で全身にメスが刺さって倒れていたり......」
.......それなのにどうして私ばかりが死ぬことができないのだろうか。
「うぅぅぅ.....」
私はどうしていいか分からず唸り出す。
「どうしましたか!?刺された箇所が痛み出しましたか!?」
......私に構わないで。
「大丈夫ですからね?いつでも私がついていますから!」
「......いいから黙って!」
......耐えきれず、私は大きな声をあげてしまった。
「あっ.......えっと......」
「い、いえ.....悪いのは私ですから......すみません......一旦失礼しますね。」
困惑した担当医は、すぐにここから出て行った。
......そっとしておいてよ。
そうだよね......
食いつきすぎは良くないよね......
張り切るあまり、風渡さんを守りたいという気持ちを爆発させてしまった。
悪いことしてしまった......
私は罪悪感で溢れていた。
......謝ろう。
バン!
「木枯さん!急いで逃げて!」
私が悩んでいると、急に先輩が入って来た。
「どうかしたんですか?」
「火事よ!もうかなり燃え広がってる!」
「えっ!?」
急すぎる出来事に、私は理解が追いつかなかった。
「とにかく早く逃げないと!」
「はい.......でも、まだ風渡さんが.....」
「嘘っ!?患者さんは全員逃がしたはずなのに.....」
「.........私、風渡さんを連れて来ます!」
「......本当にやるの?」
「はい!私は風渡さんの担当医ですから!」
自信満々にそう言い放つと、私は風渡さんのいる病室に全力疾走で向かった。
「.......。」
私は包帯の巻かれた下腹部を見つめていた。
......もう少し上を狙ってくれれば死ねたのに。
それでいて、どうして桜ちゃんを刺す時はちゃんと刺せたの?
......私はいつまでこうしていればいいの?
......気づけば病室は業火に包まれていた。
理由は分からない。
私は逃げることなくベッド上に座っていた。
....早く死にたい。
タッタッタッタ.......
誰かが早足でこちらに来る。
ガラガラガラ!
「風渡さん!」
.........知ってた。
どうせ来るのは貴方だと。
もういいよ。
早く私の傍から離れて。
「早く逃げましょう!」
.....嫌だ。
「........早く私から離れてよ。貴方も死んじゃうよ?」
「そんな訳にはいきまs」
バラバラバラ......
ドーン!
「いやあっ!?」
.........ほら。
あの女は崩れてきた瓦礫に潰されてしまった。
......まるでどこかの愚かな看守長のように。
「風渡......さ.......」
.....瓦礫に潰されてもなお、担当医は私の名前を呼んでいた。
「大丈夫、です.......貴方は.......私が守ります.......から..........」
そう言いながら私に向けて手を伸ばす。
......すぐに息絶えて、その腕は地面に落ちてしまった。
「..........死んじゃえ。」
私は冷たく言い放った。
それからこの病院は全焼した。
その火事以降、ここが補修されることはなかった。
職員・患者は全員避難が完了し、死亡者は私の担当医だけだった。
.......やっぱり死ぬことはできなかった。
私は火事現場から発見されず、行方不明として処理された。
......お腹空いた。
あれから何も食べていない。
餓死することもないから、常にこの空腹状態でここにいる。
辛い。
苦しい。
「.......誰か助けて。」
私は誰かに問いかける。
.......返事は来ない。
これまでも。
これからも。
ずっと私は一人ぼっち。
「..........ねぇ、みんな。なぜ私を置いて逝っちゃうの?私はどうして一人ぼっちなの?教えてよ。お願い。」
少女は誰もいなくなった病室でいつまでも、いないはずの友達に語りかけていた。
厄災の魔女に園崎香純より強く魅入られた彼女は、永遠に死ぬことのできない呪いをかけられた。
『大切な人のいなくなった世界で、どう生きていけばいいの?』
彼女は生きる希望もないまま、病室で一人生きていた。
「........退屈。」
少女はボロボロのテレビの電源をつける。
「奴....魔.....だ........こ.....せ.......」
テレビには、罪もない人を魔女と言い張り、殺し合う人々が映っている。
「.......あはは。あははははは。あははははははははははははははははは.......」
その惨状を見つめながら、少女はいつまでも渇いた笑い声を上げていた。
仄暗く、孤独な病室。
そこはまるで、
独房のようだった。
「なぁ、本当にここで合ってるのか?入った人が必ず死ぬ病院ってのは。」
「あぁ。心霊マップだとここって書いてあるぜ。」
「入ったら死ぬって俺、すごく心配なんだけど。」
「大丈夫だって。ガセネタに決まってる。」
「そうだといいけど......」
「入るぞ。」
「ビビってるなら置いてくぞ。」
「ま.....待てよ......」
「真っ暗だな......」
「そりゃあそうだろ。もう誰も使っていないんだから。」
「で、ここはどういうとこなんだ?」
「分からん。」
「は?」
「いや、ガチで何も情報がない。303号室が危険ってことぐらいしか分かってない。」
「とりあえずそこ行こうぜ。」
病院に入った男たちは、問題の部屋を探して歩き出した。
「ここだ......!」
「おい、本当に入るのか?」
「当たり前だろ。」
ガチャ。
何の躊躇いもなく、男たちは病室に入っていった。
病室の中は暗く、鼻をつく刺激臭が漂っていた。
病室の中にあるのは、少しの家具と一つのベッド。
そして、まるで死んでいるかのような恍惚の少女が一人。
「.......遊びましょ?」
終
看護師さんが持ってくるおもちゃもビデオも飽きちゃった。
早く死にたいはずなのに、死ねないという地獄。
........でも、これで神楽ちゃんも桜ちゃんも助かるんだよね......
院内にて......
「風渡さんの様子はどう?」
「正常ですよ。今回復に向けて頑張っています。この間はお友達がお見舞いに来てくれていました。」
「それはよかった。早く元気になって欲しいわね。」
「でも、退院しても行く宛がないそうですよ......?ご両親もお兄さんも火事で亡くなってしまったみたいで......」
「そうだったの......かわいそうに......」
「でもお友達の家に住むことになったと言っておられましたが.....」
「そっか。どちらにせよ、早く良くなってくれることを願いたいわね。」
「はい。私も担当医として頑張ろうと思います。」
そうして医師二人は別れた。
.......それから一週間が過ぎた。
私は自殺せず、頑張って耐えた。
神楽ちゃんと桜ちゃんが死んだというニュースは今のところ入って来ていない。
やっぱり私がいけなかったんだ。
全て死のうとする私のせい。
......でも、やっぱり今すぐに死にたくなってきた。
魔女である私はもう生きてちゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
死にたい。
死んじゃいけない。
.......もうどうすればいいのかわかんないよ........
「.......ん?」
風渡さんにどういうお話をしてあげようかと悩んでいると、救急車によって新たな患者さんが運ばれてきた。
行かなくちゃ.......!
私は急いで患者さんの元へと向かった。
「運ばれてきたのは蛍火 神楽さんと東雲 桜さん。どちらも幼い女の子です。」
.....また、幼い女の子が運ばれてきた。
ここ最近、少女を狙った事件が多く起きている気がする。
私が担当している風渡さんだってそう。
「状態はどうですか?」
「東雲さんはまだかろうじて息がありますが、蛍火さんは.......」
「......そうですか。」
二人はどうやら、暗い廃墟のような家で無惨な状態で転がっていたそうだ。
犯人は捕まっており、もう息のなかった蛍火さんに性行為をしたらしい。
ひどい.......
事件の酷さに、私の目からは自然と涙が溢れ出していた。
......現在、東雲さんは治療を受けている。
元気になってくれることを願うばかりだ。
「........!」
......また、この病院に救急車が入ってきた。
おもむろに上から見下ろした私は、降ろされた患者に驚きが隠せなかった。
「なんで.......どうしてなの........?」
自殺は我慢したはずなのに。
死んじゃだめと必死に耐えたはずなのに。
どうして二人は死んでしまったの?
私には全く分からなかった。
ガラガラ......
「失礼します。」
しばらくして、私の担当医さんが入って来た。
「風渡さん、体調はどうですか?」
「........元気です。」
「あまり元気なようには見えませんが.........どうかなさいましたか?」
「いえ........全く問題ありません。」
「でも、気分が優れていないように見え」
「だから健康だって言っているでしょう!気にしないでください!」
私は立ち上がって担当医さんに掴みかかった。
「あ......すみません、しつこく聞いてしまって......」
「......いいから放っておいてください。」
「はい.......」
「......。」
怒りを鎮めた私はベッドへと戻った。
「.......本当にすみません。実は私、ここに来てからあまり経っていない新米の医師でして.......まだ患者さんと話すのに慣れていないんですよ。」
「......そうですか。」
「はい........あ、そういえばさっきこちらに風渡さんと同年代くらいの二人の女の子が運ばれてきたのですが.......」
「........そうですか。」
「名前は蛍火 神楽さんと、東雲 桜さんというのですが.....」
「........知らない人です。」
「そうでしたか......」
「........あの。」
「はい、どうかしましたか?」
「.....その二人はもう死んでますか?」
「あ、えっと......蛍火さんはもう息絶えておりますが......東雲さんはまだ息があったようで、現在治療を受けています。」
「.......!」
私は少し希望を感じた。
「それがどうかしましたか?」
「あ、いえ......無事ならいいけどと思いまして......」
「そうですね。元気になったら風渡さんにも紹介しますね。きっといい友達になれると思いますよ!」
......もう友達なんだけどな......
........その晩。
私は病室を抜け出して、桜ちゃんのいる病室に向かっていた。
神楽ちゃんはここに運びこまれてきた時にはもう息がなかったらしい。
生きていればよかったと思ったが、思いは届かなかった。
......でも桜ちゃんはまだ息があるから生きられるかもしれない。
.......着いた。
ガラガラ......
扉を開けて、部屋に入った。
「すぅすぅ......」
桜ちゃんは元気そうに眠っていた。
よかった......
「.......桜ちゃん?」
私は小さく声をかけた。
「んぅ.......ひっ.......!?」
桜ちゃんは起きると共になぜか怯えていた。
「お願いします......もう許してください......」
........幻覚でも見ているのだろうか。
「......大丈夫だよ、桜ちゃん。私、炎だよ。」
「........ほ、炎.......ちゃん?」
「うん、私だよ。」
「炎ちゃん........ぐすっ.......」
桜ちゃんは私に泣きついてきた。
「どうしたの?一体貴方と神楽ちゃんに何があったの?」
「うぅ......実はね.......」
「.......ってことがあったんだけど.....」
「.......それは災難だったね......」
「私は助かったけど......神楽ちゃんが.......」
「うん......」
「.......ねぇ、炎ちゃん。」
「......何?」
「お願いがあるんだけど.....」
「.....うん。」
「......ここにいる間、ずっと一緒にいて欲しいの。」
「......悪いけど、私にはあまり近づかない方がいいよ。」
「.....どうして?」
「だって.......私、魔女なんだもん。」
「どういうこと......?魔女......花純さんはとっくに処刑されたはずでしょう!?」
「......じゃあどうして私の周りの人がどんどん死んでいくの?」
「えっと....」
「私のお父さんお母さん、お兄ちゃん。花蓮ちゃんに杏ちゃん、夢乃さんに紗菜ちゃんに......神楽ちゃんだって。」
「あ.....」
「それもこれも、魔女である私の呪いによって死んでいってる。」
「あの......」
「.......五十嵐さんも看守長も、もっと早く私を処刑するべきだったんだ。」
「.......そうだったとしても、私は炎ちゃんと一緒にいるよ!」
「........え?」
「.......炎ちゃんがたとえ魔女だろうと、人を殺したことがあったとしても、私は炎ちゃんの傍にいるよ。だって......私の友達なんだもの。」
「桜ちゃん......」
.......そう話す桜ちゃんは、ずっと私の傍にいたあの子に似ている気がした。
.......それから、私は桜ちゃんと一緒の病室にしてとお願いしてみた。
要求はあっさり受け入れられ、私と桜ちゃんは同じ病室で暮らすことになった。
「.....それでこういうことがあってね.....」
「あはは。」
会話は毎日尽きることはなかった。
あんなに驚異的な頻度で亡くなっていたはずなのに、桜ちゃんは一週間経っても死ぬことはなかった。
ようやく負の連鎖から抜け出せたのかな.......
とある一室にて......
「それで、風渡さんと東雲さんはどう?」
「すごく元気ですよ。前までのローテンションなんて嘘みたいに。」
「それは良かった。木枯さん、これからも頑張ってね。」
「はい!二人分、私が頑張って見守ります!」
「あ、くれぐれも無理はしないようにね。」
「分かってますよ!無理しない程度で頑張ります!」
「........そういえば、木枯さん。」
「なんですか?」
「.....貴方の母親についてなんだけど......」
「......私の母、ですか?」
「貴方の母親、とある収容施設で遺体となって発見されたそうよ.....」
「えっ........本当ですか!?」
「えぇ。貴方が幼い頃行方をくらましたあの人が.......ね。」
「そうでしたか.......教えて頂きありがとうございます、先輩。」
「あ、ちょっと待って。まだ伝えたいことが......」
「.....?」
「......実はその施設から回収された監視カメラに......」
「.......瓦礫に潰された貴方の母親を刺し殺す風渡さんと茶髪の少女が映っていたの。」
「......そういえばあの収容施設なんだけど......」
「.......できればその話はしないで欲しいんだけど......桜ちゃんも思い出したくないでしょ?あの辛い拷問の日々を.....」
「.......そうだね。そう言われたらあの心臓あたりに槍を刺されたこと思い出しちゃった.....」
「やめよ、この話。」
「......うん。」
ガラガラガラ!
私も桜ちゃんも例の話をやめようとしていた時、不意に病室のドアが強く開けられた。
「風渡さん!少しいいですか!?」
「えっと.......どうかしましたか?」
「じ、実は......です.....ね.......ハァ......ハァ......」
「.......一度呼吸を整えてからの方がいいんじゃないですか......?」
「そ、そうですね......では失礼して......」
......数分後。
「それで、要件って一体?」
「実はですね.......風渡さんと茶髪の少女が今は廃墟となった施設で女性を刺し殺していたとの情報が入ったのですが.....」
「「.......。」」
私と桜ちゃんはお互いを見つめた後、黙りこんでしまった。
「そうですよね......そんなはずないですもんね.....」
ガラガラガラ......
.....担当医さんはそれだけ言うと足早に去って行った。
「.....ね、ねぇ、炎ちゃん。」
「.........何?」
「あ、あれって....」
「.....うん。私と花蓮ちゃんが看守長を刺し殺したことだろうね。」
「そんなことしてたんだ.......それよりどうしてあの人があの件を知っていたの?」
「分からない......」
そうだよね......
風渡さんがそんなことするはずないよね.....
......というか一緒に映っていた少女、数日前にあった刑務所を襲撃した少女に似ていたような......
......気のせいか。
とりあえず、風渡さん達をもっと笑顔にできるように頑張らなくちゃ。
ガシャアアアアン!
「きゃああああっ!?」
.....すると、大きな音と共に女性の悲鳴が響き渡った。
.....今のは同僚の声!?
何があったんだろうか......
急いで行かなくちゃ.......!
......下の階が何やら騒がしい。
一体何があったのだろう。
「.....ね、ねぇ....一体何の騒ぎ?これ。」
「分からない......酔っ払いの患者さんが来たのかな.....?」
ガラガラガラ!
「ここにも隠れてやがったかァ!」
二人で話していた刹那、勢いよくドアが開かれ、黒い覆面を被った男が入って来た。
「「ひっ......」」
私達は恐怖で固まってしまった。
「ここの患者共は皆殺しだ!貴様らも同様にな!」
そう言って荒ぶる男は、手に鋭い包丁を持っている。
逃げなきゃ.....!
でももう逃げ道はどこにもない。
狭い病室では、どこから逃げても男の攻撃を避けられる可能性はない。
窓から飛び降りたとしても、4階であるここからだと無傷で助かるはずはない。
「......もう諦めるしかないのかな.....」
私は小声で桜ちゃんに囁いた。
「.....そう、みたいだね......」
桜ちゃんも同じ考えのようだ。
「.......死ぬ時は一緒だよ?」
「.....うん。」
私たちは抱き合って覚悟を決めた。
「死ねェ!」
ブスッ。
「あっ....がっ......」
私の下腹部に包丁が突き刺さる。
私は桜ちゃんを強く抱き締めていた手を弱めてしまう。
「お前もなァ!」
ブスッ。
「うっ.....」
桜ちゃんも同様に刺されていた。
私達は弱々しく倒れこんだ。
......倒れこんでもなお、私達はお互いに抱き合っていた。
視界がぼやける。
意識が遠のく。
......桜ちゃん。
一緒に行こう。
「..........さん.....りさん.......風渡さん!」
......うるさい。
もうお前の声は聞き飽きた。
.......目が覚めると見慣れた白い天井。
......やっぱり無理だったみたいだ。
早く私をあの世に行かせてよ。
「よかった....私、貴方がもう助からないと思って......」
......助からなくてよかったのに。
「.......桜ちゃんは?」
「.......刺された箇所が悪く、意識不明の重体となっています......」
.......分かっていた。
どうせみんな助からない。
私以外みんな死んでいく。
「......それにしても風渡さん、ここに来てから散々なことばかりですね......なぜかここから落ちて死にそうになっていたり、手術室で全身にメスが刺さって倒れていたり......」
.......それなのにどうして私ばかりが死ぬことができないのだろうか。
「うぅぅぅ.....」
私はどうしていいか分からず唸り出す。
「どうしましたか!?刺された箇所が痛み出しましたか!?」
......私に構わないで。
「大丈夫ですからね?いつでも私がついていますから!」
「......いいから黙って!」
......耐えきれず、私は大きな声をあげてしまった。
「あっ.......えっと......」
「い、いえ.....悪いのは私ですから......すみません......一旦失礼しますね。」
困惑した担当医は、すぐにここから出て行った。
......そっとしておいてよ。
そうだよね......
食いつきすぎは良くないよね......
張り切るあまり、風渡さんを守りたいという気持ちを爆発させてしまった。
悪いことしてしまった......
私は罪悪感で溢れていた。
......謝ろう。
バン!
「木枯さん!急いで逃げて!」
私が悩んでいると、急に先輩が入って来た。
「どうかしたんですか?」
「火事よ!もうかなり燃え広がってる!」
「えっ!?」
急すぎる出来事に、私は理解が追いつかなかった。
「とにかく早く逃げないと!」
「はい.......でも、まだ風渡さんが.....」
「嘘っ!?患者さんは全員逃がしたはずなのに.....」
「.........私、風渡さんを連れて来ます!」
「......本当にやるの?」
「はい!私は風渡さんの担当医ですから!」
自信満々にそう言い放つと、私は風渡さんのいる病室に全力疾走で向かった。
「.......。」
私は包帯の巻かれた下腹部を見つめていた。
......もう少し上を狙ってくれれば死ねたのに。
それでいて、どうして桜ちゃんを刺す時はちゃんと刺せたの?
......私はいつまでこうしていればいいの?
......気づけば病室は業火に包まれていた。
理由は分からない。
私は逃げることなくベッド上に座っていた。
....早く死にたい。
タッタッタッタ.......
誰かが早足でこちらに来る。
ガラガラガラ!
「風渡さん!」
.........知ってた。
どうせ来るのは貴方だと。
もういいよ。
早く私の傍から離れて。
「早く逃げましょう!」
.....嫌だ。
「........早く私から離れてよ。貴方も死んじゃうよ?」
「そんな訳にはいきまs」
バラバラバラ......
ドーン!
「いやあっ!?」
.........ほら。
あの女は崩れてきた瓦礫に潰されてしまった。
......まるでどこかの愚かな看守長のように。
「風渡......さ.......」
.....瓦礫に潰されてもなお、担当医は私の名前を呼んでいた。
「大丈夫、です.......貴方は.......私が守ります.......から..........」
そう言いながら私に向けて手を伸ばす。
......すぐに息絶えて、その腕は地面に落ちてしまった。
「..........死んじゃえ。」
私は冷たく言い放った。
それからこの病院は全焼した。
その火事以降、ここが補修されることはなかった。
職員・患者は全員避難が完了し、死亡者は私の担当医だけだった。
.......やっぱり死ぬことはできなかった。
私は火事現場から発見されず、行方不明として処理された。
......お腹空いた。
あれから何も食べていない。
餓死することもないから、常にこの空腹状態でここにいる。
辛い。
苦しい。
「.......誰か助けて。」
私は誰かに問いかける。
.......返事は来ない。
これまでも。
これからも。
ずっと私は一人ぼっち。
「..........ねぇ、みんな。なぜ私を置いて逝っちゃうの?私はどうして一人ぼっちなの?教えてよ。お願い。」
少女は誰もいなくなった病室でいつまでも、いないはずの友達に語りかけていた。
厄災の魔女に園崎香純より強く魅入られた彼女は、永遠に死ぬことのできない呪いをかけられた。
『大切な人のいなくなった世界で、どう生きていけばいいの?』
彼女は生きる希望もないまま、病室で一人生きていた。
「........退屈。」
少女はボロボロのテレビの電源をつける。
「奴....魔.....だ........こ.....せ.......」
テレビには、罪もない人を魔女と言い張り、殺し合う人々が映っている。
「.......あはは。あははははは。あははははははははははははははははは.......」
その惨状を見つめながら、少女はいつまでも渇いた笑い声を上げていた。
仄暗く、孤独な病室。
そこはまるで、
独房のようだった。
「なぁ、本当にここで合ってるのか?入った人が必ず死ぬ病院ってのは。」
「あぁ。心霊マップだとここって書いてあるぜ。」
「入ったら死ぬって俺、すごく心配なんだけど。」
「大丈夫だって。ガセネタに決まってる。」
「そうだといいけど......」
「入るぞ。」
「ビビってるなら置いてくぞ。」
「ま.....待てよ......」
「真っ暗だな......」
「そりゃあそうだろ。もう誰も使っていないんだから。」
「で、ここはどういうとこなんだ?」
「分からん。」
「は?」
「いや、ガチで何も情報がない。303号室が危険ってことぐらいしか分かってない。」
「とりあえずそこ行こうぜ。」
病院に入った男たちは、問題の部屋を探して歩き出した。
「ここだ......!」
「おい、本当に入るのか?」
「当たり前だろ。」
ガチャ。
何の躊躇いもなく、男たちは病室に入っていった。
病室の中は暗く、鼻をつく刺激臭が漂っていた。
病室の中にあるのは、少しの家具と一つのベッド。
そして、まるで死んでいるかのような恍惚の少女が一人。
「.......遊びましょ?」
終
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自分こういう盧好きなんで面白かったです
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