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第15話 ここは何処?③
しおりを挟む笑い声のする方を向くと、お腹を抱えてヒィーヒィー笑ってる男の人。
「肉を引きちぎるって…発想が、アハハッ」
まだ笑っている。笑い上戸なのか…
散々笑った後に
「ごめんごめんツボったわーー俺、優汰って言うんだ。よろしくね。」
歯を見せながらニカッと笑う。
先程はあまり気にしていなかった。
というより、知らない場所で目が覚めたら自分のベッド脇に4人がいたのだ。それも覗き込む様に。普通に恐怖だろう。ベッド脇にいた4人の日本人の塊という認識しかしていなかったから気付かなかったが、この人…
肌が黒い、歯が白い、目と鼻筋の感じから彫りも深そう。オマケに髭ガッツリ生えてて顔半分くらいしかわからない。この優汰って人、どこの国の人なんだろ?日本語喋ってるけど国は違うよね。
「あー、楽しんでもらえて何よりです。千早って言います。それで、手品やったり肉を引きちぎったり、私達の誘拐への贖罪的なことで楽しませようと変な物見せられているんです?」
「監禁してる相手を楽しまそうとなんてすると思う?荒唐無稽な話だと思うんだけどさー、俺は魔法っぽく感じたね。つまりさ、ここ地球じゃないんじゃないか説。」
「……………………………………………は?」
クソほど意味がわからない。
そんなこと現実にあるわけないじゃん。この人アホの子なの?アホなの?ねぇアホ?
盛大に心の中で罵りながら、アホ認定した優汰。私のアホの子を見る目つきが隠せなかったんだろう。
「千早ちゃんもさ、実際見てみたら多分俺と同じこと思うと思う。」
「いや思わないっしょ。」
「即答じゃん!俺秒殺じゃん!ちゃんと俺の話を聞いてくれよ!」
「優汰さんてラッパーなの?」
「違うけど!?」
「じゃあ変な韻を踏むのやめてもらってもいいですか?」
「俺、韻踏んでた?」
「はい、なんならメロディ付きで聞こえました。」
「まーじ!?どうやって?」
「即答じゃん!⤵俺秒殺じゃん!?⤴ちゃんと、俺の!話を!聞いてくれYO!って聞こえました。」
「ギャハハハハハハハハ!」
この人完全にゲラじゃないか。笑いの滝壺に叩き込んでやったぜ。もう浮かんでこなくていいYO!
あーアホの子とアホなやり取りをしてしまった。一仕事終えた疲労感。私さっきまで気絶してたんだから疲れさせないでよね。
「僕もね、信じられないけど、ここ。地球ではないことは確かだと思うんだよね。」
1番最初に話しかけてきた優しそうなオジサンが話に無理やり乱入してきた。
ヤバイ名前忘れた…
「あぁぁーと、えぇぇぇーっとぉ」
と口ごもっていたら
「鈴木修です。」
名乗ってくれた。
名前忘れたのバレバレじゃないか。
「スミマセン。じゃあシューさんと呼びます。で、シューさんはなぜここが地球じゃないと思うんですか?」
「僕ね、大学で物理教えてるの。物理学者って言ったらわかるかなぁ?」
「教授ってことですか?」
「言いたかったのはそこじゃないんだけどね、まぁそれも合ってるよ。」
「物理学ってことは、重力とかってことですか?」
「正解です。何学かなど詳しくは説明しませんが、食事が運ばれてくる際に相手側がしている行動の説明が一切つきません。1つの手品として見せているのであれば、地球の誰もが知っている常識に当てはめれば不思議に思うもの、あり得ない、どのようにやっているのか?そのように思わせるのが手品になりますね。」
まぁ、言葉にすればそうですよね、と頷く。
「物を浮かせる、ただそれだけならば手品と1言で片付けられましょう。ですが、物を自在に操れば?ナイフもないのに指を動かすだけで肉が目の前でスパスパ切れていって、切れた肉がそのまま皿に飛んでいったら?遠くにある机が動いて、皿がどんどん勝手に並んで、水が入ったピッチャーを浮かせて空のグラスに水を注いでいたら?空だったはずのグラスに氷が出現したら?それをその場を動かず、指先を動かすだけで全てをやってのけられたら?千早さんはどう思われますか?手品の1言で終われますでしょうか?」
「………本当にそんなことが?」
「嘘をついても僕に益はありません。」
「ちょっと待って、それじゃ一一一
コンコン
ノックの音が響く。どこから?
真っ白な壁からである。
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