水と言霊と

みぃうめ

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第81話    これからのこと

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「皆様、お部屋の準備に少々お時間をいただきます。かなりのお時間が経過しております。私共は下がりますので、皆様でここで昼食をとられては如何でしょうか?勿論お部屋の扉はお閉めいたしません。」
「そうしてくれ。」
「畏まりました。」


 異世界人達は部屋から下がっていく。
 皇帝も立ち上がり護衛に囲まれながら部屋を出て行こうとするが

「皇帝!」

 呼び止めた。

「何かな?紫愛殿。」
「私達が皇帝に会いたいと言えばすぐに会ってくれるの?」
「君達の為ならば、時間の許す限り会おう。」
「わかった。よろしく。」

 皇帝は頷いて去って行った。



 そして部屋には直ぐに昼食が運び込まれ、全員で食事をとることになった。

 開口一番は麗。

「何であんた達あんなに喧嘩腰だったのよ!すっごい怖かったんだから!それに魔法使えるって何よ!」
「怖い思いさせてごめんね、だけどあいつらが私達を利用して何かをさせようとしてるのは明らかだったから舐められるわけにはいかなかったの。穏便に済まそうなんてしたら利用されるだけされてこっちの意見が何も通らなくなっちゃう。そしたら待っているのは本当に最悪な未来だけ。」
「そうだぞ。本当は少しの協力もしたくなかったんだがな、やはりそれでは済みそうもなかった。最初に協力しないと言ってから少しだけでも協力する姿勢を見せたら、相手はそれを呑まざるを得ない。今後要求が増えていくのは目に見えている。みんなにはそれに応じないでほしい。こちらの要求だけを呑ませるんだ。」

 あっくんの言葉にカオリンも続く。

「川端君のやり方は正しかったと思うわ。魔物退治のことしか口にしてはいなかったけれど、他にも絶対要求はあるはずよ。初めから友好的な姿勢を見せたら、相手にとって都合の良い駒扱いで終わっただけだわ。」
「そりゃそうかもしれないけど…っていうか紫愛って本当に強かったんだね。動き早すぎて何したか全然わかんなかった。あれ団長とか言ってなかった?凄すぎなんだけど!」

 強いって言っただけで武の型すら見せてなかったからね。

「魔法使われたらどうしようもなかったかもね。でも殺されるようなことはなかったと思うよ。なにせ私達は大切な駒。大きな犠牲を払って得た駒を使う前に失うようなことはしないでしょ?それに、あれ自体脅しの為に皇帝にやらされたことかもしれないしね。」
「どーゆーこと?」
「武力を見せて、俺達は強いんだから言うことを聞いた方が身のためだ的な、ね。まぁ返り討ちにしたんだけど。」
「紫愛、それ最初からわかってたの?」
「んなわけない。今思えばってだけ。あの時は呆れてただけだよ。」
「それであの立ち回りができるなんて、やっぱり紫愛ちゃんは凄いわ!それにあいつらが私達を人質に取引しようとした時、怒ってくれたでしょう?とても嬉しかったわ。紫愛ちゃん、ありがとうね。」

 カオリンはお礼を言ってくるけど、私は申し訳なさでいっぱいだった。

「私はみんなを危険に晒した。お礼を言われるようなことは何もないし、謝らないといけないくらいだよ。」
「それは気にしなくて大丈夫よ。紫愛ちゃんと川端君が対応してくれたからこそ、良いように事が運んだのよ。2人がいなかったらそれこそ終わりだったもの。」
「紫愛、全然動じてなかったけどさ、キショくなかったの?あの青い肌に白い髪。おまけに目は真っ赤。他の人も目の色が違うだけ!」
「え、全然。」
「なんでよ!!まるっきり宇宙人だったでしょ!?」
「だって隠したいって思って、実際隠すほど違うって言うんだからさ、てっきり目が6個あるとか鱗生えてるとかそういう想像してたら色が違うだけでしょ?色の方向性が違うだけなら白人でも黒人でもいるよ?アイツら見てア○ターだ!と思ったくらい。」
「アバ○ー!!??アハハハ!」

 またカオリンが笑いの波に攫われたよ。
 そんなカオリンを置き去りに麗の質問は止まらない。

「そうだ!魔法が使えるって何よ!?私何も知らない!まさか2人でコソコソしてたのってそれ?」
「それは俺も聞きたかった!いつの間に魔法なんて使えるようになったの?明白あからさまにコソコソしてたから何かしてるんだろーなーとは思ってだけどそーゆーこと!?俺達も魔法使えるの!?」

 麗と優汰が興奮して聞いてくる。

「あはは、やっぱりバレバレだったよね。そう、あれ魔法の実験みたいなことしてた。でね、さっき皇帝も言ってたけど、復讐の為に命を狙われるのもそうだけど、私達の魔力も狙われる対象だと思うの。だからみんなにも覚えて自衛してほしい。騎士つけるって言ってたけど、正直監視の意味合いが強いと思う。皇帝はそこのところは正直に話してたと思ってる。じゃなきゃ私達のことを怖いだなんて言うはずない。」

 みんなの表情を見つつ、更に続ける。

「私達を利用したい。でも私達が魔法を使えないままでは利用できない。でも魔法を使えるようになったら、それは私達がヤツらに対抗するだけの力がつくということ。悩ましいところではあると思う。でも、大きな犠牲を払ってでも呼びたかった私達を、結局利用することを選んだ。」

 ここであっくんが口を挟んできた。

「しーちゃん、俺思ったんだけどさ、色々想定外だったんじゃない?」
「想定外?」
「そう。1つ目。こんなに魔力量の多い人間が来ることは想定外だった。皇帝が1番なら、それ相当か、またはそれに順ずる位の魔力量の人間が来る想定。2つ目。俺達の短期間での魔法の使用。本当なら、魔力制御を教えながら懐柔していくつもりだった。何せ3年もあるんだ。3年もの間、優しく親切に、事あるごとに持ち上げられ、そして何でも与えられ続けたら?俺達は恩を感じるようになり、何でも言うことを聞くようにならないか?」

 それを聞いて全身に鳥肌が立ち怖気が走る。

「げっ!!」

 麗は声を上げ、カオリンと優汰は顔を顰めた。

「そんなの胸糞悪いなんてもんじゃない!」
「でも、しーちゃんも今の俺の話を聞いてそのつもりだったと思わないか?」
「……その通りだと思う。懐柔はされなかったとしても、敵意は確実に減った。」
「だろう?魔力量の多さは、想定外でもむしろラッキーだと思っていたはず。俺としーちゃんが魔法を使えるようになるなんて考える事すらなかっただろうから、懐柔して何でも言うことを聞く駒に育て上げれば異世界人達の戦力アップは計り知れないからな。だが、そうはならなかった。」

 これにはみんな頷く。

「そして、魔力制御の方法は隠す事なく皇帝自ら欲した。俺達があれだけの抵抗を見せたんだ。口にするしかなかったんだろう。皇帝は強かだ。譲れない部分は引かなかったが、そうでない部分はあっさり引いた。俺達の意見を尊重するような態度まで見せた。懐柔することは一切諦めていない。」

 あっくんは声を低くし、みんなに注意喚起する。

「俺達は今のままではかなり不味いぞ。みんな心してくれ。絶対に異世界人達の要求は呑んではいけない。そのままズルズルと相手の手中に堕ちていくことになる。しかも俺達の見た目はこの世界では平民に近い。いくら潜在的な魔力量が多いのがわかっていても、今の使えないままでは貴族達には侮蔑され、軽んじられ、そのまま傀儡にしようとされるだろう。何かを要求されたらその場で応えず、みんなで話し合って決めた方がいい。」

 これにカオリンも厳しい表情を浮かべ同調する。

「そうね、簡単に応じてはいけないわ。“みんなで話し合って決める”それは私達の中で絶対のルールにしましょう。」

 みんなで頷き合う。

「あとは、魔法。みんなには使えるようになってほしい。ご飯食べ終わったら早速とりかかりたいから、早くご飯食べちゃお!あっくんも一緒にやってくれる?」
「勿論。一緒にやろう。」













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