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第160話 異世界人の味覚①
しおりを挟む迷った末に作ったのはスイートポテトモドキ。
サツマイモっぽい物を蒸して皮を剥き、潰してシロップと油を少々、塩をひとつまみ。
それっぽく形を整えたら卵黄を表面に塗りオーブンで焼く。
焼いてる間に大豆を探しに行く。
結果、わからず。
豆っぽい物は結構置いてあったけど、私の知ってる大豆はなかった。
優汰連れて来ないとわかんないねとあっくんと言い合い、一旦諦めた。
いつもの如くあっくんの魔法で時短に時短を重ね、スイートポテトもかなりの数が出来上がった。
実は、ラルフとハンスにも作った。
「前々から思ってたんだけど、これだけ食文化が進んでいないのは、もしかしたらこの世界では地球と味覚が違っていて、私達が不味いと感じる物こそが美味しいと感じてるってことはない?それ、確かめたくても確かめる術はないよね?だったら私の作った物食べて何て思うのか、ちょっと興味ない?」
と、あっくんに聞いてみた。
「確かに興味はある。あるけど……しーちゃんの手作りをわざわざ与えてまでって思うと、勿体無い。だったら俺が全部食う。」
「いやいや、毎回あげるわけじゃないよ!そんなことしてたら量が凄いことになるから私だって嫌。あっくんも手伝ってくれるけど、それでも1人で作るの考えたら7人分だって結構な量だよ!ラルフとハンスだったら食べてくれそうじゃない?1回あげて、嘘偽りのない感想が欲しいって言ってみようよ!美味しい物与えられてるのに我儘言いやがってとか思われたままなの癪に障るし。」
「それは確かに。みんなで食べてる時に、他の人にもどう思うか聞いてみよう。香織さんとか、反応見たいって言うかもしれないしな。」
カオリンは面白い事大好きだもんね!
「意外と金谷さんも見たがるかも!金谷さんて結構人の反応見て楽しんでるでしょ?」
「しーちゃんもそう思う?興味無さそうなフリしてるけどたまにニヤついてたりするしな。」
「ムッツリなのかな?」
「ちょっと!!ここ部屋の中じゃないよ!?」
「大丈夫。意味通じないよ。そんな言葉ここにあると思う?麗が皇帝にキショって言ったのも、雰囲気から良い言葉じゃないのはわかってもさ、言葉の意味はわかってないはずだもん。」
「だーめ!俺と2人だけの時にして!これからは絢音もいるんだからさ。少し気をつけて。普段から気をつけてないとふとした時に出ちゃうからね。」
子供はあれやこれや知りたがる時期がある。
絢音は物がハッキリ見えてなかったんだから何でも知りたいはず。
「絢音に聞かれたら答えるつもりだけど?隠すの良くないよね?」
その言葉に難しい顔をするあっくん。
「しーちゃん、あのね、絢音のこと何歳くらいに見えてる?」
「外人さんの見た目年齢自信ない。多分30は過ぎてるんじゃないかと予想してる。」
「俺は、40近いと思う。」
「そんなにっ!?」
「うん。しーちゃん、ちょっと耳貸して。」
あっくんは屈んで私の耳に口を近づける。
「あの綺麗な見た目に騙されてると思うけど俺はそう感じる。かなり下世話な話になるけど、もし、あのまま歳を取って行ったとして、思春期迎える頃にはもう立派なオジサンになってる。そこから大人に成長すればするほど、老人だよ?今は本人もそこまでの違和感は感じてないと思う。目が見えてなかったからね。もし老人の身体のまま知識だけがあったら…」
青くなった。
言葉も出てこない。
「ね?それに、絢音はまだ9歳だ。知識的にも早すぎると思う。大人の身体になってるから、もしかしてビックリするようなこともあるかもしれないけど、それは男側がフォローすることだよ。しーちゃんが下手に口出ししない方が良いと思う。」
「私……そこまで考えてなかった。絢音は子供だって認識しかしてなかったから…」
「そうだと思ったよ。なんにせよ、すぐに地球に帰れるとは思えない。問題が多過ぎるし、何より、ロストテクノロジーになってしまったあんな便利な魔法具や魔法陣を解読しようとしないはずないんだ。それなのにこっちの人間が何も得られていない。だからこそ、好きに研究しろって言われてるんだと思うんだ。結果が出せるもんなら出してみろと言わんばかりに。」
そう言われ、途端に不安が襲ってくる。
「…………いつまで経っても帰れない?」
「いいや。俺はそうは思わない。正直、こっちの世界の奴等は魔法に頼り過ぎて馬鹿ばっかりだ。便利な魔法があるが故に、全て魔法で解決してきて勉強を怠った結果がこれなんだと思う。知識がなければ魔法だって役に立たないのに、先に知識を失ったから魔法も段々弱くなったんじゃないかと思ってる。昔の文献には強い魔法の痕跡は残ってるはずだよ。俺は香織さんなら解読するんじゃないかと思ってる。」
「確かに、カオリンは頭は良いけど…」
「おまけに知識の塊だ。香織さんだけじゃない。こっちの世界の奴等からしたら、地球の全員が天才だよ。」
天才というワードを聞き、ふとシューさんのことが頭を過った。
「そういえばシューさんてどうしてるの?あの人、物理学者だって言ってたよね?」
「あぁ、あのジジイなら1歩も外に出てないよ。」
「何で知ってるの!?」
しかもジジイって言ったよ!?
「しーちゃんが部屋から出てこなかった時、ラルフから申し出があったんだよ。1人につき1人の護衛がついてる名目にはなってるけどさ、俺達が呼び出すのって話が通じて地位もあるラルフかハンスでしょ?誰が誰の護衛かとか、あってないようなもんだ。ジジイについてる護衛が可哀想過ぎるからローテーションで回したいって言われたんだよ。ラルフに抜けられたら困るから、それ以外の護衛内で回すのは許可した。その代わり、1日の終わりにジジイの動きを報告するのを条件にしたんだよ。何してるかわかんないのは怖いからね。」
「流石あっくん!」
「報告させてるだけだから何もしてないよ。しーちゃん、いい匂いしてきた。もう焼けたんじゃない?」
「あ!ほんとだ!話に夢中で気が付かなかった!早く持って帰ろう!」
部屋へ戻りながら話す。
「食べてなくてもこの匂いだけでも美味しそうって思うんだけどなぁー。」
「それは俺も思うよ。厨房の奴等、何も言ってこないよな?」
「うん……もしかして嗅覚も違うのかな?」
「あーーー、そう、なのか?あの香油塗りたくって平気なんだからそうかもしれないね。」
「げっ!思い出させないでよ!」
「あはは!ごめん!俺はガングロメイク思い出しちゃったよ。」
「臭くないなら私も見てみたいなぁー。」
「やめときなよ!気色悪いの1言だったよ。でもこれから見かける時もあるだろうから、覚悟だけはしておいてね。」
「ニオイの?」
「そうそう!」
あっくんと笑いながら部屋に戻った。
コンコン
「俺です。戻りました。」
「はぁい!」
「変わりはありませんでしたか?」
「大丈夫よ。」
「カオリン!お菓子お菓子!冷める前に食べよっ!」
「みーちゃん!!!」
絢音が駆け寄ってくる。
「おかえりなさい。」
「ただいま!お菓子食べようね!」
「うん!」
みんなでスイートポテトモドキを食べる。
「相変わらず、紫愛ちゃんのお菓子は最高だわ!」
「みーちゃんこれおいしー!」
「良かったぁ。あのね、みんなにどう思うか聞きたいことがあって一一一一」
そうしてさっきあっくんと話したことを伝える。
「面白そうだわ!私も参加します!」
カオリンはノリノリだ。
「俺も参加希望。」
やっぱり金谷さんも参加を希望した。
「私も。」
麗は小さな声で言う。
私が怒ったのが尾を引いているんだろう。
「絢音はどうする?」
「……ぼく…………」
そう呟いた後、辺りを見回し
「あーくんのうしろ、かくれる。」
「絢音は俺でいいの?」
「うん!」
「じゃあ俺の後ろに隠れような。守るから大丈夫だ。ラルフとハンスここに呼んでくるからそれまでしーちゃんと一緒に居てくれ。」
そう言ってあっくんが呼びに行ってくれた。
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