龍の王国

反逆軍

33

　五人の背後に立っていた男はヴァルカン達の事を一人ずつ見定める様にじっと見つめる。
　男の視線がガイアで止まる。

「その剣…この人数…まさか！貴様ら…」

　全て言い切る前にゼウスが男の首を刎ねる。
　ガイアの武器は大剣で、大きく目立ってしまうためにバレた可能性が高い。

「急いでここから離れるぞ！」

　しかし、既に数人の戦士が五人の前に立場はだかる。

「ここで戦う気？」

「いや、あくまで戦闘は最小限にするべきだ。敵を倒すというより逃げるために道を作るという事を意識したほうがいい」

「了解」

　甲冑を着た戦士一人一人の実力はさほど高くはない。
　しかし、それでも数の利というものがある。
　一撃で二、三人倒しても、敵は次から次に湧いてくる。
　なんとか幹部が出てくる前に逃げ切りたいが、このままだとそれも難しい。
　
「仕方ない…みんな！落ちないでね！」

　ノトスは叫び、双剣を軽く振る。
　次の瞬間、強烈な上昇気流が発生し、五人の体を持ち上げる。
　ノトスはそのまま風を操り、近くの森へと移動する。

「走れ走れ走れ！」

　地面に足をつけた瞬間にゼウスが叫ぶ。
　ゼウスの指示通りに全員は橋へと一斉に走る。
　しかし、橋まであと少しというところで最悪の事態が起こる。
　いきなり上から橋の前に何かが降ってきた。
　土煙が収まり、降ってきたものの正体を確かめる。
　そこにいたのは、最強の武闘家、アレスだった。

「久しいな。まさかこんなに早く貴様らと再開できるとは思っても見なかったぞ」

　アレスが話している間にも、後ろにどんどん人が集まってくる。
　よく見ると、さっきの決闘で審判を務めた少女もいる。
　恐らく彼女も隊長なのだろう。
　今この場で隊長二人を相手にするのは相当大変だ。
　他の雑兵ならともかく、隊長クラスの実力者を相手にするのはあまりよろしくないだろう。
　ましてや相手はアレスなのだ。
　勝ち目はないと断言してもいいだろう。

「逃げられると思わない方がいいぞ」

　言いながらアレスは一歩だけ距離を詰める。
　五人はその迫力に押され、アレスが近付いた分だけ後ずさる。
　すると、次の瞬間あり得ない現象が起こる。
　五人が一歩下がった瞬間、地面が光り出したのだ。
　そして、光はどんどん強くなっていき、この場にいる全員があまりの眩しさに目を閉じる。
　光が収まった時には、五人の姿はそこにはなかった。