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反逆軍
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「嘘…本当にガイアが…」
テティスが悲痛な声を上げる。
「そうだよ。否定はしない。でも、よく分かったよね。私が裏切り者って。上手く隠してたつもりなんだけどなあ…」
そう言うガイアの声には、いつもの明るさはなく、むしろその反対で、冷酷さが滲み出ている。
「お前ら武器を抜け。こいつが抵抗する素振りを見せたら一瞬で切り殺す」
三人は一瞬だけ躊躇するが、状況が状況なので、渋々剣を抜く。
その様子を見たガイアも同じく背中に装備している大剣を抜く。
(なんだ?やる気か?)
ゼウスが警戒心を最大値まで高めた時、ガイアが予想外の行動に出る。
なんと、手にした大剣を地面に投げ捨てたのだ。
さらに、ガイアは両手を上げ、その状態のまま三歩ほど後ろに下がる。
誰がどう見ても降伏の態度だった。
「おい、誰かその武器を拾え」
ゼウスが声をかけると、真っ先にヴァルカンが動いた。
ヴァルカンは構えた剣を鞘に戻すと、ガイアの大剣を広い、ゼウスの後ろまで下がる。
「ねえゼウス。まず、どうしてガイアが裏切り者だと分かったか教えてもらえる?」
ノトスが震える声でそう言った。
よく見ると、双剣を持つその手も震えており、ノトスが動揺しているのが分かる。
普段、どんな時も常に冷静で周りを導いてきたノトスにとって、これは割と珍しいことだった。
「まあ、実を言えば最初から怪しい点はあったよな」
「えっ⁉︎最初から⁉︎」
流石のノトスも声を上げて驚く。
「一番最初、儀式が『反逆軍』に襲われた時、最初に何が起こったのか覚えているか?」
三人はその時の事を思い出すためにしばらく沈黙する。
「確か、地震みたいな振動が最初だったかしら?」
一番最初に思い出したのはテティスだった。
ゼウスはその答えに大きく頷き、言葉を続ける。
「そうだ。敵の最初の攻撃はそれだった。その後にこいつはなんて言った?」
「『『反逆軍』だ!奴らが行動を開始した!』って言ってたかな」
今度はノトスが思い出し、儀式が襲われた時にガイアが口にした台詞を一語一句間違えずに暗唱する。
「そうだ。じゃあお前らに聞く。何でこいつはあの振動だけで敵が襲ってきたんだと分かったんだ?俺は最初のあの段階じゃただの地震だと思ったぞ」
「言われてみれば確かに…」
ヴァルカンが納得する様に呟く。
「根拠はまだまだあるぞ」
ゼウスはそう前置きしてから話を続ける。
「確か、最初に敵との交戦した時、テティスが言ってたよな。『ガイアのおかげで武器が破壊されずに済んだ』って」
「それは確かに言った記憶があるわ」
最初にテティスとガイアがアダマスと戦った時、ガイアがアダマスの使う神器、ハルパーの『この世に切れないものない』という特性を見抜いたおかげでテティスの武器は破壊されずに済んだのだ。
この話は戦いの直後にあった話し合いで判明している。
「考えてもみろよ。あの武器は見た目は普通の大鎌だろ?どうやったらそんな事を見抜けんだよ。確かに勘や感覚ってのはあるかもしれねえが、流石に一瞬で見抜くっていうのは違和感しかねえよな」
ゼウスの言う事は理にかなっていて反論の余地がない。
一番仲間意識の強いノトスでさえ何も言えない程だ。
理屈を並べられてしまえば、感情論では否定できない。
「言っとくけど、もう一つでけえのがあるからな」
「えっ…まだあるの?」
ヴァルカンは不安そうに呟く。
ヴァルカンにとって、既に罪を認めている人間をこれ以上追い詰めるのは心苦しく感じるのだ。
しかし、ゼウスの考えは違う。
ゼウスは罪を犯した人間はとことん追い詰めて断罪する必要があると考えているのだ。
ここで追求を止めてしまえば、言い訳を重ねられる恐れもある。
だからこそ、ゼウスは最後までガイアの事を追い詰めるのだ。
「お前、今朝一人で見回りに行ってたとか言って俺達の近くから離れた場所に行ってただろ」
「それのどこが不自然なの?」
知恵者であるテティスにもゼウスの言いたい事が分からないらしい。
テティスに分からないのなら、ノトスやヴァルカンに分からないのは仕方ないだろう。
「じゃあ逆に聞くけどよ、見回りに行って敵を見つけたとしよう。そっからどうすんだよ?戦って撤退させるのか?んな事できるわけねえだろ」
「普通に僕達のところまで戻って教えてくれれはまいいんじゃないの?」
ノトスの疑問は想定内だったらしく、すぐに反論する。
「それだったら別に見張りでもいいはずだ。むしろ、敵に見つかるリスクや見つかった後の事を考えるならそっちの方が正解だ。そんな事が分からねえ馬鹿じゃねえだろ。こいつはな」
ヴァルカン、テティス、ノトスが完全に沈黙する。
ゼウスの言う事は最もで、反論する余地はない。
「ここまでの話を聞いた上で何か言いたい奴はいるか?」
ゼウスの問いかけに応えたのはガイア本人だった。
「最初に言っておくけど、私は裏切ったつもりはない。みんなの事を昔からの仲間だと思っている事に嘘はない」
「はあ?今更何を……」
「私はガイアを信じるわ」
ガイアの開き直りとも思える態度に噛み付くゼウス。
しかし、その直後にテティスが発した発言がさらにゼウスを混乱させる。
「お前は今の話を聞いてなかったのか?仲間を疑いたくない気持ちは俺だって分かる。だがな、俺はしっかり理屈を並べて発言してんだよ。反論したけりゃお前もしっかり理屈を……」
「私だってきちんと考えてるわよ。根拠のない感情論なんかじゃないわ」
テティスのただならぬ気配を感じ、ゼウスは沈黙を保つ。
「確かにゼウスの言う事は正しいわ。内通者じゃすぐに判別できない事をガイアはすぐに言い当てた。これは確かに怪しいし裏切り者だと言われても仕方ない事だと思う。これについては別に否定するつもりはないわ」
「なら……」
「でも逆に考えてみて。何でガイアはわざわざそんな事を教えてくれたの?」
テティスのこの発言にはゼウスだけではなく、ノトスとヴァルカンにも混乱をもたらした。
「ん?それはどういう…」
「だってそうでしょ?例えば、儀式を襲われた時、最初にガイアが『反逆軍』が来たって言わなければ私達は逃げ遅れてたでしょ?」
「それは…確かにそうだが…」
「それに、アダマスと戦った時だってそう。ガイアがハルパーの特性を教えてくれなかったら私は武器を失ってた」
「そいつがただの馬鹿だったってだけだろ」
「でも、ガイアの事を『馬鹿じゃない』って言ったのはあなたよ」
テティスの完璧な反論にゼウスは沈黙する。
「ゼウスの言った通り、ガイアが教えてくれた情報は敵しか知らない情報だった。でも、私達はその情報で得してる。それでもゼウスはガイアの事を敵だと思うの?」
ゼウスはそれでも納得いかない様に考え込む。
「……なら、今朝の事はどう説明する?」
「それは直接ガイアに聞くしかないわよけど、ある程度の推測は出来る」
テティスは一呼吸置いてから続きを話す。
「多分だけれど、ガイアは『反逆軍』の人と会って、敵を誘導したんじゃないかしら。ガイアが向こうとやりとりをした上で私達の味方をしているのなら全然あり得る可能性よ」
「けど、それは結局それはただの予想だ。何か具体的な証拠はないだろ」
「何でそうまでしてガイアを追い詰めるんだ……」
ノトスが呆れた様な声を出す。
「お前らのためだ」
ゼウスはノトスの疑問に即答する。
これにはノトスも沈黙するしかなかった。
この中で唯一ゼウスの生い立ちを知っているノトスにとっては特に。
「私としては、まだ一番大きい根拠を残しているのだけれど……」
「勿体ぶらずにさっさと教えろ」
「みんな本当に覚えてないの?ほら、思い出して。儀式を襲われた時に逃げ道を作ってくれたのは一体誰?」
「あっ…」
ヴァルカンとゼウスとノトスの声が一つに揃う。
「確かにガイアは敵と繋がっていた。それは間違い無いし私も否定しない。でも、それは全部私達のためにやってくれた事だったのよ。だから、私はガイアを信じる。みんなはどう思う?」
全員沈黙。
テティスの問いかけは簡単に返事をしていいものの類いではなかったからだ。
「僕も信じるよ!」
沈黙を打破したのはヴァルカンだった。
気弱なヴァルカンがはっきりと意思表示をするのは比較的珍しいことだった。
「僕はここにいるみんなを仲間だと思ってる。だって、僕達は昔からずっと一緒だったでしょ?そんな相手を疑う事なんて僕にはできない」
「僕もその意見には賛成かな」
ヴァルカンに便乗してノトスも口を開く。
「僕はずっと考えていたんだ。もし本当に裏切り者がいたとして、それが誰か判明した時、僕はそいつを殺せるのかって」
ノトスはどこか遠くを見る様にしながら言う。
「僕には殺せない。迫害も追放もできない。むしろ、昔の仲間に殺されるなら、それは敵に殺されるよりもマシだとも考えていた。だから、ほんの少しでもガイアが味方である可能性があるのなら、僕にとってガイアを信じない理由はない。君はどう思う?」
最後の言葉はゼウスに向けられたものだ。
ゼウスは苛立たしげに頭を掻きむしりながら言う。
「ああもう!分かった!お前らがそう思うなら好きにしろ!どうなっても俺は知らねえからな!」
四人は声を揃えてゼウスにお礼を言う。
「ありがとう」
ヴァルカンがゼウスに問いかける。
「じゃあもうこれガイアに返していい?」
「好きにしろって言っただろ」
ゼウスは不満そうに言う。
「はい」
「ありがとう」
ガイアは大剣を装備し直して言う。
「うん!やっぱりこうじゃなくちゃね!」
しばらくの間ガイアははしゃいでいた。
ガイアが落ち着いたタイミングでテティスが声をかける。
「ねえガイア。あなたを信じると言った言葉に嘘はないけれど、これだけは教えて」
「うん?何?」
「ガイアはどうして『反逆軍』と繋がったの?いや、どうしてというより、どうやって?普通に生活してたら一切関わる事なんてないでしょ?」
テティスの疑問にガイアはやや言いにくそうに言う。
「あー、やっぱり聞いちゃうよね……」
ガイアは大きなため息を一つした後で答える。
「最初に『反逆軍』と繋がってたのは私の親なんだよね……」
テティスが悲痛な声を上げる。
「そうだよ。否定はしない。でも、よく分かったよね。私が裏切り者って。上手く隠してたつもりなんだけどなあ…」
そう言うガイアの声には、いつもの明るさはなく、むしろその反対で、冷酷さが滲み出ている。
「お前ら武器を抜け。こいつが抵抗する素振りを見せたら一瞬で切り殺す」
三人は一瞬だけ躊躇するが、状況が状況なので、渋々剣を抜く。
その様子を見たガイアも同じく背中に装備している大剣を抜く。
(なんだ?やる気か?)
ゼウスが警戒心を最大値まで高めた時、ガイアが予想外の行動に出る。
なんと、手にした大剣を地面に投げ捨てたのだ。
さらに、ガイアは両手を上げ、その状態のまま三歩ほど後ろに下がる。
誰がどう見ても降伏の態度だった。
「おい、誰かその武器を拾え」
ゼウスが声をかけると、真っ先にヴァルカンが動いた。
ヴァルカンは構えた剣を鞘に戻すと、ガイアの大剣を広い、ゼウスの後ろまで下がる。
「ねえゼウス。まず、どうしてガイアが裏切り者だと分かったか教えてもらえる?」
ノトスが震える声でそう言った。
よく見ると、双剣を持つその手も震えており、ノトスが動揺しているのが分かる。
普段、どんな時も常に冷静で周りを導いてきたノトスにとって、これは割と珍しいことだった。
「まあ、実を言えば最初から怪しい点はあったよな」
「えっ⁉︎最初から⁉︎」
流石のノトスも声を上げて驚く。
「一番最初、儀式が『反逆軍』に襲われた時、最初に何が起こったのか覚えているか?」
三人はその時の事を思い出すためにしばらく沈黙する。
「確か、地震みたいな振動が最初だったかしら?」
一番最初に思い出したのはテティスだった。
ゼウスはその答えに大きく頷き、言葉を続ける。
「そうだ。敵の最初の攻撃はそれだった。その後にこいつはなんて言った?」
「『『反逆軍』だ!奴らが行動を開始した!』って言ってたかな」
今度はノトスが思い出し、儀式が襲われた時にガイアが口にした台詞を一語一句間違えずに暗唱する。
「そうだ。じゃあお前らに聞く。何でこいつはあの振動だけで敵が襲ってきたんだと分かったんだ?俺は最初のあの段階じゃただの地震だと思ったぞ」
「言われてみれば確かに…」
ヴァルカンが納得する様に呟く。
「根拠はまだまだあるぞ」
ゼウスはそう前置きしてから話を続ける。
「確か、最初に敵との交戦した時、テティスが言ってたよな。『ガイアのおかげで武器が破壊されずに済んだ』って」
「それは確かに言った記憶があるわ」
最初にテティスとガイアがアダマスと戦った時、ガイアがアダマスの使う神器、ハルパーの『この世に切れないものない』という特性を見抜いたおかげでテティスの武器は破壊されずに済んだのだ。
この話は戦いの直後にあった話し合いで判明している。
「考えてもみろよ。あの武器は見た目は普通の大鎌だろ?どうやったらそんな事を見抜けんだよ。確かに勘や感覚ってのはあるかもしれねえが、流石に一瞬で見抜くっていうのは違和感しかねえよな」
ゼウスの言う事は理にかなっていて反論の余地がない。
一番仲間意識の強いノトスでさえ何も言えない程だ。
理屈を並べられてしまえば、感情論では否定できない。
「言っとくけど、もう一つでけえのがあるからな」
「えっ…まだあるの?」
ヴァルカンは不安そうに呟く。
ヴァルカンにとって、既に罪を認めている人間をこれ以上追い詰めるのは心苦しく感じるのだ。
しかし、ゼウスの考えは違う。
ゼウスは罪を犯した人間はとことん追い詰めて断罪する必要があると考えているのだ。
ここで追求を止めてしまえば、言い訳を重ねられる恐れもある。
だからこそ、ゼウスは最後までガイアの事を追い詰めるのだ。
「お前、今朝一人で見回りに行ってたとか言って俺達の近くから離れた場所に行ってただろ」
「それのどこが不自然なの?」
知恵者であるテティスにもゼウスの言いたい事が分からないらしい。
テティスに分からないのなら、ノトスやヴァルカンに分からないのは仕方ないだろう。
「じゃあ逆に聞くけどよ、見回りに行って敵を見つけたとしよう。そっからどうすんだよ?戦って撤退させるのか?んな事できるわけねえだろ」
「普通に僕達のところまで戻って教えてくれれはまいいんじゃないの?」
ノトスの疑問は想定内だったらしく、すぐに反論する。
「それだったら別に見張りでもいいはずだ。むしろ、敵に見つかるリスクや見つかった後の事を考えるならそっちの方が正解だ。そんな事が分からねえ馬鹿じゃねえだろ。こいつはな」
ヴァルカン、テティス、ノトスが完全に沈黙する。
ゼウスの言う事は最もで、反論する余地はない。
「ここまでの話を聞いた上で何か言いたい奴はいるか?」
ゼウスの問いかけに応えたのはガイア本人だった。
「最初に言っておくけど、私は裏切ったつもりはない。みんなの事を昔からの仲間だと思っている事に嘘はない」
「はあ?今更何を……」
「私はガイアを信じるわ」
ガイアの開き直りとも思える態度に噛み付くゼウス。
しかし、その直後にテティスが発した発言がさらにゼウスを混乱させる。
「お前は今の話を聞いてなかったのか?仲間を疑いたくない気持ちは俺だって分かる。だがな、俺はしっかり理屈を並べて発言してんだよ。反論したけりゃお前もしっかり理屈を……」
「私だってきちんと考えてるわよ。根拠のない感情論なんかじゃないわ」
テティスのただならぬ気配を感じ、ゼウスは沈黙を保つ。
「確かにゼウスの言う事は正しいわ。内通者じゃすぐに判別できない事をガイアはすぐに言い当てた。これは確かに怪しいし裏切り者だと言われても仕方ない事だと思う。これについては別に否定するつもりはないわ」
「なら……」
「でも逆に考えてみて。何でガイアはわざわざそんな事を教えてくれたの?」
テティスのこの発言にはゼウスだけではなく、ノトスとヴァルカンにも混乱をもたらした。
「ん?それはどういう…」
「だってそうでしょ?例えば、儀式を襲われた時、最初にガイアが『反逆軍』が来たって言わなければ私達は逃げ遅れてたでしょ?」
「それは…確かにそうだが…」
「それに、アダマスと戦った時だってそう。ガイアがハルパーの特性を教えてくれなかったら私は武器を失ってた」
「そいつがただの馬鹿だったってだけだろ」
「でも、ガイアの事を『馬鹿じゃない』って言ったのはあなたよ」
テティスの完璧な反論にゼウスは沈黙する。
「ゼウスの言った通り、ガイアが教えてくれた情報は敵しか知らない情報だった。でも、私達はその情報で得してる。それでもゼウスはガイアの事を敵だと思うの?」
ゼウスはそれでも納得いかない様に考え込む。
「……なら、今朝の事はどう説明する?」
「それは直接ガイアに聞くしかないわよけど、ある程度の推測は出来る」
テティスは一呼吸置いてから続きを話す。
「多分だけれど、ガイアは『反逆軍』の人と会って、敵を誘導したんじゃないかしら。ガイアが向こうとやりとりをした上で私達の味方をしているのなら全然あり得る可能性よ」
「けど、それは結局それはただの予想だ。何か具体的な証拠はないだろ」
「何でそうまでしてガイアを追い詰めるんだ……」
ノトスが呆れた様な声を出す。
「お前らのためだ」
ゼウスはノトスの疑問に即答する。
これにはノトスも沈黙するしかなかった。
この中で唯一ゼウスの生い立ちを知っているノトスにとっては特に。
「私としては、まだ一番大きい根拠を残しているのだけれど……」
「勿体ぶらずにさっさと教えろ」
「みんな本当に覚えてないの?ほら、思い出して。儀式を襲われた時に逃げ道を作ってくれたのは一体誰?」
「あっ…」
ヴァルカンとゼウスとノトスの声が一つに揃う。
「確かにガイアは敵と繋がっていた。それは間違い無いし私も否定しない。でも、それは全部私達のためにやってくれた事だったのよ。だから、私はガイアを信じる。みんなはどう思う?」
全員沈黙。
テティスの問いかけは簡単に返事をしていいものの類いではなかったからだ。
「僕も信じるよ!」
沈黙を打破したのはヴァルカンだった。
気弱なヴァルカンがはっきりと意思表示をするのは比較的珍しいことだった。
「僕はここにいるみんなを仲間だと思ってる。だって、僕達は昔からずっと一緒だったでしょ?そんな相手を疑う事なんて僕にはできない」
「僕もその意見には賛成かな」
ヴァルカンに便乗してノトスも口を開く。
「僕はずっと考えていたんだ。もし本当に裏切り者がいたとして、それが誰か判明した時、僕はそいつを殺せるのかって」
ノトスはどこか遠くを見る様にしながら言う。
「僕には殺せない。迫害も追放もできない。むしろ、昔の仲間に殺されるなら、それは敵に殺されるよりもマシだとも考えていた。だから、ほんの少しでもガイアが味方である可能性があるのなら、僕にとってガイアを信じない理由はない。君はどう思う?」
最後の言葉はゼウスに向けられたものだ。
ゼウスは苛立たしげに頭を掻きむしりながら言う。
「ああもう!分かった!お前らがそう思うなら好きにしろ!どうなっても俺は知らねえからな!」
四人は声を揃えてゼウスにお礼を言う。
「ありがとう」
ヴァルカンがゼウスに問いかける。
「じゃあもうこれガイアに返していい?」
「好きにしろって言っただろ」
ゼウスは不満そうに言う。
「はい」
「ありがとう」
ガイアは大剣を装備し直して言う。
「うん!やっぱりこうじゃなくちゃね!」
しばらくの間ガイアははしゃいでいた。
ガイアが落ち着いたタイミングでテティスが声をかける。
「ねえガイア。あなたを信じると言った言葉に嘘はないけれど、これだけは教えて」
「うん?何?」
「ガイアはどうして『反逆軍』と繋がったの?いや、どうしてというより、どうやって?普通に生活してたら一切関わる事なんてないでしょ?」
テティスの疑問にガイアはやや言いにくそうに言う。
「あー、やっぱり聞いちゃうよね……」
ガイアは大きなため息を一つした後で答える。
「最初に『反逆軍』と繋がってたのは私の親なんだよね……」
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