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第一章 再会
第11話 森の老人との生活は
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あの日、オークに襲われたところを老人に救われたルークは、森の奥にある老人の家に運ばれた。
老人は森の奥でたった一人で暮らしているようであった。
老人「そうか、濡れ衣を着せられたか。それは気の毒にな。辛かったろう……」
老人に聞かれるままに、ルークは何があったのかを語った。
そして、ルークが森の洞窟で一人暮らしをしていると聞き、老人は興味をそそられたようだ。
ルーク「お爺さんはなぜ? 一人で森の中に?」
老人「儂か……そうじゃの、儂も似たような理由じゃ」
ルーク「同じ? 濡れ衣を着せられたの?」
老人「そんなような事じゃ…… 人間の世界ではよくある話じゃ、悲しい事じゃが。儂も、たくさん騙された。家族もみんな殺されてしまった……
…儂は、ほとほと人間というものに嫌気がさしてしまってな。もう人間とは関わるのをやめようと思ったのじゃよ。
だから、お主が一人で生きていこうと思ったのもよく分かるよ」
老人はルークに微笑みかけたが、その表情は、なんだか悲しそうに見えた。
老人「しかし……、気持ちは分かるがな、一人で森で生きるには、お前はまだ稚すぎる。
わずかな期間とはいえよく生き延びられたものじゃ。
儂が森で生きていく方法を教えてやろう、怪我が治っても、しばらくここに居ると良い」
かつて、人との関わりを捨てた老人であったが、幼いルークを放ってはおけなかったのだ。
老人も、最初はそれほど長くルークと暮らすつもりはなかった…怪我が治り、ある程度成長して、一人で生きて行く術を十分に身に付けられたなら、また一人での暮らしの戻るつもりであったのだ。
だが、二人は共に暮すうち、すっかり意気投合してしまい、別れられなくなった。そうして、その後もずっと二人で生きていく事になったのであった。
フィルと名乗った老人は、ルークに、森で生きて行くためのあらゆるノウハウを教えてくれた。かつて、若い頃に老人も先達に教わったのだと言う。
またフィル老は剣の振り方もルークに教えてくれた。
フィル老の剣の腕は大したもので、時折現れる魔物もフィル老にかかればみな、瞬きする間に殺されてしまう。
もしかしたら、昔は高名な剣士であったのかも知れないが、今はただの年寄だと言って、フィル爺は昔の事は何も教えてくれないのであった。
フィルはルークに、剣の達人を目指す必要はないと言った。ただ、森で生きて行くために、魔物が倒せるようになっておく必要があると、そのための剣技を教えてくれた。
ルークは言われるままに毎日一生懸命素振りをした。
そして月日が流れ、気がつけばルークは、かつて【剣聖】と呼ばれたフィルの剣技をすべて身に付けるほどになっていた。
しかし、フィルはルークを弟子とは呼ばず、技の名前も流派の名前も教えず(自分の名前さえも教えず)、剣技は、ただ、魔物と戦うための手段に過ぎないと言い続けたのであった。
フィル老人は、決して人を斬ってはならないとルークに言い聞かせた。人を殺せば、それがどんなに悪い奴であったとしても、必ず恨みを買う。それが遺恨となって、必ず不幸を呼び込む事になるからと。。。
ルークの【クリーン】と【ドライ】の魔法にはフィルもとても驚いた。大人で【クリーン】を使える者もたまにいるが、ルークのそれは、大人たちをはるかに凌駕するレベルであったのだ。なるほど、これなら一人で森で生き延びられたのも理解できる。
洞窟にあったルークが作った干し肉を食べて感心したフィルは、ルークが知らなかった燻製肉の作り方を教え、その後は二人で色々とアイデアを出し合いながら、干物の研究を続けていく事になる。ルークには【ドライ】があるので、干物作りも随分捗るのであった。
また、フィル老人はとても博識であった。ルークが知らなかった色々な知識を教えてくれた。おかげで、隠遁生活でありながらも、ルークは人並み以上の教養を身につける事もできたのであった。
それから、あっという間に十年の月日が流れた。
優しく知識が豊富でユーモアもあるフィル老人との生活はとても楽しく、ルークにとっては幸せな十年であった。
ただ……出会った時に既に高齢だったフィルである。最近はすっかり老いて、足も悪くなり自由に動けなくなってしまった。今はフィルに変わって、逞しく成長したルークが家を守っている。
だが、そんな生活も終わりが近い事をルークも老人も悟っていた。老人の寿命はもうあまり残ってはいなかったのである。
ルークとしては、実の祖父のようにも思っているフィルの身体を治してやりたくて、街に連れていき医者に見せるか、街から医者を呼んでくると言ったのだが、老人はそれを拒否した。
フィル「寿命なのだ、医者に見せたところでどうにもならない」
この世界には “治療薬” や “治癒魔法” があるが、それでも、老化は防ぐことはできないのであった。
フィル「なに、儂はもう十分長く生きた。人生最後に、孫のようなお前と暮らせて幸せじゃった。このまま、森の自然の中で静かに最後を迎えさせておくれ」
ルークは、フィルの命が少しでも長く続くよう、フィルの身体の苦痛が少しでも楽になるよう、街に行っては干し肉を売り、上級ポーションや、身体に良いと言われるもの、寿命を伸ばしたり若返ったりすると言われる食材を買って帰るようになったのだった。
老人は森の奥でたった一人で暮らしているようであった。
老人「そうか、濡れ衣を着せられたか。それは気の毒にな。辛かったろう……」
老人に聞かれるままに、ルークは何があったのかを語った。
そして、ルークが森の洞窟で一人暮らしをしていると聞き、老人は興味をそそられたようだ。
ルーク「お爺さんはなぜ? 一人で森の中に?」
老人「儂か……そうじゃの、儂も似たような理由じゃ」
ルーク「同じ? 濡れ衣を着せられたの?」
老人「そんなような事じゃ…… 人間の世界ではよくある話じゃ、悲しい事じゃが。儂も、たくさん騙された。家族もみんな殺されてしまった……
…儂は、ほとほと人間というものに嫌気がさしてしまってな。もう人間とは関わるのをやめようと思ったのじゃよ。
だから、お主が一人で生きていこうと思ったのもよく分かるよ」
老人はルークに微笑みかけたが、その表情は、なんだか悲しそうに見えた。
老人「しかし……、気持ちは分かるがな、一人で森で生きるには、お前はまだ稚すぎる。
わずかな期間とはいえよく生き延びられたものじゃ。
儂が森で生きていく方法を教えてやろう、怪我が治っても、しばらくここに居ると良い」
かつて、人との関わりを捨てた老人であったが、幼いルークを放ってはおけなかったのだ。
老人も、最初はそれほど長くルークと暮らすつもりはなかった…怪我が治り、ある程度成長して、一人で生きて行く術を十分に身に付けられたなら、また一人での暮らしの戻るつもりであったのだ。
だが、二人は共に暮すうち、すっかり意気投合してしまい、別れられなくなった。そうして、その後もずっと二人で生きていく事になったのであった。
フィルと名乗った老人は、ルークに、森で生きて行くためのあらゆるノウハウを教えてくれた。かつて、若い頃に老人も先達に教わったのだと言う。
またフィル老は剣の振り方もルークに教えてくれた。
フィル老の剣の腕は大したもので、時折現れる魔物もフィル老にかかればみな、瞬きする間に殺されてしまう。
もしかしたら、昔は高名な剣士であったのかも知れないが、今はただの年寄だと言って、フィル爺は昔の事は何も教えてくれないのであった。
フィルはルークに、剣の達人を目指す必要はないと言った。ただ、森で生きて行くために、魔物が倒せるようになっておく必要があると、そのための剣技を教えてくれた。
ルークは言われるままに毎日一生懸命素振りをした。
そして月日が流れ、気がつけばルークは、かつて【剣聖】と呼ばれたフィルの剣技をすべて身に付けるほどになっていた。
しかし、フィルはルークを弟子とは呼ばず、技の名前も流派の名前も教えず(自分の名前さえも教えず)、剣技は、ただ、魔物と戦うための手段に過ぎないと言い続けたのであった。
フィル老人は、決して人を斬ってはならないとルークに言い聞かせた。人を殺せば、それがどんなに悪い奴であったとしても、必ず恨みを買う。それが遺恨となって、必ず不幸を呼び込む事になるからと。。。
ルークの【クリーン】と【ドライ】の魔法にはフィルもとても驚いた。大人で【クリーン】を使える者もたまにいるが、ルークのそれは、大人たちをはるかに凌駕するレベルであったのだ。なるほど、これなら一人で森で生き延びられたのも理解できる。
洞窟にあったルークが作った干し肉を食べて感心したフィルは、ルークが知らなかった燻製肉の作り方を教え、その後は二人で色々とアイデアを出し合いながら、干物の研究を続けていく事になる。ルークには【ドライ】があるので、干物作りも随分捗るのであった。
また、フィル老人はとても博識であった。ルークが知らなかった色々な知識を教えてくれた。おかげで、隠遁生活でありながらも、ルークは人並み以上の教養を身につける事もできたのであった。
それから、あっという間に十年の月日が流れた。
優しく知識が豊富でユーモアもあるフィル老人との生活はとても楽しく、ルークにとっては幸せな十年であった。
ただ……出会った時に既に高齢だったフィルである。最近はすっかり老いて、足も悪くなり自由に動けなくなってしまった。今はフィルに変わって、逞しく成長したルークが家を守っている。
だが、そんな生活も終わりが近い事をルークも老人も悟っていた。老人の寿命はもうあまり残ってはいなかったのである。
ルークとしては、実の祖父のようにも思っているフィルの身体を治してやりたくて、街に連れていき医者に見せるか、街から医者を呼んでくると言ったのだが、老人はそれを拒否した。
フィル「寿命なのだ、医者に見せたところでどうにもならない」
この世界には “治療薬” や “治癒魔法” があるが、それでも、老化は防ぐことはできないのであった。
フィル「なに、儂はもう十分長く生きた。人生最後に、孫のようなお前と暮らせて幸せじゃった。このまま、森の自然の中で静かに最後を迎えさせておくれ」
ルークは、フィルの命が少しでも長く続くよう、フィルの身体の苦痛が少しでも楽になるよう、街に行っては干し肉を売り、上級ポーションや、身体に良いと言われるもの、寿命を伸ばしたり若返ったりすると言われる食材を買って帰るようになったのだった。
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