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第一章 再会

第36話 濡れ衣じゃ 真犯人は~

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フィル「……すまん、遠回しに言う意味はなかったな。はっきり言おう。儂は殺してはおらんよ。殺したのはドゴスじゃ」

バッケン「やはり!! くそぉ~ドゴスの奴めがぁぁぁ……」

拳を握りしめ悔しそうに何度も膝を叩くバッケン。

バッケン「……殺してやる……」

フィル「すまん、儂がドゴスにレインクラッド流の剣技を授けなければ、あの惨劇は起きなかった。あの男が危険だと分かっていたはずだったのに……

戦争に勝つために必要だと国王に強引に頼まれて、断れなかった……。従えないなら家族もろとも国家反逆罪だと脅されてな。あのバルト(王)めが……

今思えば、たとえ逆賊と呼ばれる事になっても拒否すれば良かったのだ。妻と娘の事を考えて引き受けてしまったが、後になって事情を知った妻に叱られたよ」

バッケン「ドゴス・ゴルドル……アイツは、私を追い出して、今や王国の騎士団長の地位にあります。私はあの男の命令で、師匠、あなたを探す旅に出たのです、“お前の妻と娘を殺したのは剣聖フィルモア・レインクラッドだ”と嘘を吹聴されて……

一番弟子として責任を取れ、見つけるまで帰ってくるなと言われ国を出されたのです」



   * * * * *



ドゴス・ゴルドル子爵は成り上がりの貴族であった。幼い頃から剣の才能があったが、その性格は粗暴で、三男であったのに家督を継ぐために、兄二人と両親も自分の手で殺したと噂されている。

だが、戦時においてその才能を発揮、軍で功績を上げ、みるみる出世して、王に取り入ることに成功したのだ。

その王をそそのかし、剣聖の弟子となり、その後は無節操に軍の兵士たちにその技を伝えてしまったのだ。

ゴルドルの指揮した軍は確かに強くなった。だが、粗暴な者の集まりでしかなかったゴルドルの私兵はその力をもって傍若無人に振る舞うようになり、戦争で占領した街では略奪と大虐殺を行ったのである。

フィルモアはそれを咎め、王に余計な事を報告したため、ゴルドルの恨みを買い、フィルモアは騙され、貴族の家族の大虐殺事件の犯人という汚名を着せられ、逃亡の身となったのであった。

その虐殺事件はもちろん、ゴルドルの私兵が行ったものである。その被害者の中には、フィルモアの家族も含まれていたのだが、ドゴスがフィルモアは乱心したと強弁して押し切ったのだった。



   * * * * *



バッケン「もしかして……師匠はドゴスを討つため、あそこまでルークを育てたのですね?」

フィル「それは違うぞ…! あの子にそんな事をさせる気はない。あの子には、人が人と殺し合う戦争などに関わらずに生きてほしいと思っている」

バッケン「ドゴスが憎くないのですか? ルークほどの腕があれば! 俺も手を貸します! 師匠だって奥様、ヨーコ様と娘のエリカを奴に殺されたんじゃないのですか?」

フィル「ルークは儂らの因縁には無関係じゃ、巻き込むでない。それと……

……娘は生きておる。殺された事にして、ヨーコが命を捨てて守り通してくれたのじゃ。使用人の娘の遺体とすり替え、辱めを受ける前に娘とともに自刃したように見せかけてな。

妻に娘を託された儂は、娘を守るため生き恥を晒しながらも、この国まで逃げ伸びてきたのじゃよ」

バッケン「なんと、エリカは無事だったのですか?」

フィル「ああ、ラハールの街で元気にやっておるようだ。商人に養子として出した、血なまぐさい世界に近づいて欲しくなくてな。

その後、儂は森に隠れ、遠くから見守ることにした。街には近づかず、娘には一切関わりを持たないようにしてな。

あの子は自分の親が誰なのか覚えておらんじゃろう。じゃが、儂の血を引いているせいか、剣の才能があったようでな……結局冒険者になったそうじゃ」

バッケン(え……?! ラハールの街で、凄腕の女冒険者って言うと…アマリア?……なわけないか、アマリアはシスターだったな。商人の娘なのに冒険者になり、剣の腕が立つって――)

フィル「ルークがあの子を連れてきた時は本当に驚いたわい。驚きすぎて、くだらんジョークを言いまくって、愉快な爺ちゃんと呼ばれたほどじゃ」(笑)

バッケン「ポーリン!?」

フィル「森の中で死にかけていたルークを儂が助け、そのルークが儂の娘の命を救ってくれた……運命とはどこでどう繋がっていくか分からんものだのぅ…」


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