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第二章 街へ
第49話 言ったでしょ、魔法はショボイって…
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先程、バッケンと戦って僅差で負けたとキリングは言ったが、実はそれは嘘だった。僅差ではなく、まったく相手にならずにボコボコにされてしまったのだ。
キリング (まずい……あのバッケンに勝ったというのがもし本当なら、俺では勝てない可能性が高い……こんなギャラリーがたくさん居る状況で模擬戦をやってもし負けたら……)
キリング「なぁ、ルーク! お前はさっき、普段は魔法で魔物を倒していると言っていたな? それは本当か?」
ルーク「ええ、まぁ……状況にも寄りますけどね」
キリング「よし! では、剣より魔法が強いのなら、まずその魔法を見せてもらおうか! 剣でボロボロになってしまってその後魔法の試験を受けられないと言うことになっては可哀想だからな! メア、準備しろ!」
・
・
・
キリングの命令で、訓練場の隅に置いてあった的が中央に運ばれてきた。
キリング「魔法の試験は、一通り攻撃魔法を使って見せてもらう。自分が使える攻撃魔法をあの的に向かって撃ってみろ。あの的は、魔法で強化してあるので攻撃しても壊れないようになっている」
ルーク「いや、攻撃魔法は僕は大して使えませんよ?」
キリング「火球は使えるとか言ってなかったか? 試験なんでな、大したことないと言いながらとんでもない威力だったり、自信満々だったのにショボかったりする奴が居るんで、一応ひとおりやって見せてもらうことになってるんだ」
ポーリン「冒険者は自分の手の内を明かさないもんじゃないの?」
メア「秘匿したい場合はそれでも良いですが、その場合はランクには反映されない事になります」
キリング「まぁ、基礎的な魔法だけだ、まずは火球から、やってみろ。できるんだろう?」
ルーク「まぁ、できることはできますけど……」
ルークは的に向かって手を伸ばすと、指の先に小さな火球が浮かび、的に向かって飛んでいった。
火の玉は的に当たり、そのまま四散する。
ギャラリー「ショボっ!」
周囲の者達から落胆と笑いが起きる。
キリング「ほう……威力はしょぼいが、無詠唱か。将来性はある、かな? 次は?ウィンドカッターは? ウォーターボール? アイスボール? アースウォール?」
言われた魔法を次々とやってみせるルーク。だが、どれも小さくしょぼい。魔物相手にダメージを負わせる事はできないさそうだ。
キリング「うーん、それだけ多彩な属性の魔法を無詠唱で使えるのは大したものだが、どれも一般人レベルだな。魔物相手では、威力が小さすぎて、役に立ちそうにないなぁ……」
ルーク「だから言ったでしょ、生活魔法程度だって。でも、役には立ちますよ、火球は燃料に着火するのに使えるし、アースウォールは相手を躓かせる事ができます」
※通常、アースウォールは土の強固な壁を作り出して相手の攻撃を防いだりするものだが、ルークのそれは、十センチ程度の小さな段差を作り出すだけなのであった。
キリング「ま、まぁ確かにな。無詠唱で発動できるなら、戦闘中に相手の体勢を崩したりできるか。つまり、やはり剣で最期はトドメを刺すスタイルか?」
ポーリン「もう、じれったいなぁ……ルークは【ドライ】で獲物を仕留めるのよ!」
キリング「どらい?」
ルーク「ええっと、僕は、魔物を仕留める時は【クリーン】を使うんです。【クリーン】は僕の一番得意な魔法なので」
キリング「ちょと言ってる事が分からないんだが?
【クリーン】ってあの、汚れを落とす生活魔法の【クリーン】だよな? それに、ポーリンは【ドライ】って言ってたが?」
ルーク「どっちも一緒です、ドライとクリーンは同系統の魔法なんですよ、というか、ドライがクリーンの一種なんですね。クリーンは “汚れ” を、ドライは “水分” を。消してしまうものが違うだけ…。昔は僕もドライとクリーンを分けて使っていましたが、最近は同じものだと気がついたので、もっぱら【クリーン】に統一しています」
キリング「ドライとクリーンの違いは分かったが、それでどうやって魔物を倒すんだ?」
ルーク「【ドライ】は――――分かりにくいから水分蒸発に特化した【クリーン】はやっぱり【ドライ】って事にしますね――――まぁ【ドライ】は水分を蒸発させるわけですが、それを使って、相手の体内の水分を蒸発させてしまったらどうなると思います?」
キリング「おお、なるほど! だが、そんな事できるのか? ドライを使える奴はたまに居るが、手や髪を乾かす程度で、それでも結構魔力を消費すると聞くが」
ポーリン「ルークのドライは特別なのよ、魔物も全身一瞬でカラッカラよ!」
キリング「なるほど。…理屈は分かるが、そんな強力な【ドライ】が使えると言われてもちょっと信じられん。実演してみせてくれるか?」
ルーク「できますん」
キリング「どっちなんだよっ!」
ルーク「ええっと、殺していい人連れてきて頂ければ実演可能ですが……人間相手に使ったら多分死んじゃいますから。干し肉になりたいならギルマスに掛けてあげてもよいですけど?」
キリング「あー! お前の卸してる干し肉!」
ルーク「ええ、干し肉は【ドライ】を使うと簡単に作れるんです。弱めに掛ける事もできなくはないのですが、それはそれで、身体に悪そうですからね……試してみます?」
キリング「いや、確かに人間相手はまずい気がするな。と言っても殺していい家畜も居ないだろうし、魔物を生け捕りにしてくるのも難易度が高い。ならば……
…試験内容を変更しよう!
ルークと一緒に街の外の森に行って、魔物を相手に使って見せてもらおう」
キリング (しめしめ、これでルークと模擬戦しなくて済むな)
メア「魔法はそれでも良いですが、模擬戦はしないのですか? 一応、物理戦闘能力も確認するという規定になっているはずですが」
キリング「(余計な事言うなよ!)そっ、それは、森の中でついでにやっておくよ」
メア「そうですか、では、確認の必要があるので私も一緒に行きますね」
キリング「なに~~~~!」
メア「何か不都合でも?」
キリング「いや、別に……(まぁ、他にギャラリーも居ないのなら問題ないか)」
周囲の冒険者「じゃぁ俺たちも見に行くべ~今日は暇だしな~」
キリング「なんでや~!!」
キリング (まずい……あのバッケンに勝ったというのがもし本当なら、俺では勝てない可能性が高い……こんなギャラリーがたくさん居る状況で模擬戦をやってもし負けたら……)
キリング「なぁ、ルーク! お前はさっき、普段は魔法で魔物を倒していると言っていたな? それは本当か?」
ルーク「ええ、まぁ……状況にも寄りますけどね」
キリング「よし! では、剣より魔法が強いのなら、まずその魔法を見せてもらおうか! 剣でボロボロになってしまってその後魔法の試験を受けられないと言うことになっては可哀想だからな! メア、準備しろ!」
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キリングの命令で、訓練場の隅に置いてあった的が中央に運ばれてきた。
キリング「魔法の試験は、一通り攻撃魔法を使って見せてもらう。自分が使える攻撃魔法をあの的に向かって撃ってみろ。あの的は、魔法で強化してあるので攻撃しても壊れないようになっている」
ルーク「いや、攻撃魔法は僕は大して使えませんよ?」
キリング「火球は使えるとか言ってなかったか? 試験なんでな、大したことないと言いながらとんでもない威力だったり、自信満々だったのにショボかったりする奴が居るんで、一応ひとおりやって見せてもらうことになってるんだ」
ポーリン「冒険者は自分の手の内を明かさないもんじゃないの?」
メア「秘匿したい場合はそれでも良いですが、その場合はランクには反映されない事になります」
キリング「まぁ、基礎的な魔法だけだ、まずは火球から、やってみろ。できるんだろう?」
ルーク「まぁ、できることはできますけど……」
ルークは的に向かって手を伸ばすと、指の先に小さな火球が浮かび、的に向かって飛んでいった。
火の玉は的に当たり、そのまま四散する。
ギャラリー「ショボっ!」
周囲の者達から落胆と笑いが起きる。
キリング「ほう……威力はしょぼいが、無詠唱か。将来性はある、かな? 次は?ウィンドカッターは? ウォーターボール? アイスボール? アースウォール?」
言われた魔法を次々とやってみせるルーク。だが、どれも小さくしょぼい。魔物相手にダメージを負わせる事はできないさそうだ。
キリング「うーん、それだけ多彩な属性の魔法を無詠唱で使えるのは大したものだが、どれも一般人レベルだな。魔物相手では、威力が小さすぎて、役に立ちそうにないなぁ……」
ルーク「だから言ったでしょ、生活魔法程度だって。でも、役には立ちますよ、火球は燃料に着火するのに使えるし、アースウォールは相手を躓かせる事ができます」
※通常、アースウォールは土の強固な壁を作り出して相手の攻撃を防いだりするものだが、ルークのそれは、十センチ程度の小さな段差を作り出すだけなのであった。
キリング「ま、まぁ確かにな。無詠唱で発動できるなら、戦闘中に相手の体勢を崩したりできるか。つまり、やはり剣で最期はトドメを刺すスタイルか?」
ポーリン「もう、じれったいなぁ……ルークは【ドライ】で獲物を仕留めるのよ!」
キリング「どらい?」
ルーク「ええっと、僕は、魔物を仕留める時は【クリーン】を使うんです。【クリーン】は僕の一番得意な魔法なので」
キリング「ちょと言ってる事が分からないんだが?
【クリーン】ってあの、汚れを落とす生活魔法の【クリーン】だよな? それに、ポーリンは【ドライ】って言ってたが?」
ルーク「どっちも一緒です、ドライとクリーンは同系統の魔法なんですよ、というか、ドライがクリーンの一種なんですね。クリーンは “汚れ” を、ドライは “水分” を。消してしまうものが違うだけ…。昔は僕もドライとクリーンを分けて使っていましたが、最近は同じものだと気がついたので、もっぱら【クリーン】に統一しています」
キリング「ドライとクリーンの違いは分かったが、それでどうやって魔物を倒すんだ?」
ルーク「【ドライ】は――――分かりにくいから水分蒸発に特化した【クリーン】はやっぱり【ドライ】って事にしますね――――まぁ【ドライ】は水分を蒸発させるわけですが、それを使って、相手の体内の水分を蒸発させてしまったらどうなると思います?」
キリング「おお、なるほど! だが、そんな事できるのか? ドライを使える奴はたまに居るが、手や髪を乾かす程度で、それでも結構魔力を消費すると聞くが」
ポーリン「ルークのドライは特別なのよ、魔物も全身一瞬でカラッカラよ!」
キリング「なるほど。…理屈は分かるが、そんな強力な【ドライ】が使えると言われてもちょっと信じられん。実演してみせてくれるか?」
ルーク「できますん」
キリング「どっちなんだよっ!」
ルーク「ええっと、殺していい人連れてきて頂ければ実演可能ですが……人間相手に使ったら多分死んじゃいますから。干し肉になりたいならギルマスに掛けてあげてもよいですけど?」
キリング「あー! お前の卸してる干し肉!」
ルーク「ええ、干し肉は【ドライ】を使うと簡単に作れるんです。弱めに掛ける事もできなくはないのですが、それはそれで、身体に悪そうですからね……試してみます?」
キリング「いや、確かに人間相手はまずい気がするな。と言っても殺していい家畜も居ないだろうし、魔物を生け捕りにしてくるのも難易度が高い。ならば……
…試験内容を変更しよう!
ルークと一緒に街の外の森に行って、魔物を相手に使って見せてもらおう」
キリング (しめしめ、これでルークと模擬戦しなくて済むな)
メア「魔法はそれでも良いですが、模擬戦はしないのですか? 一応、物理戦闘能力も確認するという規定になっているはずですが」
キリング「(余計な事言うなよ!)そっ、それは、森の中でついでにやっておくよ」
メア「そうですか、では、確認の必要があるので私も一緒に行きますね」
キリング「なに~~~~!」
メア「何か不都合でも?」
キリング「いや、別に……(まぁ、他にギャラリーも居ないのなら問題ないか)」
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キリング「なんでや~!!」
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