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第二章 街へ
第55話 ラストは剣術じゃない件
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キリング「エ……? ウグっ」
残った手に持った木剣をキリングの喉にあてがい、グリグリと押し込もうとするルーク。
キリングは堪らず半歩引いて剣を強引にルークの頭上に振り下ろす。だが、ルークは掴んだキリングの腕を引きながら、瞬時に横に体を移動し、その勢いを利用してキリングを投げ飛ばしたのであった。
相手の勢いを利用し、華麗なフットワークを応用しながら投げてしまうのも、ルークの得意技の一つである。
背中から激しく地面に叩きつけられたキリング。
そのダメージは小さくはなく、一瞬呼吸が止まるが、即座に【ヒール】で治療し復活する。
だが、その一瞬の間が命取りであった。ルークが背後からキリングの首に手を回し、襟を掴んでそのまま絞め込んだのである。
実は、このような技もルークは爺ちゃんに教わっていたのだ。
人間は殺すなとルークに教えていたフィル爺であったが、いつか人間を相手にする必要が会った時、相手を殺さずに仕留める方法も必要になるかも知れないと、レインクラッド流の技を応用した投げ技や関節技、絞め技なども教えてくれていたのである。
魔物を相手にする日々の中、そんな技は使うことはないだろうとルークも思ったのだが、突進してくる魔物を転がし制圧したり、ゴブリンやオークなど人型の魔物を相手に、武器も魔法も使わずに制圧する練習をしたりして、自分なりに磨いていたのであった。
首を締められるような戦闘の経験があまりないキリングはルークの絞め技に対抗する事もできず、あっという間に絞め落とされてしまった。
意識を失ってしまえば【ヒール】も使えない。
気を失ったキリングをそっと寝かしたルークは立ち上がって尋ねた。
ルーク「僕の勝ちだよね? これで登録試験は合格?」
メア「…登録試験は、別に試験官に勝つ必要はなかったんだけどね……」
ルーク「え、そうだったの?! てっきり勝たないとダメなのかと」
メア「ギルマスに勝たないと合格できないんじゃぁ、初心者は誰も登録できなくなっちゃうでしょ~」
そう言いながらメアはキリングを介抱する。と言っても、キリングはすぐに意識を取り戻し、自分の怪我は自分で治してしまうので特にやることはないのだが。
キリング「いやぁ、まいった。しかし負けるとはな。久々に楽しかったよ。バッケンに勝ったのも信じられる」
ルーク「ところで、お二人は?」
キリング・メア「?」
ルーク「どういうご関係で?」
キリング「え? 二人とは?」
ルークがメアとキリングを交互に指差す。
メア「え、か、関係って何の事? 関係なんてないわよっ?」
ルーク「でも、さっき言ってましたよね? メアの前では負けたくなかったとかなんとか」
キリング「聞こえてたのか…
…なんでもないよ、俺が一方的にプロポーズして、断られたというだけの関係だ」
ポーリン「えっ!? プロポーズ?! メア、そんなの聞いてないわよ?!」
メア「そ、その件は、まだ返事してないでしょ……、別に、断ったわけじゃ……」
キリング「答えをはぐらかされたまま、半年以上も放置されたんだ。鈍い俺もそろそろ気づくよ……お前たちこそどんな関係なんだ?」
メア「別に関係なんて…」
キリング「考えてみれば、ルーク、お前が現れてから、メアは俺のことを避けるようになった。たまに話す事と言えばルークのことばかりだしな。察するに、メアはルークに一目惚れでもしたってところか?
くそ、一時はいい線行ってると思ったんだがなぁ……すっぱりフッってくれなかったから、ついどこかで期待しちまったが、迷惑だったんだよな、メア? 済まなかったな。これからはルークと幸せになってくれ」
メア「そんな、チョット待ってよ…! 私とルークは別に……」
ポーリン「ちょ、さっきから何言ってるのよ! ルークはメアとは何でも無いわよ!」
ルーク「ええっと。僕とメアは関係なんて特に何もないですよ? 強いて言えば幼馴染? それも違うかな。幼い頃、孤児院で一緒だっただけです。僕は六歳の時にこの街を出て、最近戻ってきたところなので」
キリング「……本当に? 何もないのか? でも、メアはルークに惚れてるのは本当なんだろう?」
メア「ルークは…子供の頃、庇ってもらって。ずっとアタシのヒーローだったの…。突然消えてしまって、死んだと言われたけれど、ルークの事は忘れなかった。いつしかルークは、私の理想の男性像になっていったのよ…
その、死んだと思ってたルークが突然、生きて現れて。驚いたわ。そして、憧れの気持ちが蘇ってきて……」
キリング「やっぱり…」
メア「でもね。動揺しちゃったけど、時間を掛けて自分の気持ちを見つめ直してみたら、それは、幼い頃の憧れ、単なる淡い思い出ってだけで、大人の恋とは違うんじゃないかな、と思うようになって」
キリング「……え?」
ポーリン「…それで?」
キリング「つまり?」
メア「もう! ギルマスのプロポーズは、断ったわけじゃないです!」
キリング「!」
メア「ただ…もう少し落ち着いて考えさせて欲しい……。
だいたい、それまでマスターとはそんな話も関係も何もなかったじゃないですか! それが突然そんな事を言われて……恋人とか結婚相手とか、そんな風に考えた事なかったから、返事するのに時間が掛かってしまっても仕方ないでしょ!」
ポーリン「はっきり言いなさいよ、今はギルマスの事、どう思ってるの?」
メア「……嫌い、じゃないけど」
ポーリン「けど? 好きではないの? 恋人とか、結婚相手としては考えられない? 大人の恋愛の対象ではない?」
メア「…………恋愛の対象として、考えられないってほど嫌いなわけじゃ、ないわ」
キリング「ひ」
メア「ひ?」
キリング「ひぃやっほぉう!!」
残った手に持った木剣をキリングの喉にあてがい、グリグリと押し込もうとするルーク。
キリングは堪らず半歩引いて剣を強引にルークの頭上に振り下ろす。だが、ルークは掴んだキリングの腕を引きながら、瞬時に横に体を移動し、その勢いを利用してキリングを投げ飛ばしたのであった。
相手の勢いを利用し、華麗なフットワークを応用しながら投げてしまうのも、ルークの得意技の一つである。
背中から激しく地面に叩きつけられたキリング。
そのダメージは小さくはなく、一瞬呼吸が止まるが、即座に【ヒール】で治療し復活する。
だが、その一瞬の間が命取りであった。ルークが背後からキリングの首に手を回し、襟を掴んでそのまま絞め込んだのである。
実は、このような技もルークは爺ちゃんに教わっていたのだ。
人間は殺すなとルークに教えていたフィル爺であったが、いつか人間を相手にする必要が会った時、相手を殺さずに仕留める方法も必要になるかも知れないと、レインクラッド流の技を応用した投げ技や関節技、絞め技なども教えてくれていたのである。
魔物を相手にする日々の中、そんな技は使うことはないだろうとルークも思ったのだが、突進してくる魔物を転がし制圧したり、ゴブリンやオークなど人型の魔物を相手に、武器も魔法も使わずに制圧する練習をしたりして、自分なりに磨いていたのであった。
首を締められるような戦闘の経験があまりないキリングはルークの絞め技に対抗する事もできず、あっという間に絞め落とされてしまった。
意識を失ってしまえば【ヒール】も使えない。
気を失ったキリングをそっと寝かしたルークは立ち上がって尋ねた。
ルーク「僕の勝ちだよね? これで登録試験は合格?」
メア「…登録試験は、別に試験官に勝つ必要はなかったんだけどね……」
ルーク「え、そうだったの?! てっきり勝たないとダメなのかと」
メア「ギルマスに勝たないと合格できないんじゃぁ、初心者は誰も登録できなくなっちゃうでしょ~」
そう言いながらメアはキリングを介抱する。と言っても、キリングはすぐに意識を取り戻し、自分の怪我は自分で治してしまうので特にやることはないのだが。
キリング「いやぁ、まいった。しかし負けるとはな。久々に楽しかったよ。バッケンに勝ったのも信じられる」
ルーク「ところで、お二人は?」
キリング・メア「?」
ルーク「どういうご関係で?」
キリング「え? 二人とは?」
ルークがメアとキリングを交互に指差す。
メア「え、か、関係って何の事? 関係なんてないわよっ?」
ルーク「でも、さっき言ってましたよね? メアの前では負けたくなかったとかなんとか」
キリング「聞こえてたのか…
…なんでもないよ、俺が一方的にプロポーズして、断られたというだけの関係だ」
ポーリン「えっ!? プロポーズ?! メア、そんなの聞いてないわよ?!」
メア「そ、その件は、まだ返事してないでしょ……、別に、断ったわけじゃ……」
キリング「答えをはぐらかされたまま、半年以上も放置されたんだ。鈍い俺もそろそろ気づくよ……お前たちこそどんな関係なんだ?」
メア「別に関係なんて…」
キリング「考えてみれば、ルーク、お前が現れてから、メアは俺のことを避けるようになった。たまに話す事と言えばルークのことばかりだしな。察するに、メアはルークに一目惚れでもしたってところか?
くそ、一時はいい線行ってると思ったんだがなぁ……すっぱりフッってくれなかったから、ついどこかで期待しちまったが、迷惑だったんだよな、メア? 済まなかったな。これからはルークと幸せになってくれ」
メア「そんな、チョット待ってよ…! 私とルークは別に……」
ポーリン「ちょ、さっきから何言ってるのよ! ルークはメアとは何でも無いわよ!」
ルーク「ええっと。僕とメアは関係なんて特に何もないですよ? 強いて言えば幼馴染? それも違うかな。幼い頃、孤児院で一緒だっただけです。僕は六歳の時にこの街を出て、最近戻ってきたところなので」
キリング「……本当に? 何もないのか? でも、メアはルークに惚れてるのは本当なんだろう?」
メア「ルークは…子供の頃、庇ってもらって。ずっとアタシのヒーローだったの…。突然消えてしまって、死んだと言われたけれど、ルークの事は忘れなかった。いつしかルークは、私の理想の男性像になっていったのよ…
その、死んだと思ってたルークが突然、生きて現れて。驚いたわ。そして、憧れの気持ちが蘇ってきて……」
キリング「やっぱり…」
メア「でもね。動揺しちゃったけど、時間を掛けて自分の気持ちを見つめ直してみたら、それは、幼い頃の憧れ、単なる淡い思い出ってだけで、大人の恋とは違うんじゃないかな、と思うようになって」
キリング「……え?」
ポーリン「…それで?」
キリング「つまり?」
メア「もう! ギルマスのプロポーズは、断ったわけじゃないです!」
キリング「!」
メア「ただ…もう少し落ち着いて考えさせて欲しい……。
だいたい、それまでマスターとはそんな話も関係も何もなかったじゃないですか! それが突然そんな事を言われて……恋人とか結婚相手とか、そんな風に考えた事なかったから、返事するのに時間が掛かってしまっても仕方ないでしょ!」
ポーリン「はっきり言いなさいよ、今はギルマスの事、どう思ってるの?」
メア「……嫌い、じゃないけど」
ポーリン「けど? 好きではないの? 恋人とか、結婚相手としては考えられない? 大人の恋愛の対象ではない?」
メア「…………恋愛の対象として、考えられないってほど嫌いなわけじゃ、ないわ」
キリング「ひ」
メア「ひ?」
キリング「ひぃやっほぉう!!」
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