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あさひとの日々によって
イースターの内緒話
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このお話は4月のイースターのお祭りに起きたことですがはじまりはその前の年の暮れ、クリスマス24日、25日にさかのぼります。
この年は災害が多く人々の心は荒れ、町も富んだものより病んだものそして乞食やひったくりなどで困っておりました。そんな年のクリスマスイブの出来事です。
ローランドウルフという町にシャルロット、そうロッテという女性が住んでいました。彼女の両親は他界しており、彼女はひとり暮らしを慎ましやかにしておりました。食事は一日2食を限界に彼女なりの工夫をかさねつつ両親の遺族年金を使っておるました。そんなロッテのところにある朝、不思議な老人が現れたのです。その老人というのはみすぼらしく、とても異臭のする老人だったので人々はさけて無視していたのでした。ロッテはその老人をみるとすぐに
「おじいさん、お風呂へどうぞ」
と声をかけました。
老人はロッテの声を耳にするとうれしそうにコクリとうなづきました。
そうして、ロッテはおじいさんの背中を流してあげることにしました。すっかり、きれいになったおじいさんを見るとロッテはもう一度みすぼらしい服に着替えるのはかわいそうだと想いました。そこで、自分の父親が残していった服からシャツとズボンを持って来ました。おじいさんは
「ありがとう」
と言ってその服に腕を通しました。なぜでしょう?サイズはぴったりです。
そこで、ロッテは父親のオーバーもあげることにしました。今は冬です。外は寒いだろうにおじいさんは、ボロボロのコートしか持っていなかったからです。でも、不思議なことがひとつありました。おじいさんは服はボロボロでしたが靴については違っていました。確かに古くシワだらけにはなっていましたが元は立派な革製で出来た紐靴だと見て取れました。そこでロッテは靴もきれいに磨いてあげることにしました。
そうしてすっかり綺麗になったおじいさんは、見間違えるほどのジェントルマンに見えました。
ロッテはおじいさんに言いました。
「おじいさん、夕食もどうですか?」
すると、おじいさんは又、コクリとうなずきながら
「ううむ。」
と答えました。
二人はロッテが作った夕食を食べることにしました。
その日はクリスマス・イブだったため、ロッテは前の日からホワイトシチューを仕込んでいました。そのホワイトシチューとパンそれと毎年、秋ぐらいに仕込む果実酒でした。そんな質素な食事でしたがいつも一人のロッテにとってはとても楽しいひとときでした。おじいさんは食事をすますとロッテにお礼をいい、
「本当に世話になった、ありがとう」
といい、出ていきました。
ロッテは少し、さみしいような不思議な気持ちになりました。そして、ロッテはその晩こんな夢を見ました。その夢というのは食事を囲む家族の夢です。そこには子供が二人と自分と青年がいました。目が覚めたロッテはこんな風に暮らせたらと思いました。そこでいつもは避けていた教会のミサに行くことにしました。でも、久しく外へは出ていなかったロッテだったので流行というものにはかないませんでした。ロッテの格好は茶のスカートに上は濁った紫色の服そして、紺色の上着でした。それでも、その上から白のケープを羽織ったロッテにとっては最高のおしゃれ着だったのです。教会のミサを終えたロッテはまず、神父様にお願いをしようと考えました。そこで、いつもはしない懺悔をお願いしました。懺悔の部屋はミサのホールとは別にありました。誰もいないその部屋で一人で祈り続けておりました。すると、神父様が戸を開けて入ってこられました。ロッテは昨日の話を神父様に話しました。
神父様は何も言わず頭をゆっくり二回ポンポンとし、そのまま頭をなでてくれると、肩のところでしっかりと掴むようにしてくれました。
その夜のことです。ロッテの家の戸をドンドンドンドンと4回叩く音がしました。ロッテはもう寝ていたため『なんだろう』と思いました。そして戸を開けると若者が一人そこには立っていました。
その青年はロッテを見るとこう言いました。
「野犬に追われているんだが、暫く匿ってくれないかい?」
見ると遠くの方で
「ウーウーワンワンワン ウワン」
と吠えている野犬がいます。
ロッテは青年を家の中に入れることにしました。
青年は家の中に入るとロッテに言いました。
「君は、一人なのかい?」
ロッテは青年の質問があまりにも突然だったため少し戸惑いましたがコクリとうなずき、
「えぇ。」
と答えました。
青年とロッテはその晩がクリスマス当日だったということもあり、これは何かの縁だといろんな話をすることにしました。そして、この青年の家がロッテの家から意外に近いことを知りました。青年とロッテはお付き合いをすることにしました。もちろん、別々の家でです。
この町では男女の付き合いは非常に厳しく町の人の目というものがある限り、決して勝手はまねはできなかったからでした。
そして年が明け二人はその年の冬を一緒に過ごすことが多くなりました。
4月のイースターの頃には二人は結婚の約束をすることにしました。ロッテは結婚の儀式のかわりをこんな風にすることにしました。まず、卵を8つ用意しました。そうして、卵に軽く穴を開け中身をすっかり出してしまうとその卵を水できれいに洗いました。軽く水気をふき取ると天日干しにしました。そうして乾いた卵に今度は装飾ほどこしました。まず、穴を開けた箇所を丸いシールで隠し、そのシールと同じくらいの丸いマークをいくつか印すとマークを囲むようにギザギザを描きました。そんな風にイースターの卵を8つ作りました。そして家の庭の3箇所に、一箇所には1つ、もう一箇所には2つもう一箇所2つ、最後に家の食卓のカゴの中に素敵なハンカチを敷いて3つの卵を置きました。
イースターの日曜日になりました。その日は天気がいい日が続いており、そのイースターも暖かく最高の日和でした。そうして、二人がロッテの家でお茶を飲もうと集まった時でした。
「そっちはないよ。きっとこっちだよ。」
子供の声がします。
窓から二人がのぞくと5歳くらいの女の子と8歳くらいの男の子が庭のあっちこっちを見て何かを探しているようです。二人はそんな子供たちを窓から眺めていました。すると
「あった、あったよ。」
女の子か言います。
女の子は卵を2つ持っていました。すると、男の子も
「僕も見つけた。」
男の子も卵を2つ持っていました。そこで、ロッテは表へ出ていくと
「ねぇ、一緒に3時のおやつを食べない?」
男の子も女の子もロッテを見ると寄ってきて
「いいの?」
といいました。
ロッテはコクリとうなずき、二人を中へ入れました。そうして、4人で食卓を囲みおやつを食べることにしました。
4人は、その後どうなったと思いますか?
4人はロッテの家で仲良く暮らすことにしました。町の人たちも、もう噂話はしなくなりました。
おしまい
この年は災害が多く人々の心は荒れ、町も富んだものより病んだものそして乞食やひったくりなどで困っておりました。そんな年のクリスマスイブの出来事です。
ローランドウルフという町にシャルロット、そうロッテという女性が住んでいました。彼女の両親は他界しており、彼女はひとり暮らしを慎ましやかにしておりました。食事は一日2食を限界に彼女なりの工夫をかさねつつ両親の遺族年金を使っておるました。そんなロッテのところにある朝、不思議な老人が現れたのです。その老人というのはみすぼらしく、とても異臭のする老人だったので人々はさけて無視していたのでした。ロッテはその老人をみるとすぐに
「おじいさん、お風呂へどうぞ」
と声をかけました。
老人はロッテの声を耳にするとうれしそうにコクリとうなづきました。
そうして、ロッテはおじいさんの背中を流してあげることにしました。すっかり、きれいになったおじいさんを見るとロッテはもう一度みすぼらしい服に着替えるのはかわいそうだと想いました。そこで、自分の父親が残していった服からシャツとズボンを持って来ました。おじいさんは
「ありがとう」
と言ってその服に腕を通しました。なぜでしょう?サイズはぴったりです。
そこで、ロッテは父親のオーバーもあげることにしました。今は冬です。外は寒いだろうにおじいさんは、ボロボロのコートしか持っていなかったからです。でも、不思議なことがひとつありました。おじいさんは服はボロボロでしたが靴については違っていました。確かに古くシワだらけにはなっていましたが元は立派な革製で出来た紐靴だと見て取れました。そこでロッテは靴もきれいに磨いてあげることにしました。
そうしてすっかり綺麗になったおじいさんは、見間違えるほどのジェントルマンに見えました。
ロッテはおじいさんに言いました。
「おじいさん、夕食もどうですか?」
すると、おじいさんは又、コクリとうなずきながら
「ううむ。」
と答えました。
二人はロッテが作った夕食を食べることにしました。
その日はクリスマス・イブだったため、ロッテは前の日からホワイトシチューを仕込んでいました。そのホワイトシチューとパンそれと毎年、秋ぐらいに仕込む果実酒でした。そんな質素な食事でしたがいつも一人のロッテにとってはとても楽しいひとときでした。おじいさんは食事をすますとロッテにお礼をいい、
「本当に世話になった、ありがとう」
といい、出ていきました。
ロッテは少し、さみしいような不思議な気持ちになりました。そして、ロッテはその晩こんな夢を見ました。その夢というのは食事を囲む家族の夢です。そこには子供が二人と自分と青年がいました。目が覚めたロッテはこんな風に暮らせたらと思いました。そこでいつもは避けていた教会のミサに行くことにしました。でも、久しく外へは出ていなかったロッテだったので流行というものにはかないませんでした。ロッテの格好は茶のスカートに上は濁った紫色の服そして、紺色の上着でした。それでも、その上から白のケープを羽織ったロッテにとっては最高のおしゃれ着だったのです。教会のミサを終えたロッテはまず、神父様にお願いをしようと考えました。そこで、いつもはしない懺悔をお願いしました。懺悔の部屋はミサのホールとは別にありました。誰もいないその部屋で一人で祈り続けておりました。すると、神父様が戸を開けて入ってこられました。ロッテは昨日の話を神父様に話しました。
神父様は何も言わず頭をゆっくり二回ポンポンとし、そのまま頭をなでてくれると、肩のところでしっかりと掴むようにしてくれました。
その夜のことです。ロッテの家の戸をドンドンドンドンと4回叩く音がしました。ロッテはもう寝ていたため『なんだろう』と思いました。そして戸を開けると若者が一人そこには立っていました。
その青年はロッテを見るとこう言いました。
「野犬に追われているんだが、暫く匿ってくれないかい?」
見ると遠くの方で
「ウーウーワンワンワン ウワン」
と吠えている野犬がいます。
ロッテは青年を家の中に入れることにしました。
青年は家の中に入るとロッテに言いました。
「君は、一人なのかい?」
ロッテは青年の質問があまりにも突然だったため少し戸惑いましたがコクリとうなずき、
「えぇ。」
と答えました。
青年とロッテはその晩がクリスマス当日だったということもあり、これは何かの縁だといろんな話をすることにしました。そして、この青年の家がロッテの家から意外に近いことを知りました。青年とロッテはお付き合いをすることにしました。もちろん、別々の家でです。
この町では男女の付き合いは非常に厳しく町の人の目というものがある限り、決して勝手はまねはできなかったからでした。
そして年が明け二人はその年の冬を一緒に過ごすことが多くなりました。
4月のイースターの頃には二人は結婚の約束をすることにしました。ロッテは結婚の儀式のかわりをこんな風にすることにしました。まず、卵を8つ用意しました。そうして、卵に軽く穴を開け中身をすっかり出してしまうとその卵を水できれいに洗いました。軽く水気をふき取ると天日干しにしました。そうして乾いた卵に今度は装飾ほどこしました。まず、穴を開けた箇所を丸いシールで隠し、そのシールと同じくらいの丸いマークをいくつか印すとマークを囲むようにギザギザを描きました。そんな風にイースターの卵を8つ作りました。そして家の庭の3箇所に、一箇所には1つ、もう一箇所には2つもう一箇所2つ、最後に家の食卓のカゴの中に素敵なハンカチを敷いて3つの卵を置きました。
イースターの日曜日になりました。その日は天気がいい日が続いており、そのイースターも暖かく最高の日和でした。そうして、二人がロッテの家でお茶を飲もうと集まった時でした。
「そっちはないよ。きっとこっちだよ。」
子供の声がします。
窓から二人がのぞくと5歳くらいの女の子と8歳くらいの男の子が庭のあっちこっちを見て何かを探しているようです。二人はそんな子供たちを窓から眺めていました。すると
「あった、あったよ。」
女の子か言います。
女の子は卵を2つ持っていました。すると、男の子も
「僕も見つけた。」
男の子も卵を2つ持っていました。そこで、ロッテは表へ出ていくと
「ねぇ、一緒に3時のおやつを食べない?」
男の子も女の子もロッテを見ると寄ってきて
「いいの?」
といいました。
ロッテはコクリとうなずき、二人を中へ入れました。そうして、4人で食卓を囲みおやつを食べることにしました。
4人は、その後どうなったと思いますか?
4人はロッテの家で仲良く暮らすことにしました。町の人たちも、もう噂話はしなくなりました。
おしまい
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