君に心を

河嶋 亜津希

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カーディガンの袖を引っ張る。やっぱりまだ夜は少し冷える。志津希の体より大きいカーディガンに少しむかついた。前を歩く凪都に志津希は黙ってついていく。どこに連れて行かれるのかよくわかっていない。ぼーっとしながら歩いていると凪都がいきなり足を止めた。そのまま志津希は凪都の背中に突っ込む。

「わっ、」

「なにか買ってこうか。コーヒーでいい?」

爽やかに笑って凪都は振り返る。そのまま真隣の自販機にちゃりんと小銭を入れた。

「はい、どうぞ。」

志津希に缶コーヒーを手渡す。志津希はぶんぶんと首を振った。

「いいよっ…自分で出す。」

手渡された缶コーヒーを押し返すけど力の差で勝てない。凪都は受け取るまで諦めないらしい。志津希がこの二週間でわかったことは案外凪都は頑固だということだ。

「俺のわがままで着いてきてもらったんだからコーヒーぐらい奢らせて?ね?」

そう言われるとなにも言えなくなる。志津希は少しむっとしながら渋々缶コーヒーを受け取った。ここで素直に受け取れない自分に志津希は可愛いくないなと嫌になる。

「そんな顔しないでよ。」

困った顔で笑う凪都。こんな自分に優しくしてくれる理由なんか志津希はわからない。わかりたくない。

「…ありがとう……」

小さく聴こえないぐらいの声。素直のなりかたなんて志津希は忘れてしまったのだ。

「ん、どういたしまして。」

凪都の手が志津希の頭に触れる。凪都は本当によく志津希の頭を撫で回す。弟がいるからなのかとか思うけどわざわざ同い年の男の頭を撫でたいとか思うんだろうか。凪都の考えがわからないし志津希がそれを受け入れているのもわからない。とにかく志津希は凪都に乱されていた。

「よし、行こうか。」

自分の分も缶コーヒーを買って凪都は志津希に声をかけた。志津希は凪都を見つめながらうんと頷く。すると唐突に凪都は志津希の手を握った。心臓がまたしても飛び跳ねる。

「ちょ、」

なんなんだよっ!心の中で悪態をついてもなにも解決しなかった。凪都は気にせずに志津希の手を引いて歩く。誰かに見られたらなんて凪都は気にしていない。志津希に対する接しかたが弟扱いじゃないことを着々と凪都に刷り込まれているような気がして志津希は頭を抱えそうになった。
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