51 / 104
50
しおりを挟む鳴り響くチャイムを聴きながら志津希は教科書を閉じる。隣の机で突っ伏している稲瀬の肩をぽんぽんと叩いた。
「多畑くん、終わったよ。」
「ん~…」
気怠そうに稲瀬は顔を上げた。連休があけて数日。稲瀬はこの調子である。全国ツアーが終わった直後は度々こうなると凪都は笑っていた。志津希ははぁっと息をついて教室を見渡す。ふと入り口に目が止まった。
「あの子…」
眼鏡をかけた自信のなさそうな女の子がきょろきょろと教室の中を見ている。志津希はもう一度稲瀬を肩を叩いた。
「多畑くん?あの子きてるよ。部長?多畑くん探してるんじゃない?」
何回か体を揺さぶると稲瀬は気怠げに体を起こして入り口付近に目を向ける。志津希はその表情をみて苦笑いを浮かべた。稲瀬は心底面倒くさいと顔に貼り付けている。ここ数日で学んだことは稲瀬は寝起きが悪いということだ。
「多畑ー呼んでるぞー」
入り口付近のクラスメイトが稲瀬を呼ぶと稲瀬は重い腰を上げて楽器ケースと鞄を持ち上げた。
「河嶋、行ってくる。また点呼で、」
稲瀬はのっそのっそと足を動かして行ってしまう。志津希は大変だと女の子を思ってため息をついた。稲瀬を見送り自分の鞄に教科書を突っ込む。連休あけで体が鈍っているのか志津希も少しだるさを感じていた。連休中に出かけたのはあの日だけで志津希は結局だらだらと本を読んだり勉強をしたりで終わってしまった。凪都はちょこちょこ代表の仕事だったり実家に一時的に帰ったりしてはいたがほぼ同じ空間で過ごしていた。志津希がルームメイトと四六時中一緒にいるなんて誰が想像できただろうか。正直志津希が一番驚いている。凪都の顔が頭に浮かんで志津希は打ち消すように首を振った。凪都のことを考えだすと時間がいくらあっても足りない。
「志津希?」
心臓がどきっと飛び跳ねる。ほら、考えてるとやってくるんだ。志津希は短くため息を吐いて後ろを振り向く。凪都は不思議そうに笑っていた。
「今日は一緒に帰るの?」
志津希から話を振ると凪都はばつが悪そうに表情を歪める。凪都とルームメイトになって以来凪都に放課後用事がないと一緒に帰るようになった。正しくいえば凪都が迎えにくるようになった。凪都の表情に察した志津希は窓に目を向ける。一般生の校舎からるんるんと効果音がつく足取りで暁美が向かってくるのが見えた。
「はや、」
志津希は思わず声に出して呟いしてしまう。距離がある一般生と寮生の校舎を暁美は誰よりも早く凪都に会いにくる。まだ授業終わったばかりなんだけど…。志津希は心の中で呟いて凪都に向き直った。
「ひとりで帰ってもいい?」
「いや、中庭でいつもの場所で待ってて?すぐ終わるから。」
素早く答えた凪都は苦笑いを浮かべている。凪都も暁美の姿を捉えたらしかった。
「…わかった。じゃあ待ってるね。」
この態度は明らかすぎるだろうかと志津希は自分に突っ込みをいれる。凪都の用事で志津希が中庭で待つということは代表仕事の皮をかぶった暁美個人の用事だ。そんなこともう志津希は知っている。申し訳なさそうな凪都に少し心が苦しくなった。
「ココアが飲みたい、かな。」
これくらいのわがままと独占欲ぐらい許してほしい。志津希の言葉に凪都は表情を明るくさせて志津希の頭を優しく撫でた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※この物語はフィクションです。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる