君に恋を

河嶋 亜津希

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奈津希が風呂から上がると春はソファでコーヒーを飲んでいた。テレビ番組が深夜のニュースを写している。

「春くん、おかえり。」

「おーただいま。お前、今日は遅かったのか?」

「うん。テスト勉強してて…ごめんね、風呂遅くなっちゃった。」

奈津希は少し春に嘘をついた。確かにテスト勉強はしていたけどそれだけじゃない。奈津希のなかで國彦と会っていたことが春に後ろめたさがあるのだ。たとえそれが偶然であっても。

「奈津。」

突っ立ったままの奈津希を春は手招きして呼んだ。奈津希はふらふら近づいて春の隣にぽつんと座る。すると春の手が伸びてきて奈津希の頭を自分の肩に傾かせた。

「体熱すぎだろ。」

「風呂上がったばっかだもん。」

ふたりの距離は葉津希と仲直りしてからあからさまに近くなっていた。奈津希は疑問は感じていてもそれを拒もうとはしていない。嫌ではないからだ。春に避けられるよりずっといい。

「勉強、家のほうが落ち着くか?」

春の小さな声に奈津希は首を横に振った。

「家に…誰もいないのが落ち着かなくて、なんか怖いんだよね。」

今まで奈津希のそばには常に誰かがいた。春が引っ越した後も葉津希がそばにいたし家にひとりという状況がなかった。ひとりの家にいるとそわそわしてしまう。

「大丈夫だよ。どこで勉強しても変わらないから。」

奈津希が小さく呟くと同じような小さな声で春はそうかと頷いた。奈津希の頭に触れる手が優しい。

「あんま遅くなんなよ。」

春の優しい声に頷いて奈津希はぼーっとテレビの中で難しそうに喋るキャスターを見ていた。
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