よくある冒険譚的な何か

stuu

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3. 災難だったな、兄ちゃん。良かったら――

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「くれぐれも気を付けてくださいねー!!」

「あいよ。お互いになー……ったく、分かってるっつーの」

再三警告してくるユータに、どれほど信頼が無いのかと辟易する。
あるいは俺のトラブル遭遇率の高さを信頼している、とも言えるかも。

「さてと……ま、適当に見て回りますかぁ」

まずは装備品かなぁ。
普段使い込んでいる大剣もすっかりボロボロになってるし。
まだ使えるとは思うから特に新しいものを買うつもりは無いけど、メンテナンス含めて一旦見てもらうのが良いかな。

…………
……




「全然ダメじゃな。この状態で今まで使っていたのが奇跡じゃ」

……えっ、嘘やん。

「嘘やないわい。ほれ見てみぃ」

店主の爺さんに促され、大剣をじっと観察する。
……本当だ。よく見ると剣の芯が歪んでしまっている。

「メンテがしっかりされていて、お前さんが本当にこの剣を愛用していたのが伝わってくる。ここまで長く使ってくれて、この剣も本望じゃろうて」

毎日夜寝る前に剣を労わって丁寧にメンテをした甲斐があったというものだ。
とはいえ、突然の別離に涙を禁じ得ない。

「……ふむ、気に入った。お前さんの剣の使い方に免じて、1本好きなものを持って行って良いぞ」

「えっ、マジっすか!?」

「うむ。ただし、雑な使い方をしたらタダじゃおかないからの?」

目がガチだ。恐らく暗殺稼業の人なのだろう、多分。
無論、譲って頂くからには大切に扱うつもりだったが。

「お? これは……」

色々と物色していると、ふと1つの大剣が目に入った。
他が鋼鉄の銀色で光輝いているのに対し、その剣だけは何と表現するべきか、禍々しいオーラを纏って光を全て吸収しているように見えた。
柄の部分には大きな目玉が一つ付いている。

「そやつは止めた方がええ」

後ろから爺さんに呼び止められ、剣に伸ばした手を止める。

「何でだ? これも売り物なんだろ?」

「そやつはチョイと曰く付きでな、持ち主含めて全てのものを喰らい尽くすんじゃ。名を”全てを喰らうもの《オールイーター》”と言う。」

「はぇ~、その名前って爺さんが付けたのか? イカすねぇ!!」

「茶化すでない!! ……ともかく、そやつを使ったものは皆早死にしとる。もし死に急いでいるのでないのなら、別の武器にしなさい」

「んー、そうだなぁ……」

俺は悩みながら、曰く付きの剣を持ち上げる。
ゴツゴツと荒々しい剣身であり、生半可な衝撃はものともしないだろう。
恐らく”切る”と言うより”叩き潰す”ように攻撃するのだろう。

「……俺、やっぱこれにするわ」

「何じゃと!?」

「せっかくの忠告だけどさ、俺が使いたくなっちゃったんだよね。この武器」

「そうか……ま、本人がそう言うなら別に何でも良いわい」

爺さんは特に気にした様子も無く、そう言い放った。
もし止められていたとしても、変えるつもりはさらさら無かったが。

「ここで会ったのも何かの縁。また入り用になったら来ると良い」

「ありがとな、爺さん!」

「うむ、達者でな」

―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―♢―

期せずして新武器が無料で手に入り、懐がホクホクだ。
ちょっと今日の昼ご飯は奮発しても良いかも……?

「さぁさぁそこの兄ちゃん、フランヌでしか食べられない料理、ピカータはどうだい? 今なら安くしとくよ!」

「おお、そいつは良いな。1つ頂こう」

「あいよぉ! 毎度あり!」

快活な兄ちゃんからピカータなる食べ物を受け取る。
見た目はとても肉肉しい。
肉を下味付けてそのまま豪快に焼き上げたような……そんな感じだ。
前にユータに作ってもらった”ろーすとちきん”という食べ物に似てる気がする。
あれもまた美味しかったなぁ……。

「よし、それでは頂きま――」

ドンッ!

「あっ」

ピカータを口に入れようとしたまさにその瞬間。
背中に何かがぶつかり体勢を崩す。
そして……グシャッ。

無情にも、ピカータは一口も食されること無く土に還ってしまった。

「おいぃっ!! 急にぶつかってきやがって! どうしてくれるんだコレェ!!?」

俺は振り向きざまにイチャモンを付ける。
相手はフードを深く被っている上に俯いており、顔を窺い知ることは出来ない。
そいつは立ち上がると衣服に付いた土をパンパンと払う。

「あ、あの……申し訳ありません!!」

声で女性だと分かり、俺は狼狽える。
思いっきり男性だと思い込んで色々強い言葉を使ってしまった。
しかもこの言葉遣い……恐らくただの一般人ではない。

「い、いえこちらこそすみません(?)」

ぶつかられたのに謝るというよく分からない行動をする程に焦っている。
女性はしばらく頭をペコペコ下げていたが、突然、

「す、すみません! 私急いでおりますのでっ!!」

そう言ったかと思うと、足早に去っていってしまった。
後に残されたのは、俺と地面に落ちたピカータ、そして虚しい感情だけだった。

「災難だったな、兄ちゃん。良かったらもう1つどうだい?」

「なんと……! 気前が良いな、ありがたく頂くよ」

「ちょっと安くしとくからさ!」

「いや金取るのかよ!?」
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