無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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逃亡~ピタゴラスイッチ~

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 そんなこんなで俺のギルドに登録するための承認試験が終わったのだった。

「お疲れ様でしたーっス!」
「……こんな簡単でいいのか?」

 道中予期せぬハプニングやら、草原で魔物に襲われたりやら何かしら起きてもよさそうな気もしたが、本当に何事もなく試験が終わったので不安になる。

「いいんスよ!この試験は『依頼内容を把握しているか』と『決められた指定時間以内に終わらせる意思』と『仲間がいる場合連携をうまく取れるか』の三つを見るための物っスから!」

 それってごく当たり前のことなんじゃないのか?
 
「シューイチさんの思ってることはわかるっスよ?でもこの世の中シューイチさんの思ってる以上に、この程度のことも出来ないうすらトンカチの多いこと多いこと……」

 俺の疑問を見透かしたように、受付嬢が遠い目をしながら疲れたように吐き捨てた。
 まあ世の中色んな人がいるよね?うん!

「ごほん!シューイチさんが試験に行ってる間にギルドカードを作っておいたんでお渡ししちゃいますね!どうぞっス!」
「あっどうも」

 受付嬢からキャッシュカードサイズのカードを受け取る。
 なんかすごくツルツルスベスベしてて触り心地がいいなこれ……何でできてるんだろ?

「これで名実ともにシューイチさんはギルドの冒険者っスね!これからも世のため人の為、ひいてはのギルドの発展の為ますますのご活躍お願いいたしまっス!」

 こうして俺は何事もなく……本当に何事もなく冒険者ギルドに登録を済ませることができたのだった。
 あまりにも簡単すぎて、この後なにかしら帳尻合わせするかのような面倒くさい事件でも起きるのではないかと勘ぐってしまう。


 ぶっちゃけると俺のその予想は見事に現実のものとなる。


「お疲れ様でした!どうですか?冒険者になった感想は?」

 ギルドから宿へと向かう道すがら、エナが何やら嬉しそうに聞いてきた。

「どうですかもなにもなぁ」

 全然実感が湧かないので、ウキウキしながら感想を求めてきたエナが期待するような返答をすることができない。
 まあでもこれからは俺もギルドで依頼を受けて、それでお金稼ぐことができるようになったのは良いことだよな……とここまで考えてふと気が付く。

「そういやエナはいつまで付いてきてくれるんだ?」
「え?もしかして私邪魔ですか?」

 邪魔なわけあるかい。

「いやそういう意味合いで言ったわけじゃなくて……ほら?エナは今まで冒険者として活動してたわけだろ?それなのに俺の世話ばっか焼いてるせいで自分の活動できなくなるんじゃないかって思ってさ」

 付いてきてくれるのは物凄くありがたいし助かるんだが、俺がエナの邪魔してるんじゃないかとちょっと不安に思ってしまった。
 たしかに魔物から助けたり、俺たちの事情にがっつり関わらせてしまったこともあるけども、俺的にはもうそれらの恩みたいなものは充分すぎるほど返してもらったと思ったわけで。

「そんな水臭いこと言わないでください!私とシューイチさんの仲じゃないですか!……なんて言えるほど長い時間を共に過ごしたわけじゃありませんけど、もうここまで関わってしまったんですから私の気の済むまでお付き合いさせてください」

 つくづく思う、この世界にきて一番最初に出会ったのがエナで良かったな……と。
 俺みたいなわけのわからん奴にここまで言ってくれるなんて……不覚にもちょっとうるっときた。
 自分の高いテンションのせいでもしかしたら気が付いてなかったのかもしれないが、この世界に一人で放り込まれて思っていたよりも不安だったのかもしれないな……俺は。

「そっか……それじゃこれからもよろしく―――」

 ドンッ!!

 そこまで言いかけた途端、後ろから腰に衝撃が走った。
 何事かと思い首を向けるもなにも見えない。
 視線を下に向けていくと、肩で息をしながら青い髪の少女が俺の腰に抱き着いていた。

「たっ……たす……けて!」

 あまりに急なことであっけに取られたが、なにやらこちらに向かってくる慌ただしい複数の足音で我に返る。
 視線をそちらに向けると、ローブを頭からすっぽりと被った見るからに怪しい三人組が俺たちに……この少女に向けて猛接近してきていた。

(あれ絶対やばい奴だ!!)

 そう思ったものの、そんな瞬間的に逃げるという選択なんて取れるはずもなく、あっという間に怪しい三人組が俺たちの前にやってきた。
 それを見るなり腰にしがみ付いていた少女が、背中に隠れるように俺の後ろに回り込んだ。

「おいお前ら、そのガキをこちらに渡せ」
「素直に渡せば何もしない」
「痛い目に遭いたくないなら大人しく渡せ!」

 出会い頭にいきなり失礼な連中だな。こんにちわの一言くらい言えないのか?
 しかしこんな如何にも悪い奴らですみたいな連中を見ることができるなんて……さすが異世界だと変なところで感心してしまった。
 変な感心をしてる俺とは反対に、少女は怯えた表情でより一層俺の腰にしがみ付く力を強くし、エナの表情には緊張が走っていた。

「こんな小さな女の子を大の大人が三人がかりで追い回すなんて、情けないなぁおい」
「つべこべ言ってんじゃねぇ!さっさとそのガキ渡せっつてんだろが!」

 エナが「何で煽ってるですか!?」みたいな顔でこちらを見てくる。

「なんなの?アンタらロリコンなの?うわぁ~引くわ~」
「わけわかんねーことベラベラと!いいからそのガキをこっちに―――」

「あ――――――!!!!!!」

 突然遠くを指さし叫び出した俺につられて、その場にいる全員が俺の指した方に顔を向ける。
 その隙を見逃さず、俺は少女とエナの手を取り全力で走りだした。
 エナはあっけに取られていたが、俺の意図に気が付いたらしく全力で走る体制に移行する。

「あっこら!待ちやがれ!!!」

 逃げだした俺たちの後をワンテンポ遅れて追いかけてくる怪しい三人組。
 距離は稼いだけどこれすぐに追いつかれるだろうなぁ……エナはまだいいけどこの子を連れたまま逃げ切るのはおそらく不可能だろう。
 どうしたものかと思考を巡らせるも、結局今ここで取れる最善の選択肢なんて限られている。
 目についたわき道に入り、入り組んだ建物の間を縫うように走り抜ける。
 そうしてる間にもじりじりと三人組に距離を詰められていく。

「エナ!この子を連れて宿屋まで逃げてくれ!」

 人通りが完全になくなったのを見計らいエナに告げる。

「そっそんな!?シューイチさんを置いてなんて!」
「大丈夫!むしろ一人のほうが都合がいいから!わかるだろ?」

 俺がそういうとエナがはっとなり顔を赤らめる。
 うん、瞬間湯沸かし器みたいだな、この世界にあるかどうか知らないけど。

「いいか?今からあのお姉ちゃんと一緒に逃げてくれ?」
「うっ……うん……!」

 走りながら俺から手を離し、少女がエナの手を取りともに走り始める。
 両手が開いた俺はすかさずマントの留め具を外し、後ろの三人組に向かて投げつけた。

「なっ!?てめえ!!」
「悪あがきしてんじゃねーぞ!!」

 さらに逃げながらグローブを外し投げつけ、もう一つおまけにと胸当ても外し投げつけた。
 胸当てが先頭を走っていた奴の顔面にヒットしたらしく、顔を抑えてうずくまる。
 突然うずくまったローブの男をかわそうと無理な体制になってしまったらしく、後ろを走っていたもう一人のローブの男が盛大にすっころんだ。
 さらにその転んだ男に躓き足を取られて、最後の一人も面白いようにすっころぶ。

「ピタゴラスイッチかよ」

 思わず突っ込む。
 妨害目的で投げつけたわけじゃなかったんだけど、思った以上の成果を得られてラッキーだった。
 少し距離を取ったところで俺は立ち止まる。
 突然走りを止めた俺に驚いて、エナが一瞬立ち止まるが目配せで俺の意図を伝える。
 ちゃんと伝わったらしく、頷いたエナが少女を連れて建物の曲がり角に消えていった。

 さて、ここからが本番だ。
 
「いつつ……てめえよくもやりやがったな―――」
「舐めた真似しやがって……もう許さねえぞ―――」
「覚悟はできてるんだろうな―――」

「「「―――って何脱ぎだしてんだてめーはっっっ!!!???」」」

 おもむろに服を脱ぎだした俺を見て、三人組が一斉にツッコミを入れてきた。
 愉快な連中だなおい。

「まあまあそう言わずに」
「なにがまあまあだ!?」
「変態か!?」

 あっけに取られている連中を宥めながら、次々と服を脱いでいく。
 上着を脱ぎ、そして下着ごとズボンに手をかける。

「こんなアホにかまってる暇はねえぞ」
「とにかくあのガキ捕まえないと……おいっ、こいつらは俺たちで始末しとくからお前はあの二人追いかけろ!」
「わかった!」

 アホとか……つくづく失礼な連中だな。
 そんなことを思いつつも、俺は無事に全裸になることに成功した。
 必要なこととはいえ、やっぱり抵抗あるし恥ずかしいわこれ。

「もういい……早く行け!!」

 三人組の一人がエナたちを追いかけるべく、俺を無視して横を通り抜けようとした。

「悪いけどそういうわけにはいかないんだよね」

 通り抜けようとしたローブの男の肩を横から軽く押してやると、たったそれだけでローブの男が勢いよくすっ飛んで壁に激突して動かなくなった。
 ……死んでないよな?気絶してるだけだよな?
 
「なっ……!?」
「お……おい!?大丈夫か!?」

 壁に突っ込んだローブの男がかろうじて立ち上がるのを見て、俺はほっと胸をなでおろす。

「てめぇ……何しやがった!?」

 驚愕した表情で壁に激突したローブの男が懐から短刀を取り出し、俺に向けてくる。
 それにつられるように、残りの二人も懐から武器を取り出し、一気に場に緊張が走る。

「大げさだなぁ?ちょっと肩を押し出しただけじゃんか?」
「ちょっと押しただけであんなに勢いよくすっ飛ぶわけねえだろ!?」

 もっともな意見だけど、わざわざこいつらに全裸パワーのことを説明してやる義理なんてない。
 思わず使ってしまった全裸パワーという単語に、脳内シエルが「ほら!やっぱり全裸パワーって言いました!」としてやったりな表情でのたまってきたが、当然ごとく無視する。



「さてと……悪いけどエナたちのところに行かせるわけにはいかないんで、ここで俺と遊んでもらうぜ?」
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