無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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不安~ダンジョンの秘密~

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 翌日、シエルに留守を託した俺たちは、ルカーナさんの住居まで来ていた。
 ちなみにルカーナさんの家はこの拠点から歩いて5分ほどの距離にある。
 うちの拠点よりは大きくない物の、割と立派な家に一人で住んでいるらしい。

「ダンジョンか?たしかにこの国にもあるにはあるが」
「ちょっと事情があって、俺たちこの国のダンジョンの深い階層まで行かないといけなくて……」
「深い階層って……どのくらいだ?そもそもなぜダンジョンに行く必要がある?」

 案の定ルカーナさんが怪訝な顔で聞き返してきた。
 さすがに何もかも内緒にしたまま、相手から都合のいい話を聞き出すなんて無理だよなぁ……。

「えっと……多分言っても信じてもらえないと思うんですけど、この国のダンジョンの深い階層に、種類は違いますがリンデフランデを騒がせた神獣がいるんですよ」
「……なぜそんなことがわかる?」
「それは……」
「お兄ちゃん、ルカーナおじさんなら全部話しても大丈夫だと思うよ?」

 未だに詳細を話すか話さないかを悩む俺を、テレアが後押ししてくれる。
 そうだよなぁ……ルカーナさんは口が堅いだろうし、なにより協力してくれる人は多い方がいいもんな。

「じゃあ全部話しますから、今から話すことはなるべく他言無用でお願いします」
「何を話すのかは知らんが……まあ口は堅いほうだから安心しろ」

 それから、リンデフランデで玄武を鎮めた際、玄武の加護をフリルが受けたことで、フリルが玄武を召喚できるようになり、その玄武から後一年以内に残り三匹の神獣が復活し暴れまわるであろうことを、実際フリルに玄武を召喚してもらいながら説明していく。
 最初は半信半疑だったルカーナさんだったものの、実際にフリルがミニ玄武を召喚してみせたことで、ようやく信じてくれるようになったみたいだった。
 ちなみシエルの件については伏せてある。
 これこそ言っても信じてもらえないだろうしな。

「話はわかった……俺も長らく冒険者として活動して色々と体験してきたものだが、この神獣の件はひと際飛びぬけているな……」

 口ではそう言うものの、ルカーナさんの表情は退屈を紛らわすことのできるおもちゃを手に入れて嬉しそうに笑う子供のような表情だった。
 この人は根っからの冒険者なんだなぁ……。

「それでどうですかね?ダンジョンは」
「その前にお前たちはどこまでダンジョンについて知っている?」
「え?……えっと、冒険者ギルドに登録さえしていれば、浅い階層までなら魔物の素材やダンジョン内の鉱石を自由に取りに行ってもいいってことくらいしか……」

 なんでもダンジョン内のは不思議な魔力で満ちており、その魔力から魔物が発生するため基本的にダンジョン内の魔物は絶滅はしないそうだ。
 それはダンジョン内でも取れる鉱石も同じであり、言うなればダンジョンそのものが不思議な魔力で構成されているのとのこと。
 しかしその魔力にも限界があるらしく、ダンジョンを維持できなくなるほど魔力がなくなってしまうとその地に完全に根付いて固定化されてしまい、中の魔物や鉱石が復活することもなくなってしまう。
 故にダンジョンは資源という一面を持っているのだ。

「基本的なことは知っているみたいだな。ちなみに深い階層に行きたいならこの国の王からの推薦状を持っていないと門前払いされるぞ」
「うわーやっぱりか……」

 多分そんなことじゃないかと思った!

「マグリドとリンデフランデの推薦状じゃダメですかね?」
「そこはわからんな……なにせその二つの国の推薦状を持っている冒険者はこの国にお前たちしかいないからな」
「ルカーナさんはこの国の王の推薦状をもっているんですか?」
「以前厄介な依頼を達成した報酬として無理やり渡されたな」

 まあルカーナさんなら持っていて当然というべきだろうな。

「ちなみにダンジョンの深層に行ったことはあるんですか?」
「何度かな。あそこはそこそこ手ごたえのある魔物がいるからな」

 筋金入りのバトルジャンキーだなこの人は。
 いつぞやのレリスとの手合わせも面倒くさいと言ってたのに、最終的には楽しかったみたいな顔してたし。

「しかしやっぱり推薦状がいるのか……今から推薦状をもらえるように活動してたら、時間かかりすぎるよな……」

 一年なんてまだまだ先と呑気に構えていたらあっという間だろうな。
 そもそも俺たちには時間がないんだよな……どうしたもんだろ。

「そうだな……俺の推薦状とお前たちの持ってる二つの国の推薦状があれば、もしかしたら特例として一度くらいは最深部まで行かせてもらえるかもしれんな。俺が紹介する冒険者ということならある程度は融通は利かせてもらえるはずだ」
「それじゃあダンジョンの件はお願いしてもいいんですか?」
「その代わり、俺も同行させてもらうぞ?神獣と戦える機会など滅多にないだろうからな……ククク」

 よもや神獣と戦えるかもと知って喜ぶ人がいるなどと思いしもしなかった。
 しかしルカーナさんが一緒に来てくれるのならこれほど心強いことはないな!
 なんか化け物染みた強さを持ってるし、もしかしたら朱雀との戦いは玄武ほど苦労しない可能性が出てきた。
 そんなこんなで、ダンジョンについてはルカーナさんがなんとかしてくれるそうなので、また後程詳しい日程を話し合うことを約束し、俺たちはルカーナさんの家を後にした。

「思いのほかスムーズにいきましたね!」
「最初は取っつきにくそうなイメージだったけど、実際は結構面倒見のいい人だよね」
「……ツンデレ」
「えっと……これからどうするのかな?」

 ルカーナさんとの話し合いにもう少し時間が掛かると思ってたんだけど、話がスムーズに進んだおかげで結構時間余ってるな……。

「そうだな……俺はちょっと冒険者ギルドに行ってダンジョンの下見してこようかと思う」

 話に聞いてるだけで、実際にどんなところなのかまったく知らないからな。
 いざ朱雀を鎮めに行くときに不測の事態に見舞われても困るので、ダンジョンがどんなところなのかを見ておかないとな。

「それなら私も一緒に行っていいですか?」
「ああ勿論!二人はどうする?」
「えっと、テレアたちはシエルお姉ちゃんに料理の本を買ってきてほしいって頼まれてるから……」
「そっか、それじゃあエナと二人でちょっとダンジョンの下見に行ってくるよ。夕方には戻るってシエルに伝えておいてくれないか?」
「……承った」
「うん!お兄ちゃんたちも気を付けてね?」

 そうしてテレアとフリルの二人と別れた俺たちは、この一週間で散々お世話になっている冒険者ギルドへと足を運んでいく。
 その最中、ちょっと気になったことがあるので、エナに聞いてみることにする。

「エナってダンジョンには入ったことあるの?」
「国が管理していない野良ダンジョンなら何度かギルド依頼で入ったことがありますね」

 何だよ野良ダンジョンって。
 野生ダンジョンや養殖ダンジョンとかもいるのか?
 でもある意味その表現って間違ってないよな?だってダンジョンは謎の魔力で構成されていて、その魔力がなくなるとダンジョンとしての機能を停止して、新しい魔物や鉱石を生み出せなくなるんだから。
 これってまんま人間にあてはめられるよな。
 魔力がなくなったダンジョンが役目を終えるように、人間も命がなくなったら役目を終えるし。

「浅い階層なら魔物や罠もそこまで怖い物はありませんが、ひとたび深い階層に入ると途端に魔力の濃度が変わって、強力な魔物が出たり罠も凶悪になったりします」

 俺の世界で言うところのローグライク系のゲームと同じだな。
 ただ一つ違うのはダンジョンで死んだら入り口に戻されるなんて生易しい処置はなく、死んだらそれまでってところだろうな。

「一応今回は下見ですからそこまで危険はありませんが、充分気を付けてくださいね?」
「ああ、危険だと感じたらすぐに帰ろう」

 仮に朱雀のところまでいけるとしても、フリルがいなければ最終的に勝つことはできないしな。
 そんな会話をしていると、ようやく冒険者ギルトのある付近まで来ていた。
 とそこで、俺は見知った後姿を発見したので、思わず大声で呼び止めた。

「あっ!おーい!レリスー!」

 当然俺に大声で呼ばれたその子は、一瞬びくっとなったものの、声を掛けてきたのが俺だとわかって安堵の表情を浮かべた。

「もうシューイチさん!いきなり大声出さないでくださいよ」
「ごめんごめん!レリスがいたからつい」
「お二人とも、お久しぶりですわね」

 実に二週間ぶりにレリスと再会した。
 ルカーナさんと手合わせしたあの日から顔を合わせてなかったからな……様子を見るに元気でやっていたようだ。

「レリスさんはこれからギルドへ?」
「はい!たった今スピリットゴースト5体討伐の依頼を達成したところなので報告に行こうかと思いまして。お二人もこれからギルドへ?」
「ちょっとダンジョンに行く用事が出来ちゃってさ、ギルドでダンジョンの入場許可をもらってこようと思って」

 ダンジョンという単語に、レリスが目を輝かせる。

「ダンジョンですか!わたくしまだ行ったことがありませんわ!」
「なにおう?俺だって行ったことないわい!」
「何で張り合ってるんですか?」

 エナに呆れ顔で突っ込まれた。

「あの、もし差支えがないならわたくしも連れてってもらえないでしょうか?」
「ちょっと下見に行くだけだから、すぐに帰ることになるけど、いいの?」
「はい!構いませんわ!」

 どうしたもんかと思い、隣のエナを見ると「まあどうせすぐ帰りますし問題ないんじゃないですか?」と目で語って来た。
 なんかエナとこういうアイコンタクト出来るようになったのかと思うと、少し感慨深い気持ちになるな。

「じゃあギルドで達成報告してきなよ?俺らもその間にダンジョンの入場許可もらっておくからさ?」
「わかりましたわ!まさかダンジョンに行くことができるなんて!ワクワクしますわ!」
「レリスさんはなんというか、好奇心旺盛ですよね」
「この世界はまだまだわたくしが見たこともないもので溢れてますもの!」

 見た目だけならエナよりも抜群に大人に見えるのに、なんていうかこういう好奇心が強いところが子供っぽいというか……まあそこが可愛いところではあるんだけどね。
 かくいう俺もちょっとダンジョンに行くのが楽しみだから人のことどうこう言えないんだけどね。

「シューイチさんも言いましたけど、今日はただ一階層を少し見て帰るだけですからね?下には降りませんからね?」
「わかっておりますわ!ささ、早くいきましょう!」

 待ちきれないのか、レリスがエナの手をとってギルドへと走り出す。

「ちょっと待ってくださいレリスさん!そんな急がなくても……!」
「あんまり急いで走ってこけるなよー」

 レリスの異様に高いテンションにちょっとだけ不安になるも、本当にちょっと下見するだけだから大丈夫だろう。
 そもそも下に行くならもっと準備しないといけないしな。

 しかしなんだろう……さっきから妙に嫌な予感がする。
 なんとなく……本当になんとなくなんだけどこのままダンジョンに行くのはまずい気がするのだ。
 ……何をバカな、エナだって浅い階層なら比較的安全だって言ってたじゃないか。
 それに今から行くのは国が管理してるらしいダンジョンだし……。
 前向きに考えれば考えるほど、胸の中のモヤモヤが大きくなってしまうのはなぜだろう?

 俺は釈然としない気持ちを抱えたまま、先に行ってしまったレリスとエナの後を小走りで追いかけた。
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