美濃さん

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美濃さん

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 私は丑年生まれ。
 牛の様にのったり動きが遅い私にはぴったり。
 年も明けた雪のある日、天井が、世界が回った。
 今まで感じたことの無い眩暈と耳鳴り、吐き気に身動き一つ出来なかった。
「蝸牛症状ですね」
 脳の中のカタツムリが悪さをしているのだと医者は言う。
 牛と蝸牛では大違いだ。
「どうしたら良いんでしょうか?」
「薬で抑えましょう」
「副作用は無いんですか?」
「副作用は吐き気と眩暈です」
 それは薬の意味があるのか?
 思わず顔に出たのだろう。
 医者が肩を竦めて「実は…」と言う。
「塩を摂取するとカタツムリが溶けます」
「量は?」
「30グラムほど」
「それ、カタツムリも死ぬけれど私も死にませんか?」
「軽く致死量ですね」
 どうしろと言うのか。
「このままだと、どうなりますか?」
「症例としては角が生えてきます」
 般若みたいな?
「闘牛の様に荒々しくなります」
「…」
「更年期障害とも言います」
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