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雪乃
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雪乃の事件から半年、一月になると、三年生は自由登校になった。あれ以来、カエルは多くても道路にはみ出す事はなくなったし、冬に入ってからは冬眠しているのか本格的に見なくなった。カラスにも異常性は無く、やはり冬のためか数は少ない。拓海の難聴もすっかり完治していた。
雪乃が卒業式を待たずに婚家へと引っ越すと聞き、送別会をやろうと言い出したのは副会長の山門先輩だった。
二年の山門先輩は、次期生徒会長でもあって、次の生徒会には準が副会長、蘭が会計に決まっている。全員参加の送別会は、雪乃の担任も参加し、ちょっとした卒業式のようになった。女子が全員泣き、雛子なんて呼吸困難になるのでは無いかと思うくらいに泣いていた。雪乃が幼い頃、神童と呼ばれる天才だったと、拓海が聞いたのはこの時だった。「もう、覚えてないの」と雪乃が笑う。そうして、送別会の翌日、雪乃は家を出た。雪乃の十五の誕生日だった。
雪乃が嫁ぐ先は、隣県の寺であった。車があれば遠い距離ではないが、雪乃はまだ免許を取れる年齢ではない。引っ越しの手筈にと迎えに来てくれたのは、夫になる寺の住職の二十七になる息子だった。
身長が二メートルくらいはあるのではないかという長身に筋肉質な体躯、目が無いのではないかと思う程に細い目、人懐っこい笑顔の穏やかな彼に、雪乃はホッと息をついた。初対面ではない。何度か会っているし、彼なら良いと自分でも思っていたのだ。だが、父は、半年前に発症した夢遊病の事は話してあると言ってはいたが、本当に受け入れてくれるのだろうか?
半年前、雪乃が泥まみれで目が覚めた時、お堂に寝かされていたのは覚えている。だが、その前の記憶では、いつも通りに風呂に入り、日記をつけてから布団に入り、少し読書をしてから寝た。その筈だった。何も、いつもと違う事は無かったように思う。
あの夢のせいだろうか?
自問自答しても答えは出ない。
雪乃は4月頃から、正確には新一年生の入学式前日から、悪夢に悩まされていた。それは自宅敷地内の池に溺れる夢で、あの池から黒いヌラリと濡れた六本指の手が伸び、足首を掴み強い力で池へと引きずり込むのだ。前日に、珍しく大きなイボガエルが池にいた。普通のイボガエルは十五センチ程だが、それより十センチは大きかったように思う。そのカエルがやけに気味悪く感じたのと、三年になり生徒会長になる事へのプレッシャーが夢に現れたのだと思った。だが、それから同じ夢を毎日見た。毎晩、夢で、池に引きずり込まれるのだ。そして、毎日見続けていた夢は、徐々に変化していった。最初の一週間は、掴まれて池へ引きずり込まれた所で目が覚めていた。二週間目は引きずり込まれ、苦しくて踠くが逃れられず。三週間目は踠いて足を掴む手をほどこうとすると、別の手でもう片方の足首を掴まれた。四週間目に両手で雪乃の両足首を掴む巨大なイボガエルと目が合う。悲鳴を上げようとして、水が口に入った。五週間目、イボガエルの手が、膝に、太ももに、腰に、上がってくる。六週間目に入り、イボガエルの口が開き、暗く黒い闇が地獄のように見えた。七週間目、イボガエルの口の中から、何かがせり上がって来るのが見えた。八週間目、イボガエルの口の中から、幼い女の子が現れ、そして、雪乃へと笑いかけてきた。その夢と同時に夢遊病が発症した。結び付けるなと言うのが難しいだろう。
そして、夢の中で女の子が現れて後、また夢が変化した。
自分がその女の子になっているのだ。幼い自分は、同い年くらいの男の子に遊んで欲しくて声をかける。自分が「たっくん」と呼ぶその子は、イトコの同級生に似ていた。名前は確か拓海だ。
初めて拓海を見たのは、入学式の在校生挨拶に立った時だった。壇上の自分に妙な目を向けてきたのだ。新入生が少なく、田舎であるが故に他の人間は皆知り合いな事もあって、拓海は目立っていた。ただ一人、見ず知らずの男の子が驚いたように凝視してくる。胸がざわついた。それは、強烈に印象に残った。それから、イトコの双子と話をする度に拓海の名が出た。特に一年に二人しかいない男同士だからだろう、奏翔の拓海熱は凄かった。拓海の話が出ない日は無かった。だから、つい、目で追った。自分で気付かずに見ていた事も一度や二度ではない。見ていると、もどかしいような苛つくような変な気分だった。同級生にはそれは恋じゃないかと揶揄かわれた。そうなのか、と思わないでもなかったが、夢のカエルから女の子が現れ、夢遊病騒ぎがあり、それが違うと気付いた。恋、ではない。ましてや愛なぞでもない。これは、執着だ。自分の心ではない、その夢の中の女の子が雪乃を汚染しようとしている、そう、確信した。まさに、汚染、だった。呪い、だった。呼吸がしづらい。脳の奥に重くのし掛かる違和感を覚える。雪乃は知らず知らず呼吸が浅くなっていっている事にこの時、やっと気付いた。
夢の中、雪乃ではない幼い女の子が水に足から飛び込む。水草で水面が覆われた、小さな、だけれど深い沼だった。どぽんと音を立てて頭まで水中に沈む。水面から顔を出し「助けて! たっくん!」と叫んだ。叫んで、笑った。何かに足を掴まれた。ズルリと一息に沼に引き摺り込まれ、水中に沈む。濁った水の中、腰から下にはビッシリとカエルが貼り付き、そのカエル達が、胸を覆い、首、顔、頭を、指先までを覆い尽くして行った。足首を、大きな大きなカエルが、掴んでいた。水底に石造りの祠が、あった。祠の中から、何かがこちらを見あげていた。それは、雪乃が、この女の子が、溺れ、絶命し、水底へ落ちてくるのを待っているのだ。喰らう為に。喰らわれた今までの子供たちのように。カエルだと思っていた全身に纏わり付くソレらの顔が、鼻が口が、人のソレに変わる。ただ、目の上が欠損していた。ソレらには、頭が、脳が無かった。脳の無い沢山の赤子が、雪乃の全身にしがみついていた。悲鳴を上げて、目を覚ます。呼吸が、できなかった。息が吸えない。パニックになる雪乃を、母親が部屋に駆けつけ、抱き締めて背をさすった。
雪乃は、幼い頃から日記をつけていた。それは、夢の内容も書き綴るものだった。そして現在まで続いている。雪乃の日記は、何時何分に何をした、というスケジュールを書き連ね、そこにその時に何があったという箇条書きがメインだ。幼い頃の事は忘れたなどとはただの方便だ。忘れる事が出来ればどんなに楽だろうと思う。それは、思い出す都度に感情や幻覚、幻痛すら伴う脳のバグなのだ。骨折した事を思い出せば当時の痛みが鮮やかに甦る。それらを日記に書き綴る事によって、感情をコントロールし記憶を整理していた。毎日毎日同じ内容の夢も、夢専用の日記帳に同じように書き綴る。同じ内容を、繰り返し見せる事によって、まるで夢の中の幼い女の子が雪乃自身であったかのようなそんな勘違いをしそうな程。何冊にも渡って同じ夢の内容の日記が丁寧に丁寧に綺麗な字で綴られる。
日中用の日記に変化があったのは、夢遊病の事があってからすぐだった。端的に言えば、祖父が雪乃の見合い相手を連れて来た。それは、背が高く、二の腕と太ももは雪乃の腰よりも太く、短髪で目の細い穏やかそうな青年だった。彼と会うと、ここ数ヵ月の息苦しさが嘘のように消えた。この人の傍なら呼吸ができる。そして、高い背も筋肉質な体も穏やかな笑顔も、年齢が十も上な事も、逞しく思えた。青年は角流和修と名乗った。隣県の北にある四海寺の跡継ぎだと言う。「お恥ずかしい話ですが、この年まで女人と親しくお付き合いした事はございません。不躾があれば遠慮せず仰ってください」と、まだ中学生の雪乃へ頭を下げる。
「そんなっ、こちらこそ……」
夢遊病になるような、悪夢に毎晩魘されるような、こんな嫁を押し付けられるのだ。申し訳無さに顔が赤くなる。だが、和修は優しかった。その後、月に一度逢う約束をした。逢う度にとりとめの無い会話や美味しいと言う店へと連れ出してくれた。逢った日の日記には、食事の写真も貼った。楽しかったし、急に遊園地や動物園に行きましょうと言い出した時には、友人に進められたのだと聞いて可愛らしくも思った。
何度目かの逢瀬で、婚約指輪だと渡された指輪には玉虫色に輝く宝石が嵌まっているように見えたが、玉虫色の何かの上に透明の石が乗っているのだとすぐに気付く。ぐるりと蛇が指に巻き付くデザインの頭の所に石が嵌まっていた。
「これは、我が家に代々伝わる物で、その玉虫色の物は我が寺のご本尊である龍王様の皮を加工して指輪に仕立てた物だと言われているんです。ただ、古い時代のデザインなので、若い人にはちょっとアレかも知れませんね」
上に乗っているのは水晶で、その地元の川で取れたものらしい。指輪に使われている金属も同じ川で取れた白金を使っているとの事だ。
「お守りと思って、持っていてください」
そう渡された指輪を、ソッと指に嵌めてみる。お互いに寺だからとクリスマスプレゼントは無いと思っていた矢先だった。その晩から、雪乃はあの悪夢を見なくなった。半年以上、毎晩見て毎晩叫んでいたあの悪夢を。脳の奥の重苦しさは、まだある。が、彼の傍に行けば少なくとも呼吸ができる。忙しい年末年始を終え、年始最初の逢瀬で、雪乃は和修の元へ行くのを前倒ししたいと申し出ていた。和修は驚いた様子だったが、それならと雪乃の父母、祖父母へとその足で挨拶へと向かっていた。父母は、雪乃が夜中に泣き叫んで起きなくなった事も、和修と逢った日は表情が明るく穏やかなのもわかっていた。頭を下げる和修へ、父母と祖父母は更に深く頭を下げる。「宜しくお願いします」と。
雪乃が卒業式を待たずに婚家へと引っ越すと聞き、送別会をやろうと言い出したのは副会長の山門先輩だった。
二年の山門先輩は、次期生徒会長でもあって、次の生徒会には準が副会長、蘭が会計に決まっている。全員参加の送別会は、雪乃の担任も参加し、ちょっとした卒業式のようになった。女子が全員泣き、雛子なんて呼吸困難になるのでは無いかと思うくらいに泣いていた。雪乃が幼い頃、神童と呼ばれる天才だったと、拓海が聞いたのはこの時だった。「もう、覚えてないの」と雪乃が笑う。そうして、送別会の翌日、雪乃は家を出た。雪乃の十五の誕生日だった。
雪乃が嫁ぐ先は、隣県の寺であった。車があれば遠い距離ではないが、雪乃はまだ免許を取れる年齢ではない。引っ越しの手筈にと迎えに来てくれたのは、夫になる寺の住職の二十七になる息子だった。
身長が二メートルくらいはあるのではないかという長身に筋肉質な体躯、目が無いのではないかと思う程に細い目、人懐っこい笑顔の穏やかな彼に、雪乃はホッと息をついた。初対面ではない。何度か会っているし、彼なら良いと自分でも思っていたのだ。だが、父は、半年前に発症した夢遊病の事は話してあると言ってはいたが、本当に受け入れてくれるのだろうか?
半年前、雪乃が泥まみれで目が覚めた時、お堂に寝かされていたのは覚えている。だが、その前の記憶では、いつも通りに風呂に入り、日記をつけてから布団に入り、少し読書をしてから寝た。その筈だった。何も、いつもと違う事は無かったように思う。
あの夢のせいだろうか?
自問自答しても答えは出ない。
雪乃は4月頃から、正確には新一年生の入学式前日から、悪夢に悩まされていた。それは自宅敷地内の池に溺れる夢で、あの池から黒いヌラリと濡れた六本指の手が伸び、足首を掴み強い力で池へと引きずり込むのだ。前日に、珍しく大きなイボガエルが池にいた。普通のイボガエルは十五センチ程だが、それより十センチは大きかったように思う。そのカエルがやけに気味悪く感じたのと、三年になり生徒会長になる事へのプレッシャーが夢に現れたのだと思った。だが、それから同じ夢を毎日見た。毎晩、夢で、池に引きずり込まれるのだ。そして、毎日見続けていた夢は、徐々に変化していった。最初の一週間は、掴まれて池へ引きずり込まれた所で目が覚めていた。二週間目は引きずり込まれ、苦しくて踠くが逃れられず。三週間目は踠いて足を掴む手をほどこうとすると、別の手でもう片方の足首を掴まれた。四週間目に両手で雪乃の両足首を掴む巨大なイボガエルと目が合う。悲鳴を上げようとして、水が口に入った。五週間目、イボガエルの手が、膝に、太ももに、腰に、上がってくる。六週間目に入り、イボガエルの口が開き、暗く黒い闇が地獄のように見えた。七週間目、イボガエルの口の中から、何かがせり上がって来るのが見えた。八週間目、イボガエルの口の中から、幼い女の子が現れ、そして、雪乃へと笑いかけてきた。その夢と同時に夢遊病が発症した。結び付けるなと言うのが難しいだろう。
そして、夢の中で女の子が現れて後、また夢が変化した。
自分がその女の子になっているのだ。幼い自分は、同い年くらいの男の子に遊んで欲しくて声をかける。自分が「たっくん」と呼ぶその子は、イトコの同級生に似ていた。名前は確か拓海だ。
初めて拓海を見たのは、入学式の在校生挨拶に立った時だった。壇上の自分に妙な目を向けてきたのだ。新入生が少なく、田舎であるが故に他の人間は皆知り合いな事もあって、拓海は目立っていた。ただ一人、見ず知らずの男の子が驚いたように凝視してくる。胸がざわついた。それは、強烈に印象に残った。それから、イトコの双子と話をする度に拓海の名が出た。特に一年に二人しかいない男同士だからだろう、奏翔の拓海熱は凄かった。拓海の話が出ない日は無かった。だから、つい、目で追った。自分で気付かずに見ていた事も一度や二度ではない。見ていると、もどかしいような苛つくような変な気分だった。同級生にはそれは恋じゃないかと揶揄かわれた。そうなのか、と思わないでもなかったが、夢のカエルから女の子が現れ、夢遊病騒ぎがあり、それが違うと気付いた。恋、ではない。ましてや愛なぞでもない。これは、執着だ。自分の心ではない、その夢の中の女の子が雪乃を汚染しようとしている、そう、確信した。まさに、汚染、だった。呪い、だった。呼吸がしづらい。脳の奥に重くのし掛かる違和感を覚える。雪乃は知らず知らず呼吸が浅くなっていっている事にこの時、やっと気付いた。
夢の中、雪乃ではない幼い女の子が水に足から飛び込む。水草で水面が覆われた、小さな、だけれど深い沼だった。どぽんと音を立てて頭まで水中に沈む。水面から顔を出し「助けて! たっくん!」と叫んだ。叫んで、笑った。何かに足を掴まれた。ズルリと一息に沼に引き摺り込まれ、水中に沈む。濁った水の中、腰から下にはビッシリとカエルが貼り付き、そのカエル達が、胸を覆い、首、顔、頭を、指先までを覆い尽くして行った。足首を、大きな大きなカエルが、掴んでいた。水底に石造りの祠が、あった。祠の中から、何かがこちらを見あげていた。それは、雪乃が、この女の子が、溺れ、絶命し、水底へ落ちてくるのを待っているのだ。喰らう為に。喰らわれた今までの子供たちのように。カエルだと思っていた全身に纏わり付くソレらの顔が、鼻が口が、人のソレに変わる。ただ、目の上が欠損していた。ソレらには、頭が、脳が無かった。脳の無い沢山の赤子が、雪乃の全身にしがみついていた。悲鳴を上げて、目を覚ます。呼吸が、できなかった。息が吸えない。パニックになる雪乃を、母親が部屋に駆けつけ、抱き締めて背をさすった。
雪乃は、幼い頃から日記をつけていた。それは、夢の内容も書き綴るものだった。そして現在まで続いている。雪乃の日記は、何時何分に何をした、というスケジュールを書き連ね、そこにその時に何があったという箇条書きがメインだ。幼い頃の事は忘れたなどとはただの方便だ。忘れる事が出来ればどんなに楽だろうと思う。それは、思い出す都度に感情や幻覚、幻痛すら伴う脳のバグなのだ。骨折した事を思い出せば当時の痛みが鮮やかに甦る。それらを日記に書き綴る事によって、感情をコントロールし記憶を整理していた。毎日毎日同じ内容の夢も、夢専用の日記帳に同じように書き綴る。同じ内容を、繰り返し見せる事によって、まるで夢の中の幼い女の子が雪乃自身であったかのようなそんな勘違いをしそうな程。何冊にも渡って同じ夢の内容の日記が丁寧に丁寧に綺麗な字で綴られる。
日中用の日記に変化があったのは、夢遊病の事があってからすぐだった。端的に言えば、祖父が雪乃の見合い相手を連れて来た。それは、背が高く、二の腕と太ももは雪乃の腰よりも太く、短髪で目の細い穏やかそうな青年だった。彼と会うと、ここ数ヵ月の息苦しさが嘘のように消えた。この人の傍なら呼吸ができる。そして、高い背も筋肉質な体も穏やかな笑顔も、年齢が十も上な事も、逞しく思えた。青年は角流和修と名乗った。隣県の北にある四海寺の跡継ぎだと言う。「お恥ずかしい話ですが、この年まで女人と親しくお付き合いした事はございません。不躾があれば遠慮せず仰ってください」と、まだ中学生の雪乃へ頭を下げる。
「そんなっ、こちらこそ……」
夢遊病になるような、悪夢に毎晩魘されるような、こんな嫁を押し付けられるのだ。申し訳無さに顔が赤くなる。だが、和修は優しかった。その後、月に一度逢う約束をした。逢う度にとりとめの無い会話や美味しいと言う店へと連れ出してくれた。逢った日の日記には、食事の写真も貼った。楽しかったし、急に遊園地や動物園に行きましょうと言い出した時には、友人に進められたのだと聞いて可愛らしくも思った。
何度目かの逢瀬で、婚約指輪だと渡された指輪には玉虫色に輝く宝石が嵌まっているように見えたが、玉虫色の何かの上に透明の石が乗っているのだとすぐに気付く。ぐるりと蛇が指に巻き付くデザインの頭の所に石が嵌まっていた。
「これは、我が家に代々伝わる物で、その玉虫色の物は我が寺のご本尊である龍王様の皮を加工して指輪に仕立てた物だと言われているんです。ただ、古い時代のデザインなので、若い人にはちょっとアレかも知れませんね」
上に乗っているのは水晶で、その地元の川で取れたものらしい。指輪に使われている金属も同じ川で取れた白金を使っているとの事だ。
「お守りと思って、持っていてください」
そう渡された指輪を、ソッと指に嵌めてみる。お互いに寺だからとクリスマスプレゼントは無いと思っていた矢先だった。その晩から、雪乃はあの悪夢を見なくなった。半年以上、毎晩見て毎晩叫んでいたあの悪夢を。脳の奥の重苦しさは、まだある。が、彼の傍に行けば少なくとも呼吸ができる。忙しい年末年始を終え、年始最初の逢瀬で、雪乃は和修の元へ行くのを前倒ししたいと申し出ていた。和修は驚いた様子だったが、それならと雪乃の父母、祖父母へとその足で挨拶へと向かっていた。父母は、雪乃が夜中に泣き叫んで起きなくなった事も、和修と逢った日は表情が明るく穏やかなのもわかっていた。頭を下げる和修へ、父母と祖父母は更に深く頭を下げる。「宜しくお願いします」と。
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