営業マン

蜜唇

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全国一位

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美咲生命保険株式会社首都圏営業本部営業課。

白井梓の所属している会社だ。
白井はこの会社で、トップの成績を誇る。
全国に何千といる営業職員のトップなのだ。
入社から2年。至上最年少でトップにまで上り詰め、もらった表彰の数は数えきれないほど。
年収は管理職であるマネージャーをも凌ぐ。

梓はそんな自分に誇りを感じていた。

「全国第一位 白井 梓」
梓は、名を呼ばれて自席を立った。
国立劇場の檀上に上っていく。
スポットライトに照らされて、広井劇場内を見回す。

てっぺんだ。

と、思った。
私は今、てっぺんにいる。

最高の瞬間だった。この瞬間のために、頑張ってきたのだと思った。
辛かった日々を思い出すと涙が出そうになる。

お金じゃない。
もちろん、もらえるお金も大事。
だけど、それ以上に誇らしいものは、この自分。
今、全国のトップに立っているという、自分。

私は、一番なのだ。
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