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Ⅲ◆23歳・夏至 ー邂逅ー
3.期待と動揺へ振りつけた雨雫
しおりを挟む「雨が、止むまでの間だけ…でも………。
ここにずっといたって、仕方ないだろ?
ーーーーーー嫌?」
速生は恐る恐るたずねて、後悔した。
(俺、バカじゃん…。
嫌?って…そんなこと聞いてもし、嫌。って言われたらどうするんだよ?
朝まで、ファミレスとか……時間、どこかで潰すくらいしか思いつかない。
けど近くに見当たらないし…第一こんなに酔ってふらふらな夕人にそんな危ない事、させられない。
ーーーどうしよう?)
「ーーーーーー行く」
「…………えっ?」
「速生の家、行く。
ーーーー雨……とりあえず止むまで………」
夕人は俯いたまま小さく答えた。
また降り頻る雨の中をどうにか歩いて5分ほどで、速生のアパートへ着いた。
ーーーカチャカチャ、ガチャッ…
速生は玄関の鍵を開けてドアを開くと、夕人の肩に手を添えて、「ほら、こっち。靴脱いで」と室内へ誘導する。
少し歩いた事でまたさらに酔いが回ったのか、夕人は駅で話した時よりも更にふらふらと覚束ない足取りで、雨で濡れてしまったスニーカーを脱ぎ捨てる。
「んん……。お邪魔、しまぁす……」
廊下をたどたどしく歩き、1DKの速生のアパートの部屋の奥へ。
ベッドの上に、ドサッと腰を下ろした。
「はぁ……。
夕人、ほら。濡れてる頭拭いとかないと、風邪ひくから…」
そう言って速生はベランダ近くに畳んで置いていた洗濯の終わったタオルを手渡す。
「ん……?うん。……あ、ごめんーー…
ちょっと、眠い、いや、
あ、っ……やばい、くらくらする……」
それだけ言って夕人は、とさっ…と速生のベッドに横たわった。
すぐさま、すぅすぅと寝息が聞こえてくる。
「…………酒弱いくせに。無理して飲むから」
速生は小さく呟くと、立ち上がり夕人の身体に掛け布団を掛けて少しだけ顔を覗く。
「ーーーー………………」
ーーーふぅ、とため息をつくと、スーツの上着を脱ぎハンガーに掛けて、脱衣所へと向かった。
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