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23歳・立秋 ー混ざり合い、重なるー
2.大ピンチ瀬戸教授の願ってもないドタキャン
しおりを挟むその10分前ーーー…
ーーーやばい、遅刻するっ…!
とりあえず駅まで走って、電車乗ってやばかったら瀬戸教授に電話……。
急ぎ足で駅へ向かう夕人。
『RRRRR……RRRRR…』
ズボンのポケットに入れたスマホから着信を知らせるコール音に、夕人は立ち止まった。
スマホ画面には“瀬戸教授”とある。
ーーーえっ、瀬戸教授から?なんだろう?
俺、もしかして時間間違えてるとか!?
慌てて通話ボタンを指でタップする。
「はいっ!もしもし、相模です」
『もしもし……相模くん…。あの、ちょっといま電話、いいかな?』
なんだか電話口の向こうの瀬戸教授の様子が微妙におかしい。
いつも落ち着いた低音で穏やかな話ぶりの口調が、今日はどこか、引き攣ってるように聞こえる。
「大丈夫です、あの、どうされました?僕、もしかして時間間違えてたりーー……」
『い、いや……違うんだ。
実はね、すまない、私がいまちょっと…その、今日の約束はキャンセルさせてもらえないかと……っ!
あいたたたたた!ちょっと、痛いよ!』
『あなた!痛いんなら動かないでくださいっほら湿布ずれちゃったじゃないの!もうギックリ腰なんて情けないーーー…整形外科の先生に電話しなきゃーーー…』
通話口の向こうで繰り広げられる、瀬戸教授と奥さんらしき女性のやり取りに、夕人はすぐに状況を察した。
ーーーギックリ腰……?
瀬戸教授、このタイミングで?
ま、マジですか………
『さ、相模くん。本当にすまない……
ちょっとついさっき、重い物を持った拍子に腰をやってしまって……動けそうにないから、今日の打ち合わせはとりあえず延期ということにしてもらっても……
……あいたたた!だから、痛いってばキヨちゃん!』
『釣りばかり行っていつも中腰になってるからギックリ腰になんてなるんですよ!ほら、情けないこと言わないできちんと寝ててくださいよっ…ーー』
ーーー会話,丸聞こえなんですけど…。
返事しづらい状況…。
「あ、あの……打ち合わせ、延期で大丈夫ですので。
教授、お大事に……」
瀬戸教授からの相槌を待たず、夕人は通話終了のボタンをタップした。
ーーそれどころじゃなさそうだ、と空気を読んで。
「はぁ………。」
まさかの瀬戸教授からのドタキャンに、夕人は焦りでいっぱいだった胸を撫で下ろした。
ーーー時間,できた。
そして、ついさっき。去り際の速生のとても寂しそうな顔を思い浮かべる。
ーーー速生のところに戻れる。
やった、と嬉しくなりつい顔がにやけてしまう。
今からならまだ一緒に食事も出来そうだ。
昼食のつもりが夕食に持ち越しになってしまったけどーー…
せっかく自分が頑張って作った力作の料理を、速生と一緒に食べて、感想もちゃんと聞かないと。
駅までの道のりを半分ほど歩いてしまったが、すぐに引き返して、速生のアパートへと戻る。
ーーーまさか、こんなすぐ戻ってくるとは思わないだろうな、速生。
ちょっと、驚かしてやろうかな……
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