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23歳・立秋 ー混ざり合い、重なるー
2.▽-2-
しおりを挟む「はぁ、っ…ほら、脱げよ」
「ーーー……っ!?」
キスの最中、いつの間にかすべて外されたシャツのボタン。
半ば無理やり襟下を掴み剥ぎ取られ、中に着ている肌着が速生の右手によって荒々しく捲り上げられた。
「………や…っ……………」
リビングの電灯に明々と照らされる部屋の中。
胸から下すべてが露わにされ、恥ずかしさのあまり夕人は両手で顔を隠す。
「……っ、……ぅっ………っいやだ…っ…」
頬には瞳から堪えきれず溢れてきた涙が伝い、シーツに落ちて小さなしみをつくる。
その夕人の姿を見て、もっと……ひどいことをしてやりたい、なんて思ってしまう。
「顔、隠すなって。
見せてよ、ほら……手どけて。
キスできないだろ…」
「ーーーやっ、…痛っ…!…」
夕人の身体を跨いで馬乗りになり、両手首を掴んでベッドに押さえつけた。グッと強く力を込めて、逃がさない、と伝わるように。
「……っ、なんでっ……こんな、…っ
っ…ひどい、…速生……っ……」
「何言ってんだよ、夕人から誘ったんだろ?
……こんなことされるなんて、想像できなかった?
ずっと抑えてたのにーー…
……もう限界だよ」
そう言ってすぐに口づける。
「ーーっん、っ!っ……!ぅーーっ、…」
これまでの、”できるだけ優しくしないと”と、少しでも配慮する余裕のあった自分は一体どこへいってしまったのだろう。
もう理性など、とうに失ってしまっている。
か細い腕を押さえ付ける手にはどんどん力が入る。
夕人の苦しそうに唾液と息を漏らすその口は解放して欲しいのか、それとも自分のことを求めているのか、わからなくなる。
どうして俺のことをこんなに惑わすのだろう?
と、まだ抵抗を感じるその手首に、腹立たしさを感じてしまう。
「はぁ……はぁ…っ…。
ああ、もう……ーーー。」
速生はワイシャツのボタンを片手で上から外し、ネクタイをグイッと緩める。
「目、開けて…こっち見てよ。
俺の顔ちゃんと見て、”好き”って言えよ、ほら」
自分が別人のように思えてくる。
まるで頭の中が何かに侵されてしまったように、今はとにかく夕人を、自分だけのものだと誇張して、独占して、支配したくて。
夕人の身体を跨ぎ膝をついたベッドの上、顔をあげて、上から見下ろす。
強く掴んでいた両手を離して、濡れた頬を優しく撫でてやる。
「っ、…好き、……っ…」
「うん……。誰が?
ーーーもっと、ちゃんと」
「好き、は、やみ……が、好き……っ…
……ーー、ん、ひあっ!」
膝で股間をぐりぐり、と押し上げる。
硬くなってしまったものに、当たりそうで当たらないように…太腿の間から、わざとらしく強く。
「ありがとう、俺も好きだよ……。
なぁ、ここ、こんなになっちゃって。
興奮してる?…いやらしい、夕人」
「…っ……ぅっ………」
涙を滲ませて言葉を詰まらせる夕人の顔に、ぞくぞくと湧き上がる欲情にーー…
まだまだ、もっと欲しい。
頭の中はさらに酔いしれる。
「ん、っあ、っ……ぃや…っ!」
透明さを感じる白い薄肌はどんどん赤く染まっていく。
首、肩、鎖骨には無数のキスマークと歯型が痛々しく目立ち、すべて自分の付けた物なのだと自覚してさらに興奮してしまう。
胸の淡く薄桃色の突起に舌を這わせて、舐めまわし、吸い付く。
「は、っあっ……!あっ」
「ここ、ほら…硬いよ、こっちも…。
感じてんの?可愛い、はぁ、っ……」
ぬるぬると唾液で濡らした後にもう片方をきゅ、と摘んでは、少し焦らすようにまわりを指先で撫で回す。
びくん、と大きく身体を震わせて、息を吐くたびに喘ぐ夕人の声はどんどん激しくなる。
「……っぁ、…んん、あっ…!
や、だぁっ…い、っんあっ…」
「気持ちいい?大きい声出して…隣の部屋まで聞こえちゃうぜ?いいの?」
「……っ、…!んぅっ……ーーん、っ…」
首を横に振りながら、目を潤ませて速生を見る夕人の表情には、もう抵抗する様子は感じられなかった。
かといって受け入れて絶えずふりそそぐ速生からの愛撫に応えられるわけでもなく、ただ、何度もびく、びくと全身を震わせては唇を強く噛み締める。
「口、開けて……そんな噛み締めてたら、唇切れちゃうよ?」
突然優しい声で言われ、少し安心したのも束の間…ぬるりと舌で口をこじ開けられ、上唇をがり!っと噛まれる。
「ーーーんぅっ!…ぅっ…んんーっ!」
「はぁ、夕人、はぁっ、好き…。ん、っ…
ほら、舌出して…」
「ふぁ、っ…!ぅあっ……んぅっ!」
口内の唾液を全て奪われるように舌を強く吸われ、息苦しさで喉が詰まりそうで、涙がどんどん溢れてくる。
そんなことお構いなしに、速生はまだまだ、もっと、と求めてひたすら激しく……
まるで獣が小動物を悪戯に追い詰めるかのように、痛みを与えてはまた優しく撫でるような愛撫を繰り返す。
ーーー痛い……身体中、ヒリヒリ、じんじんする……
どこが痛いんだろう…もう、わからない……
速生のサディスティックな行為はどんどんエスカレートしていき、初めは痛みと恐怖しか感じなかった身体が、麻痺していくのと同時に湧き上がってくる悦びに近い感覚。
夕人はそんな自分を恥じながら、わからない、どんどんおかしくなっていく自分が怖い、と思う。
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