アイオライト・カンヴァス 【下】【前編完結済み】

オガタカイ

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23歳・白露 ー愛しいひとたちー

3.手紙 -2-

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「………………」


カサ……ッ……



夕人は黙ったまま、封筒の口を開き、少し震えた手で中身を取り出した。

何枚も重なった白い便箋の束。三つ折りにされたそれを開く。


「………………」



ゆっくりと、深呼吸をする。
一度瞬きをしてから、しっかりと瞼を開き、まっすぐ、その文字の羅列へと目を落とした。







ーーーーー…







『相模くん
初めて、手紙を書かせてもらいます。
まず、謝らせてほしい。
本当にごめんなさい。
きみに、一生癒えることのない傷を負わせてしまったこと。
本当に償い切れることではないと、今ならばわかります。
ごめんなさい。』






手紙は謝罪から始まっていた。



その風間の書いた文字は、当時、彼に勉強を教えてもらっていた時の、

自分のノートや、すぐ目の前のホワイトボードに書き込まれていた丁寧な速筆と少しも変わりないんだな、と……

あのときの、中学三年生の頃の記憶が語りかけてくる。





なぜだろう。こんな手紙もの、本当ならば恐ろしくて目にもしたくないはずなのに。




きっと、今でも。
哀しくて、悔しくて、恨めしく思えて仕方がないはずなのに。




ただ脳裏に蘇るのは、駅のホームであの時行われたあの、赤赤しい激動ではなく、
あの頃のーーー…

風間の、優しく、愛しそうに自分を見つめながら、教えを説いていたあの表情だけで。



どうしてなのだろう。



静かに、温度の感じられない冷ややかな心でそう思いながら、読み進める。














『きみは、きっともう、知らないし覚えていないだろうと思うけど
僕は、きみのことをずっと知っていたんだよ。

今だから、正直に話せる。


きみは、僕の命の恩人だった。

きみが12歳だったあのとき。
区立総合病院5階、呼吸器科、入院病棟。

あの時のことを
僕は忘れたことはなかった。』









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