アイオライト・カンヴァス 【下】【前編完結済み】

23歳・白露 ー愛しいひとたちー

誓い

ーーーキィ……

扉の奥へ。

わけもわからず動揺しながら足を少しずつ進めると、低い段差を数段上がった先、そこには、中央の通路を挟み横長に並ぶチャーチチェア。


そして、その席の前に立つ濃紺の装束に包まれたーーー…凛として真っ直ぐに前を見る女性たちの後ろ姿。

すべての席はその二十数名によって埋め尽くされていた。

見たことのない光景に圧倒され、言葉を失う。






夕人が教会の聖堂内へと足を踏み入れた瞬間。

ぶわりと空気が変わったのがわかった。






美しい歌声が始まる。


聖歌隊クワイアの女性たちの口から奏でられるのは、





『讃美歌第112番・もろびとこぞりて』









「………………」



靴の下、夕人は真紅のカーペットの感触に戸惑い足をすすめる事を躊躇う。




………ここは、一体ーーー…？








透き通り重なる音色が聖堂の中へ響き渡り、それは正面に描かれた大きな十字架の下、アーチ部分へまるで吸収されていくかのように。


夕人も、そこへ導かれるようだった。







「ーーー相模夕人さん……ですね」



背後。
弱々しくしゃがれた声が耳にはいる。



夕人が振り向いたそこには、車椅子に乗った老女が静かに微笑んでいた。



ハンドルを握るのは、先ほど自分を道案内していたはずの、あの少女。








「おばあちゃん、相模さん、かっこいいからすぐにわかったよ。
ーーーちゃんとここまでお連れできて良かった。」




少女が可愛らしく、微笑む。




「ええ、そうだねぇ。…本当に、素敵なひと。
ーーー相模さん。
あなたのことは……ずっと、ずっと前から。
たくさん…
聞かせていただいて、存じておりましたよ」



「え…………？」


　


「夕人。」