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第3章 賢者
第36話 ガイコツ岩
しおりを挟む私達は、岩山に向かい林の中を進んでいく、所々に枝が不自然に折れていて、スケルトンが通ったらしい痕跡がある。
そんな、獣道の様な道をしばらく進んでいくと、岩山に辿り着いた。
すると、ムサシは、岩山を登り始めた。
肩に綱を掛けて持ってきていたから、嫌な予感はしていた。
はっきり言って、私は高い所が苦手だ。
近くに寄って、良く見てみると、縄梯子が掛けてある。
上からムサシが叫ぶ。
【お~い。マリア、サキ、マリーナの順で1人ずつ登るんだ。この命縄を身体に巻きつけろ!】
縄梯子の横に、先が輪っかになった縄がある。
私は、輪っかに身体を通して、下を見ないようにゆっくりと1段ずつ登り始めた。
もう、どれくらい登ったのだろう?後どれくらいだろう?
ふと、そんな事を考えた時、私の真横を鳥が通り過ぎる。
思わず、視線を鳥に移すと、眼下に島の全貌が広がっているのが見えた。
その瞬間、驚いた私は、足を踏み外してしまった。
私の身体は宙ぶらりんになる。かろうじて右手だけは、梯子を摑んでいる。
その右手も、外れてしまいそうになった、その時、私に着けられていた綱が引っ張られて、梯子に足を掛けることが出来た。
【大丈夫か?後は目を閉じて、縄を摑んで20数えていろ!俺が引っ張る。】
私は、言われた通りに、ロープを掴むと目を閉じて20数える。
1、2、3、4、あれ?これって、アイツにおぶさって海に潜った時と同じだ。
私は、その時アイツの背中の温もりを思い出していた。
あれ?幾つまで数えたっけ?また、分からなくなった。
【おい、手を伸ばせ!】
突然、近くにムサシの声がした。
目を開けると、ムサシが手を伸ばしていた。
手を伸ばすとムサシが、思いっきり、私を引っ張り上げる。
私は、ムサシの胸に飛び込んで、大声で泣き出してしまった。
ムサシは、黙って私の背中を擦ってくれた。
私が、ムサシの体温を感じていると、下から声がした。
『おじちゃん行くよー。』
ムサシは、慌てて、中々離れようとしない私を離すと、私に掛けてある綱を外し下に降ろした。
【待て待て、命綱をちゃんと着けろ!】
『えー、平気平気。いらないもん。』
【だめだちゃんと着けろ!】
『行くよ、おじちゃん。』
ムサシは命綱をゆっくり、引っ張り上げる。
【登るのが、早すぎだ、命綱が間に合わん。】
そんなやり取りをしている間に、サキは命綱を無視して登り切った。
ムサシはサキの頭を撫でながら、苦笑いをしている。
(先生ー、命綱くださーい。)
【命綱なしで登ってこい!】
こいつ、弟子には厳しいんだ。
結局、マリーナは、命綱なしで登ってきた。
改めて辺りを見渡すと、意外に広く此処で野宿が出来そうなくらいだ。
しないけど。
気持ちも落ち着いたので、四つん這いになって下を覗くと、そんなに高くは無かった。
この高さなら、頭から落ちない限り死ぬ事はない。
そんな事を考えていると、ムサシに抱きついて泣きじゃくっていたのが、急に、恥ずかしくなっていた。
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