執筆者の物語の中

追憶劇場

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『底』ではカミサマであるべきか?(中)

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「カミサマ」
そう呼ばれた修正者は、酷く困惑した。
カミサマの頃とは見た目も身に付けているものも全く違うのに、と…
そんな修正者に人間は笑って言った。
雰囲気が全く変わっていない。と。
何の見返りも求めず受け取らず、ただ他のものの願いを聞いていた"カミサマ"の雰囲気そのままだったと。
カミサマは全能では無かったが、人間に敵意が無いことは容易にわかった。 
例え自分が修正者だったとしても、この人間の前では、私は"カミサマ" なんだ。
自分でも気づかなかった迷いが、修正者の心を蝕んだ。
同時に、こんな物語を書く執筆者の事が理解出来なかった。
修正者は、今まで考えもしなかったことを不思議に思った。
頭を無理やり切り替え、人間に『底』からの出口を作り、そこへ入るよう促した。
人間は、出口に入る直前でカミサマの方へ向き、
最後に一つ、願いを叶えてくれないか
と言った。
こんな物語を執筆者…管理者様が許すはずがない。 
一体なぜ?
『底』の中で、修正者はずっとその事を考え続けたが、『底』から上がるにつれて思考が薄れていった。  
修正者は、またひとつ修正者としての役目をこなしたが、『底』で考えていたことが頭から切り取られたように抜け、それがいつまでたってもしつこく頭から離れなかった。
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