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用事があるの

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「ねえ、今日、遊べる?」
「あ~…ごめんね、今日用事があるの。」
「あの娘ってなんか付き合い悪いよね」
「つれないよね~」
「最近あんま学校も来ないし。付き合いとか、そう言うの分かんないのかな?」
そんな会話が後ろから聞こえてくる。
「…」
私は、いつも皆の誘いを断っている。
でも、私も遊びたくない訳じゃない。
私の家は、いつも忙しい。
子供の私でも、仕事は山ほどある。
「…今日も、用事があるの。」
「あ、そう。じゃ、いいや。」
彼女は、私がそう言うのを分かっていたようにそう言って、何時ものグループに行った。
私は、このクラスに要らないものかもしれない。
「お母さん、私、遊びに行きたいな…」
  お母さんにそう一回言った事がある。
お母さんは迷っていたが、許してくれた。
でも…帰って来た時、お母さんが倒れていた。
お父さんが急いで帰って来て、幸い何も無かった。そしてその時から私は、学校を休みがちになった。
お母さんは何事も無く復帰したが、またいつ倒れるか分からないので、学校は早く帰り、夜遅くまで手伝いをしていた。
朝は早く起きて、遠い学校に行かなきゃけない。そんなこんなで、いつも寝不足だった。
「ふぁ…」
欠伸あくびを噛み殺しながら、今日も家に帰る。
「ただいま…」
「お帰り。ご飯、作っておいたから食べてね。」
「ありがと。」
炊飯も当番制。
「さ…て。」
独り言のように言って、私は仕事を始めた。

「あれ…?」
始めようとしたが、足腰が言うことを聞かず、倒れてしまった。
「早く…行かなきゃ…」
込み上げてくる睡魔を押さえて、ゆっくりと立ち上がった。でも、歩けない。
足を引きずるようにして、お母さん達のところに向かった…
が、その後の記憶が無く、目覚めた所は、ベットの上だった。
「あれ…?」
私は状況を上手く飲み込めず、立ち上がろうとしたが、腕は水を染み込ませた布のように重かった。
「安静にしていてください!」
近くにいた看護婦のような人が言った。
「…ぇ?」 
目が霞んでよく見えない。何回か瞬きしているうちに、周囲の様子が見えてきた。
どうやら過労で倒れたらしい。
「…ぅ…」
一気にお母さんの事が心配になった。
「ごめんなさい…お母さん…」
独り言のように言った言葉に、側に居たお母さんが…
「大丈夫。こちらこそごめんなさい。気付いてあげられなかった。」
そう言いながら、お母さんは私の手を握った。



「もう大丈夫?」
「うん。元気になった。」
数日後、いくらか元気になった私は、また仕事を手伝う事にした。
お母さんは私のことを少し心配してるけど、大丈夫。今度は倒れたりしない。
しっかりやって行くって決めたんだ。
「ごめんなさい。今日、用事があるの。」
だから、もう遊びたいとも思わない。
私は、ただお母さんのために…
「あれ?私、こんなに顔色悪かったっけ?」
久しぶりに鏡を見て、思った。
顔は毎日洗っているけど、鏡をみる暇なんて無かったからね。
痩せぎみの顔に、過労と寝不足で生気を失ったような目の下に、濃い隈が出来ていた。 
「…」
しばらく、そんな私の顔を見た後、私は仕事に戻っていった。
「…早く手伝いしなくちゃ。」
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