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【2020/05 炬火】
《第3週 金曜日 朝》⑧
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…もしかして、国家試験の年に態々リークしてきたということは、先生の親御さんは将来的にこの関係から事件に巻き込まれるなどして医師免許の剥奪につながるおそれも考えての根回しだったんだろうか。
「で、そういう性癖の征谷のために、安斎由美子は部下である事務局長に秘密裏に夜の相手を探すよう依頼した。その当時の事務局長が片岡寿和、当時征谷の相方といわれた二次団体▲▲会会長だ」
ややいかつい風貌ではあるが身なりが整っていて、大きい会社の営業のちょっと偉い立場の人みたいな雰囲気だ。不思議なもので、この世界でもそこそこの立場にある人はあまり「イカニモ」な外見の人間というのは少ない。
「最初は別な子が居たらしいんだが逃げ出したということもあって改めて吟味を重ねた。そして、藤川玲を見つけ出した。面談をし、最初の顔合わせから送迎を担当していたのも片岡だ」
「先生と面識がある方はこの3名ですか。…次のページのこちらの若い方は組関係者じゃないんですか?」
その写真にはライダースを羽織り細身の黒のパンツにラバーソウルという金髪でやや長髪の目付きの鋭いパンクスっぽい青年と、腰までの髪の毛を丁寧に編みこんだ黒いロングワンピース姿の可愛らしい顔立ちの美少女が写っていた。
「それはこの後説明する。ちょうどその、藤川の父母がリークしてきた年である10年前、表向き使えなくなったことに絡んで銃器摘発が進んだ際、上位組織で次期会長の候補として名が上がっていた征谷の代わり、更にその部下である〇〇会系■■組が征谷の組織所持品をすべて請負い、複数名が懲役を受けた。征谷はそれによって無事昇格し、会長の職についた」
「本人とか、その組織じゃなくて、その下全体で責任とったってことですか」
「そうだ…そして、そういうときってのは、上から命令するんじゃなく、下から志願して手を挙げる。自分や自分の組織の価値を引き上げて、上位組織に目をかけてもらうチャンスでもあるからそりゃあもう必死にな。早いもの勝ちだ」
実際には罪のない人間が代わりに収監されたということか。内情を知っていて、普通に逮捕したり収監するものなのか。そんなことあるのか。おれが納得がいかない顔をしているのを見抜いて飯野さんが言う。
「勿論、おかしなことだとは我々もわかっている。しかし、そういうものなんだ、奴らの社会っていうのは」
「でも、そんな競争があるなら、そこで何かしらの内紛になったりするんじゃないですか」
おれの一言に反応して、ニヤリと笑う。
「そうだ、正解だ。こういうとき、必ずそれが面白くなかった人間が複数、それなりの数居る。手挙げが間に合わなかった連中だ。それでこの組織は現在と同じような内紛状態に陥り、結果、他の下位組織から造反者が出た。その中には例の事務局長、片岡も入っていた」
「じゃあ、今回発砲した…脅そうとしたのはその一派、ということですよね」
関係がつかめてきた。おそらく今回の発砲はあくまでも征谷という人に対する威嚇や脅しであって、先生を直接狙っているわけではない。
「そうだ。そして今度、征谷の部下で、代わりに入ってた〇〇会系■■組の組長が出所してくる。名は小角(おづぬ)正文。さっきの金髪のガキの親だ。あのガキは■■組の組長の息子で、通名で母親の姓で徳永文鷹と名乗っているが、本名の姓は小角(おづぬ)のままだ。10代のうちに母親が亡くなってから征谷の家に預けられている。表向きリブラの社員ということになっているが、実際には征谷の護衛をしている」
「で、そういう性癖の征谷のために、安斎由美子は部下である事務局長に秘密裏に夜の相手を探すよう依頼した。その当時の事務局長が片岡寿和、当時征谷の相方といわれた二次団体▲▲会会長だ」
ややいかつい風貌ではあるが身なりが整っていて、大きい会社の営業のちょっと偉い立場の人みたいな雰囲気だ。不思議なもので、この世界でもそこそこの立場にある人はあまり「イカニモ」な外見の人間というのは少ない。
「最初は別な子が居たらしいんだが逃げ出したということもあって改めて吟味を重ねた。そして、藤川玲を見つけ出した。面談をし、最初の顔合わせから送迎を担当していたのも片岡だ」
「先生と面識がある方はこの3名ですか。…次のページのこちらの若い方は組関係者じゃないんですか?」
その写真にはライダースを羽織り細身の黒のパンツにラバーソウルという金髪でやや長髪の目付きの鋭いパンクスっぽい青年と、腰までの髪の毛を丁寧に編みこんだ黒いロングワンピース姿の可愛らしい顔立ちの美少女が写っていた。
「それはこの後説明する。ちょうどその、藤川の父母がリークしてきた年である10年前、表向き使えなくなったことに絡んで銃器摘発が進んだ際、上位組織で次期会長の候補として名が上がっていた征谷の代わり、更にその部下である〇〇会系■■組が征谷の組織所持品をすべて請負い、複数名が懲役を受けた。征谷はそれによって無事昇格し、会長の職についた」
「本人とか、その組織じゃなくて、その下全体で責任とったってことですか」
「そうだ…そして、そういうときってのは、上から命令するんじゃなく、下から志願して手を挙げる。自分や自分の組織の価値を引き上げて、上位組織に目をかけてもらうチャンスでもあるからそりゃあもう必死にな。早いもの勝ちだ」
実際には罪のない人間が代わりに収監されたということか。内情を知っていて、普通に逮捕したり収監するものなのか。そんなことあるのか。おれが納得がいかない顔をしているのを見抜いて飯野さんが言う。
「勿論、おかしなことだとは我々もわかっている。しかし、そういうものなんだ、奴らの社会っていうのは」
「でも、そんな競争があるなら、そこで何かしらの内紛になったりするんじゃないですか」
おれの一言に反応して、ニヤリと笑う。
「そうだ、正解だ。こういうとき、必ずそれが面白くなかった人間が複数、それなりの数居る。手挙げが間に合わなかった連中だ。それでこの組織は現在と同じような内紛状態に陥り、結果、他の下位組織から造反者が出た。その中には例の事務局長、片岡も入っていた」
「じゃあ、今回発砲した…脅そうとしたのはその一派、ということですよね」
関係がつかめてきた。おそらく今回の発砲はあくまでも征谷という人に対する威嚇や脅しであって、先生を直接狙っているわけではない。
「そうだ。そして今度、征谷の部下で、代わりに入ってた〇〇会系■■組の組長が出所してくる。名は小角(おづぬ)正文。さっきの金髪のガキの親だ。あのガキは■■組の組長の息子で、通名で母親の姓で徳永文鷹と名乗っているが、本名の姓は小角(おづぬ)のままだ。10代のうちに母親が亡くなってから征谷の家に預けられている。表向きリブラの社員ということになっているが、実際には征谷の護衛をしている」
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