Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

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【2020/05 不時着】

《第3週 日曜日 夜》⑤ (*)(◆)

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片肘で体を支えたまま顔を近づける。もう一方の手の指の背で頬を撫でて、その指先を口元に持っていくと玲は口に含んだ。舌それ自体が生き物のように指に絡み、生暖かい濡れた感触が指全体を包み込んでいく。一度引き抜いて手首を返して、まだ汚れていない小指を差し入れて上顎の凹凸を擽ると少し仰け反って声を漏らして、口中に溜まっていたものを飲み込んだ。
存分に濡れた指を玲の脚の間から奥に滑り込ませて、使い慣れ随分前からスリット状に変化している窄まりの襞をなぞる。爪で傷をつけないよう注意深く指を埋めていくと指先に当たるものがあった。まあ、勿論そういう部分に手を突っ込んでるんだから、そういうこともある。仕方がない。
でも、それが玲だと話は少し変わってくる。正直驚いた。最近何か食べていた、そして少なくとも昨晩から今日にかけてはセックスしていないという証拠だ。昨夜はあのおっきい子犬みたいな顔してたあの子と居たはずなのに何もしてないとか、玲の性格的にそんな事あるか?今度から一緒に暮らすってのはあくまで同居人としてで、そういう意味じゃないのか。どっちにしろ興味深くはある。
指を引き抜き、胸ポケットに挿してあったチーフを引き出して拭って、ついでに一旦身を起こしてジャケットは脱いだ。被せがある方の内ポケットのボタンを外し中からコンドームを出して封を切り、自分のものに添えて巻き下ろす。潤滑剤的なものは持ち合わせがないので、口中で唾液を溜めて先端に垂らし、馴染ませてから押し当てた。
改めて玲に覆いかぶさり体重をかけていくと、手を伸ばしておれの首から腕を回し、引き寄せられた。耳元でゆっくり息を吐くのとともに、押し当てていたものを迎え入れて口が開き、温かい中に引き込まれていく。中で期待に震え膨らみを増した器官が誘い込まれた先端を囚え、咥え込む。さっき指先があたったものに突き当たるも、そのまま構わずゆっくり押し込んでいく。それは体温より温かく、熾火のように熱を持っていた。
中を圧し開き侵入される感触に、過敏になっている膨らみの擦りあげる感触に玲の体は跳ね、内部がひくひくと震える。おれの体にしがみついて、小さく甘えた声で鳴いた。中で揺するとより深くまで求めるように、脚を上げて絡めとるようにおれの体を引き寄せ、腰を反らせて身をくねらせた。
その脚を押し上げておれは肩に載せて、玲の体を折り畳むようにして抑え込み、上から打ち付けるように腰を落とし、突き挿れた。押し出されるように苦しげな声がするも、抽挿を繰り返すたびそれが艶を含んだ喘ぎに変わっていく。自分の陶酔や欲深さや、その淫靡さは隠さず行為に誘い込もうとする反面、その最中、大袈裟には声を上げず堪えきれぬ様子を見せる慎ましさがたまらない。
言葉も交わさず体を合わせ、その感覚に集中し、快楽を味わっていると、本能的多幸感がダイレクトに脳に突き刺さってくる。だが、おれが抱いているのは、玲なのかアキくんなのか、どっちなのかわからなくなってくる。幾度も口づけを交わしながら交わるうち、言い知れぬ不安と焦りが湧き上がってくる。でもそれが他の関係からは得られないどうしようもない興奮を呼び起こす。
深層にあるアキくんの幻想に付き合ってはいても、おれが抱いているのは玲のはずなのに。お父さんの代わりじゃなくて、おれはおれで、おれ個人が愛してるのは玲なのに。なんでこんなふうにしか関係できないのか。
「玲、顔見てみ、誰かわかるか?」
唇を離し、夢見るような蕩けた表情の玲に問いかける。
玲は少し目を細めてうっすら微笑むと、ゆっくり微かな声で「すがさん」とおれの名前を呼んだ。
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