Over Rewrite Living Dead

きさらぎ冬青

文字の大きさ
394 / 454
【2020/05 葬列】

《第4週 土曜日 朝》②

しおりを挟む
長谷のIDの画面にある通話ボタンをタップすると、数回の呼び出しで応答した。
「あれ?先生、おはようございます」
「おはよ。今日休みなんだって?引越一日で終る?」
「あ、今日は最低限必要なものだけ運ぶので大丈夫です。4勤2休の予定が今週結局例の捜索があって5連勤になっちゃったんで今日明日休みなんです。やっぱ捜査関係は決まった休みってもらえる感じじゃないですね。実際うちの父親も忙しかったですから覚悟はしてましたけど。飯野さんも普段は出払ってることが多いですしあんま休みもとってなくて帰ってないみたいです」
そういうものなのか。
まあ、おれも学校の仕事なくても、時間あればどこに居ても何かしらちょこちょこ仕事してるから休みという休みは特にないようなもんだけど。でも、今は教員としての仕事休止中だし、仕掛かってる研究とか書き物はないし、暇っちゃ暇なほうか。こういう検死や解剖の実務とそこに付随する手続きで出突っ張りになってることはしょっちゅうあることじゃないし。肩書ついてからはせいぜい年1だ。
長谷は若い割にそれなりの階級持ってるけど、鑑識としちゃ一年生のぴよちゃんだから何でもやらされるだろうし覚えることも多いし、あんな事が起きたせいで忙しいだろうな今は。
直人さんとこのいざこざのせいで忙しいと思うとなんか申し訳ないな。おれがそんなこと思ってもしょうがないんだけど。かと言って捜査の進捗とかは守秘義務あるし訊けないよな。
「月の変わり目でちょうど週明けからシフト勤務なのでこの土日休みで最低限必要なものだけでも引っ越しやっちゃいます。あと箱詰めだけしといて、最悪契約切れるまでになんとかすればいいですし」
「更新月以外で解約したらお金かかるんだっけ、でもそれまで家賃払い続けるのも無駄じゃない?早くやっつけちゃったほういいと思うけど」
そう言うと長谷はちょっと考えてから「でも、できるだけ今の部屋に自分一人で近づくのやめておきたいなと思って…」とすこしトーンを落として言った。まあ、それはそうか。
「残りの荷物運ぶの、安く済まそうとしないで多少かかっても丸投げできる業者に頼みなよ。てかさあ、長谷はやっぱおれのこと好きなの?付き合いたい?」
おれが急に全然関係ないこと振るから、長谷は言語として記述不可能な変な声を出した。しかもそういう、誰かに告白するという経験がないからか戸惑ってる。
おれだって肉体関係持つ相手にいちいちそんな打診したことないし、改まって訊かれたら多分困るし当たり前か。
「好き、なんだと思います。もっとうまくいえないけど、付き合ってほしいです、付き合ってくださいって言ったら、先生困りますか…」
「いいよ。でも、おれ、今後も他の男とは寝ないとは限らないし、おれ自身の気持ちも何も保証できないよ」
率直に言うと「前も言ったけど、先生に必要なんだったらそれはいいんです」と長谷が返す。おれはこれから、それに報いてやらなきゃいけないんだなあと思う反面、そのためにどうしたらいいのかがわからない。
「わかった。努力はするよ」
とりあえずそう言ってから仕事に行く準備をすることと、くれぐれも怪我しないよう気をつけて作業するように伝えて通話を切った。
それから、昨日返信してなかったのでお母さんのメッセージに返信する。
「ハルくんのときとは違って、ハルくん以外の他の人との関係は切れると思うけど、ハルくんは切りようがなくない?それはどうしたらいいの?」
送って暫くすると回答が送られてきた。
「ハルくんはアキくんのことはある程度諦めてるけど、アキくんに甘えられたらそれでもハルくんは断れないんだから、アキくんがけじめつけなきゃダメ」
じゃあおれは今後、ハルくんにどう関わればいいの?どうしよう、なんかよくわかんない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...