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【2020/5 in nest】
《第5週 火曜日 夜》⑦
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自分に対して行われた行為が何かはその時はハッキリとはわからなかったけど、只々性器である以前に排泄器官であるものと、そこから分泌された排泄物同様のもので汚されたということだけはわかった。
終わって部屋にひとり残されてから体に力が入らずへたり込んだ。暫く震えが止まらなかった。心臓が速く強く拍動して、体は冷えているのにジワジワと汗が出た。首から上が変に熱くなって、酷い吐き気が襲ってくる。
何度も乾嘔して、そこで初めて涙が溢れ出てきて泣いた。声を殺し、嗚咽を押し潰すように蹲って泣いた。扉の向こうでは、ついさっきまで自分を蹂躙していた連中が自分の母親と談笑しているのが聞こえた。
母親はおれを浸礼で祝福を受けたことを感謝し、奴らはおれのことを「実に立派だ、素晴らしかった」と褒め称える。
「それは何に対してだ!」と叫んで部屋を飛び出して殴りかかりたい衝動が湧き上がりながらも、屈辱と恐怖と悲しみで頭と心がグシャグシャで動くことができなかった。人の気配が遠ざかるまで。
涙で灼けてヒリつく顔を手で拭い、その手をこの部屋に来るとき着せられていたローブで拭った。用意されていた制服のような取り合わせの衣装に着替え、始末に困ったので畳んだタオル類やローブを手に廊下に出た。
誰もいなくなったと思っていたのに、あの中に混じっていた地域の集会の管理者が一人残っておれを待っていたのを目にして息ができなくなった。
何事もなかったようにいつも見る柔和な表情で微笑んで、近づいてきて「これは片付けておきます。皆さん待ってますよ」と言い、固まっているおれの手から重なったタオル類を引き取る。
そして、身を屈めて耳元で囁くように付け加えた。
「今日のことはまた改めてお教えしますからね」
見上げるとそこには、あの時と同じの、抵抗するにできない存在を支配しているということに興奮し酔い痴れている顔があった。体から血の気が引く。
この人は毎週末の地域の集会で、それだけではなく預けられているところでも毎日のように顔を合わせている人だ。「また」ということは、そういうことだ。これから毎日のように、そういった目に遭いかねない。
おれは廊下を駈けて祝いの席が設けられている広間に向かった。
テーブルには神の血肉に見立てたパンやワインが列席者分用意されている。既に席についていた母親に駆け寄っておれは腕を引いて揺すった。
「お母さん、帰ろう?この人たち変だよ!」
「何言ってるの?変ってどういうふうに?」
赤銅色の髪を揺らして、少し困った顔で顔を傾げて母親は尋ねたが、その行為をした連中が目の前にいる状態では何も話せない。
「帰ったら話すから、だから、帰ろうよ」
「ダメよ、あとはこれで終わりなんだからホラ座って」
立ち上がっておれを強引に抱きかかえて座らすと、向かいに丁度戻ってきた地域の集会の管理者が座って、おれの顔を見ていつもの穏やかな顔で微笑みかけた。
司祭や役員、会員同士の扶助組合の役員、母親の講師仲間、婦人会や青年部や長老を代表して呼ばれた来賓、おれを襲ったのはそういう人たちだった。
子供のおれが言ったところで、認めるわけはない。母親だっておそらくそういう人らが教えに背くようなことをするとは夢にも思ってはいない。
絶望感で視界が暗くなり、周りの音は壊れたスピーカーを通したように割れて、膜を隔てているかのようにくぐもって聞こえた。その聖餐の席をどうやり過ごしたのかは忘れた。
その後帰ったあと母親に改めて訊かれたが、あの出来事は話せなかった。話すだけの気力はもう残っていなかった。
父親もその日は通し勤務で帰ってこなかったので、話すことができなかった。
終わって部屋にひとり残されてから体に力が入らずへたり込んだ。暫く震えが止まらなかった。心臓が速く強く拍動して、体は冷えているのにジワジワと汗が出た。首から上が変に熱くなって、酷い吐き気が襲ってくる。
何度も乾嘔して、そこで初めて涙が溢れ出てきて泣いた。声を殺し、嗚咽を押し潰すように蹲って泣いた。扉の向こうでは、ついさっきまで自分を蹂躙していた連中が自分の母親と談笑しているのが聞こえた。
母親はおれを浸礼で祝福を受けたことを感謝し、奴らはおれのことを「実に立派だ、素晴らしかった」と褒め称える。
「それは何に対してだ!」と叫んで部屋を飛び出して殴りかかりたい衝動が湧き上がりながらも、屈辱と恐怖と悲しみで頭と心がグシャグシャで動くことができなかった。人の気配が遠ざかるまで。
涙で灼けてヒリつく顔を手で拭い、その手をこの部屋に来るとき着せられていたローブで拭った。用意されていた制服のような取り合わせの衣装に着替え、始末に困ったので畳んだタオル類やローブを手に廊下に出た。
誰もいなくなったと思っていたのに、あの中に混じっていた地域の集会の管理者が一人残っておれを待っていたのを目にして息ができなくなった。
何事もなかったようにいつも見る柔和な表情で微笑んで、近づいてきて「これは片付けておきます。皆さん待ってますよ」と言い、固まっているおれの手から重なったタオル類を引き取る。
そして、身を屈めて耳元で囁くように付け加えた。
「今日のことはまた改めてお教えしますからね」
見上げるとそこには、あの時と同じの、抵抗するにできない存在を支配しているということに興奮し酔い痴れている顔があった。体から血の気が引く。
この人は毎週末の地域の集会で、それだけではなく預けられているところでも毎日のように顔を合わせている人だ。「また」ということは、そういうことだ。これから毎日のように、そういった目に遭いかねない。
おれは廊下を駈けて祝いの席が設けられている広間に向かった。
テーブルには神の血肉に見立てたパンやワインが列席者分用意されている。既に席についていた母親に駆け寄っておれは腕を引いて揺すった。
「お母さん、帰ろう?この人たち変だよ!」
「何言ってるの?変ってどういうふうに?」
赤銅色の髪を揺らして、少し困った顔で顔を傾げて母親は尋ねたが、その行為をした連中が目の前にいる状態では何も話せない。
「帰ったら話すから、だから、帰ろうよ」
「ダメよ、あとはこれで終わりなんだからホラ座って」
立ち上がっておれを強引に抱きかかえて座らすと、向かいに丁度戻ってきた地域の集会の管理者が座って、おれの顔を見ていつもの穏やかな顔で微笑みかけた。
司祭や役員、会員同士の扶助組合の役員、母親の講師仲間、婦人会や青年部や長老を代表して呼ばれた来賓、おれを襲ったのはそういう人たちだった。
子供のおれが言ったところで、認めるわけはない。母親だっておそらくそういう人らが教えに背くようなことをするとは夢にも思ってはいない。
絶望感で視界が暗くなり、周りの音は壊れたスピーカーを通したように割れて、膜を隔てているかのようにくぐもって聞こえた。その聖餐の席をどうやり過ごしたのかは忘れた。
その後帰ったあと母親に改めて訊かれたが、あの出来事は話せなかった。話すだけの気力はもう残っていなかった。
父親もその日は通し勤務で帰ってこなかったので、話すことができなかった。
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