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【聖女のベール】地味な薬草係の正体は、戦場を駆ける「伝説の聖女」であった
第三話 侮辱と勇気ある誓い
同盟国も参加する大国ゼーレ最大の建国記念日のパーティーが開かれている。
豪華絢爛な会場の中央で、第一王子ゼクスは上機嫌に酒を煽りながら、周囲の貴族たちに大声で吹聴していた。
「皆、聞け! 私はこの国の王として即位する際、最高の宝を隣に置くことに決めた!」
貴族たちの間にざわめきが広がる中、ゼクスはさらに声を張り上げる。
「私の妃となるのは、あの『ベールの聖女』以外にあり得ん! 伝説の乙女こそ、この俺にふさわしい! 今頃、彼女も俺からの招待を心待ちにしているはずだぞ。ははは!」
自尊心に酔いしれるゼクスの傍らには、婚約破棄されたはずのリーネが、いたたまれない様子で立たされていた。
嘲笑うような視線が彼女に突き刺さる。
そこでゼクスは、同盟国でありながら国力の低いリリア王国の王子、カイルを見つけて手招きした。
「おい、カイル! 小国の王子よ、こっちへ来い! お前にとっておきの『お下がり』をやるぞ」
カイルが冷ややかな視線を向けるのも気にせず、ゼクスはリーネの腕を乱暴に掴んで、彼の前へ突き飛ばした。
「同盟の証だ。この『泥臭い女』をきみに進呈しよう。我がゼーレ国の王妃には到底ふさわしくないゴミだが、掃除や雑用くらいには使えるだろう。きみの国にはちょうどいいだろう? せいぜい大事にするがいい、ギャハハハ!」
大国の王子のあまりにも品性を欠いた振る舞いに、会場は静まり返った。 貴族たちはゼクスの傲慢さに引きながらも、同時に「聖女を娶る」と豪語する彼に追従の拍手を送る。
突き飛ばされ、床に膝をつきそうになったリーネ。しかし、その体は冷たい床に触れる前に、温かく力強い腕によって抱きとめられた。
カイルは、よろめいたリーネを壊れやすい蝶や花を扱うように優しく、そして大切に抱きしめた。 そして、圧倒的な国力の差を背景に勝ち誇るゼクスを、真っ向から軽蔑の目で見据えた。
「……ゼクス王子。貴殿のその『素晴らしい提案』、私が謹んでお受けしよう」
カイルの声は静かだが、会場の隅々まで響き渡るような、鋼の強さを持っていた。彼はゼクスに背を向け、会場のど真ん中でリーネの前に静かに跪いた。
「カイル様……? 何を……?」
震える声で問うリーネに対し、カイルは彼女の手を愛しそうに取り、その瞳を真っ直ぐに見つめた。
「リーネ様。貴女をゴミなどと呼ぶ者は、真の至宝を見る目がない愚か者だけです。不実な男に尽くし、自分をすり減らす日々は、今日この瞬間で終わりです」
カイルは、リーネの手の甲に誓いの口づけを落とした。
「私の国は小さく、この国のような贅沢はさせられないかもしれない。だが、貴女を心から敬い、慈しむことにかけては、誰にも負けない。……リーネ様。どうか、何も言わずに私と共に来てください」
リーネの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。自分を「装飾品」としてしか見ない男に踏みにじられてきた彼女にとって、初めて向けられた真実の誠意だった。
「……はい。喜んで、お供いたします」
驚きと感動に震える手で、リーネはカイルの手をしっかりと握り返した。それは、彼女が自らの意志で「誠意を捧げるべき相手」を選び取った、運命の瞬間であった。
豪華絢爛な会場の中央で、第一王子ゼクスは上機嫌に酒を煽りながら、周囲の貴族たちに大声で吹聴していた。
「皆、聞け! 私はこの国の王として即位する際、最高の宝を隣に置くことに決めた!」
貴族たちの間にざわめきが広がる中、ゼクスはさらに声を張り上げる。
「私の妃となるのは、あの『ベールの聖女』以外にあり得ん! 伝説の乙女こそ、この俺にふさわしい! 今頃、彼女も俺からの招待を心待ちにしているはずだぞ。ははは!」
自尊心に酔いしれるゼクスの傍らには、婚約破棄されたはずのリーネが、いたたまれない様子で立たされていた。
嘲笑うような視線が彼女に突き刺さる。
そこでゼクスは、同盟国でありながら国力の低いリリア王国の王子、カイルを見つけて手招きした。
「おい、カイル! 小国の王子よ、こっちへ来い! お前にとっておきの『お下がり』をやるぞ」
カイルが冷ややかな視線を向けるのも気にせず、ゼクスはリーネの腕を乱暴に掴んで、彼の前へ突き飛ばした。
「同盟の証だ。この『泥臭い女』をきみに進呈しよう。我がゼーレ国の王妃には到底ふさわしくないゴミだが、掃除や雑用くらいには使えるだろう。きみの国にはちょうどいいだろう? せいぜい大事にするがいい、ギャハハハ!」
大国の王子のあまりにも品性を欠いた振る舞いに、会場は静まり返った。 貴族たちはゼクスの傲慢さに引きながらも、同時に「聖女を娶る」と豪語する彼に追従の拍手を送る。
突き飛ばされ、床に膝をつきそうになったリーネ。しかし、その体は冷たい床に触れる前に、温かく力強い腕によって抱きとめられた。
カイルは、よろめいたリーネを壊れやすい蝶や花を扱うように優しく、そして大切に抱きしめた。 そして、圧倒的な国力の差を背景に勝ち誇るゼクスを、真っ向から軽蔑の目で見据えた。
「……ゼクス王子。貴殿のその『素晴らしい提案』、私が謹んでお受けしよう」
カイルの声は静かだが、会場の隅々まで響き渡るような、鋼の強さを持っていた。彼はゼクスに背を向け、会場のど真ん中でリーネの前に静かに跪いた。
「カイル様……? 何を……?」
震える声で問うリーネに対し、カイルは彼女の手を愛しそうに取り、その瞳を真っ直ぐに見つめた。
「リーネ様。貴女をゴミなどと呼ぶ者は、真の至宝を見る目がない愚か者だけです。不実な男に尽くし、自分をすり減らす日々は、今日この瞬間で終わりです」
カイルは、リーネの手の甲に誓いの口づけを落とした。
「私の国は小さく、この国のような贅沢はさせられないかもしれない。だが、貴女を心から敬い、慈しむことにかけては、誰にも負けない。……リーネ様。どうか、何も言わずに私と共に来てください」
リーネの目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。自分を「装飾品」としてしか見ない男に踏みにじられてきた彼女にとって、初めて向けられた真実の誠意だった。
「……はい。喜んで、お供いたします」
驚きと感動に震える手で、リーネはカイルの手をしっかりと握り返した。それは、彼女が自らの意志で「誠意を捧げるべき相手」を選び取った、運命の瞬間であった。
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