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不幸の連続コンボ
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ああ、もういっそ死んでしまいたい。
結月は車道を往来する車の流れを暗い目でみていた。
ことの始まりは今月初めの金曜日。
八年付き合っていた恋人から突然別れを切り出された。それもメール一通というお手軽さで。
もちろんそれだけで納得するわけはない。しかし、何度電話をかけても通話拒否。直接家に行っても、留守なのか、居留守なのか彼を捕まえることはできなかった。
翌月曜日、出社した結月を待っていたものは、恋人の結婚報告だった。それも本社の専務のお嬢さんが相手ときた。
恋人とは大学の先輩後輩の関係から始まり、就職した食品会社で再会、新人教育期間にお世話になり、プライベートでお付き合いを始めるまでに時間はかからなかった。
まあ。私が初心だったのもあるだろう。先輩にとってはチョロイ女の子だったわけだ。あとから聞いた話だが、彼は恋多き男だったらしく、次々と女の子を乗り換えていた。今となっては根拠もない思い上がりだが、お付き合いしているときはそんな噂を聞いても、私が彼の恋の遍歴のストッパーで今もこれからも唯一無二の恋人なのだと信じて疑わなかった。
いつのまに二股かけられていたのか。今になって思い返せば、金曜は直帰が多くてデートは絶対してもらえなかったなぁ。なんで信じられたんだろう。
そして、突然の不当解雇。
来月発表を予定していたヨーグルトの新商品が競合商社から非常に酷似した商品を先に発表されてしまったことを受けて、私が産業スパイの疑いをかけられたというのが表向きの理由だった。
でもたぶん本社から圧力がかかったのだろう。こんな下っ端OLのなにを恐れているのか分からない。
恋人を本社の偉いさんのお嬢様に盗られたからって、何かすると思われたのだろうか。それを逆恨みして情報を売ったんだろうって?
そんなことするわけないのに。でもだれも信じてくれなかった。
とぼとぼとアパートに帰れば、大家さんに捕まり、なんと建て替えをするので今月中に出て行ってほしいと言われた。
横暴だと、もっと早くから告知するものじゃないのかと訴えたんだけれど、私と顔を合わせられなかったから仕方がないと逆切れされてしまった。
暗い気持ちで部屋に戻れば、なぜか玄関の扉が開いていた。どきん、と心臓が嫌な音を立てる。そろそろと扉を開けてみると、朝出掛けたときとは部屋の様子が全く違っていた。
乱暴に家探しされた後、土足でフローリングに上がったであろう無数の足跡。
震える手でスマホを操作し、警察を呼んできてもらう。荒い犯行の跡は鍵のかけ忘れに突発の犯行だろうという話だった。幸い貴重品は置いてなかったけれど、元恋人にもらったアクセサリーや金目のものは戻ってこないだろうとも。
なんかもう、ここまでくると笑うしかないというか、こんな不幸の連続コンボってあるのかしら。
東京に住み続ける意味も理由もなくなった。
そうだ、京都に行こう。
警察が引き払ったあと、無意味な部屋に鍵をかける。
迷惑そうな大家さんの前を、パールピンクのスーツケースを引いて、何の縁もゆかりもない京都を目指して結月は歩きだした。
まさかこのあと、新幹線のなかでスマホを紛失し、路頭に迷うとは露知らず。
結月は車道を往来する車の流れを暗い目でみていた。
ことの始まりは今月初めの金曜日。
八年付き合っていた恋人から突然別れを切り出された。それもメール一通というお手軽さで。
もちろんそれだけで納得するわけはない。しかし、何度電話をかけても通話拒否。直接家に行っても、留守なのか、居留守なのか彼を捕まえることはできなかった。
翌月曜日、出社した結月を待っていたものは、恋人の結婚報告だった。それも本社の専務のお嬢さんが相手ときた。
恋人とは大学の先輩後輩の関係から始まり、就職した食品会社で再会、新人教育期間にお世話になり、プライベートでお付き合いを始めるまでに時間はかからなかった。
まあ。私が初心だったのもあるだろう。先輩にとってはチョロイ女の子だったわけだ。あとから聞いた話だが、彼は恋多き男だったらしく、次々と女の子を乗り換えていた。今となっては根拠もない思い上がりだが、お付き合いしているときはそんな噂を聞いても、私が彼の恋の遍歴のストッパーで今もこれからも唯一無二の恋人なのだと信じて疑わなかった。
いつのまに二股かけられていたのか。今になって思い返せば、金曜は直帰が多くてデートは絶対してもらえなかったなぁ。なんで信じられたんだろう。
そして、突然の不当解雇。
来月発表を予定していたヨーグルトの新商品が競合商社から非常に酷似した商品を先に発表されてしまったことを受けて、私が産業スパイの疑いをかけられたというのが表向きの理由だった。
でもたぶん本社から圧力がかかったのだろう。こんな下っ端OLのなにを恐れているのか分からない。
恋人を本社の偉いさんのお嬢様に盗られたからって、何かすると思われたのだろうか。それを逆恨みして情報を売ったんだろうって?
そんなことするわけないのに。でもだれも信じてくれなかった。
とぼとぼとアパートに帰れば、大家さんに捕まり、なんと建て替えをするので今月中に出て行ってほしいと言われた。
横暴だと、もっと早くから告知するものじゃないのかと訴えたんだけれど、私と顔を合わせられなかったから仕方がないと逆切れされてしまった。
暗い気持ちで部屋に戻れば、なぜか玄関の扉が開いていた。どきん、と心臓が嫌な音を立てる。そろそろと扉を開けてみると、朝出掛けたときとは部屋の様子が全く違っていた。
乱暴に家探しされた後、土足でフローリングに上がったであろう無数の足跡。
震える手でスマホを操作し、警察を呼んできてもらう。荒い犯行の跡は鍵のかけ忘れに突発の犯行だろうという話だった。幸い貴重品は置いてなかったけれど、元恋人にもらったアクセサリーや金目のものは戻ってこないだろうとも。
なんかもう、ここまでくると笑うしかないというか、こんな不幸の連続コンボってあるのかしら。
東京に住み続ける意味も理由もなくなった。
そうだ、京都に行こう。
警察が引き払ったあと、無意味な部屋に鍵をかける。
迷惑そうな大家さんの前を、パールピンクのスーツケースを引いて、何の縁もゆかりもない京都を目指して結月は歩きだした。
まさかこのあと、新幹線のなかでスマホを紛失し、路頭に迷うとは露知らず。
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