魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ

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第五章 祈りと迷い

95 王宮へ



 再び目を開けたとき、コレットは外に居た。

 雲ひとつない青い空が頭上には広がっている。いつのまにか夜が開けたらしい。女神はどうやら本当にコレットたちを王宮まで飛ばしてくれたようで、バタバタという足音とともに衛兵たちが近付いて来た。

「お前……!王太子殿下に何を……!?」

 武装した兵士たちはコレットの顔から視線を下ろして蒼ざめる。まだ半ば夢の中のような気持ちで同じように俯くと、腕の中には生気のないレオンが横たわっていた。赤く染まったシャツからして、彼の身に何かが起こったことは明白。

 コレットは震える唇を動かして、衛兵たちを見上げる。女神からの伝言を伝えなければいけない。一刻も早く、対策を打たないと。

「国王陛下を………陛下に、お伝えしたいことがあるのです。お願いします、どうか私を陛下に会わせてください……!」

 男たちは互いに顔を見合わせてどうしたものかと渋る表情を見せる。何人かは走って医者を呼びに向かったようだった。手のひらから僅かだがドクドクと脈打つ鼓動を感じる。レオンは生きている。女神の言葉を信じるならば、眠っているだけ。

(魔の道を塞いだら……そうしたらきっと、)

 祈るように目を閉じる。
 どうか、信じてほしい。血だらけの王子を抱いて突然現れた自分が不審であることは十分分かっているけれど、一刻を争う事態なのだ。ソロニカが連れて行かれて、大きな戦力となるレオンが動けない今、国中の戦える魔法使いを集めないといけない。

 そんな力があるのは、きっと国王陛下ただ一人。



「あらあら、随分と穏やかな顔だこと」

 ザッと道を開ける音がして、コレットは声がした方を見遣る。兵士たちが頭を下げた先には白いマントを羽織った女が立っていた。衛兵たちよりは身分が上なのか、男たちは地面を睨んだままで視線を上げない。

 近くまで寄って来た女は、恐れる様子もなくコレットの膝の上で眠るレオンを観察する。むしろ好奇心すら感じる二つの目には驚いた。

「お休みになっているのね。……それにしても酷い傷、早く手当てしないと使いものにならなくなっちゃうわ」

「あの……!国王陛下にお会いしたいのです!」

 必死の思いで訴え掛けると、女は一つ頷いて後ろの兵士たちを振り返った。

「だそうよ。下がりなさい」

「しかし、この女が何者か分からない以上、陛下の元へお連れするわけには……!」

「揃いも揃ってバカねぇ。そんなの直接聞けば良いでしょう。お嬢さん、貴方のお名前は?」

 溜め息を吐いてコレットに向き直る女の顔は優しい。風が吹いて脱げたフードの下には、衣服と同じ真っ白の髪が束ねられていた。


「コレット・クラインです。プリンシパル王立魔法学校で、教師をしています!」

 女は少しだけ驚いたように目を見開く。

 自己紹介が十分だったのかは分からないが、女は衛兵たちにレオンを運ぶように指示を出すと、コレットに付いてくるように言った。「王の間に案内するわ」と行って歩き出すと、自分の名前はロザリーだと明かしてくれた。


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