魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ

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第一章 魔法学校のポンコツ先生

07 歴代最強



 ーーワイズ・ミドルセン

 コレットの記憶が正しければ、今年百歳になるこの高齢の校長は、今までで最も長い期間プリンシパル王立魔法学校のトップに君臨した者であると共に、歴代最強を謳われる魔法使いである。

 魔力は、プラスの感情を元に使えば光の力を放つ魔法、ネガティブな気持ちを元に、誰かを傷付けるようなマイナスの効果を持てば闇の力を放つ魔術と呼ばれる。

 私利私益のため、悪の道に堕ちた魔術師たちがそれぞれ派生させた魔術を、ミドルセンは光の魔法で相殺することが出来る。セレスティア国内を探しても、魔術の無効化を可能とする魔法使いは数少なく、ワイズ・ミドルセン校長は貴重なその第一人者だった。

 だからこそ、プリンシパル王立魔法学校には強力な結界が張ってある。現役最強を誇る老いた校長の命は、常に世界中の魔術師の標的となっているから。


「………ミドルセン校長、クラインです」

 三度のノックの後、しゃがれた声で返事があった。
 コレットは重厚な扉を押し開けて中へと入る。

 前世においても、この部屋に足を踏み入れたことは数えるほどしかない。確か、今日と同じように勤務日初日。そして、忘れもしないコレットの誕生日。最後に記憶している自分が事故に遭った日の前日のことだ。

 しかし、どうも、事故の当日のことを上手く思い出せない。目が覚めた時はぼんやりとあった記憶も今となっては朧げで、自分の名前を呼んでいた医者のような人物が男だったか女だったかも不明瞭だ。


「よく来たね、クラインくん」

 見上げた視線の先で、机を前にして赤い肘掛け椅子に腰掛けたままのワイズ・ミドルセンが微笑んだ。こんなに穏やかに笑う人が、歴代最強だなんて。

「どうかな?初めての教員生活は?」

 緊張するコレットの前でミドルセンは尋ねる。
 コレットは拳を握ってその目を見据えた。

「とても……!とっても、ワクワクします!」

「ほう。それは良かった」

「生徒たちはみんな高い学習意欲を持っているように見受けられます。彼らに置いて行かれないためにも、私も精進したい所存です!」

「うむ、やる気があるのは良いことじゃ。マルティーナに聞いたところによると、君は魔力がゼロなのかな?」

 マルティーナという名前にすぐにピンと来なかったものの、コレットはそれがプッチ副校長の下の名前であることを思い出した。

「あ、はい!残念ながら……」

「恥じることはない。プリンシパル王立魔法学校の生徒の中には、魔力ゼロでも優秀な成績を収めて卒業した者も数多くおる。魔力が無いならサポート組合に加入して力を貰えば良いだけじゃ」

「サポート組合?」

「おっと、マルティーナが話しておらんかったか?魔力を持って生まれたが魔法使いにならなんだ者たちが自主的に魔力を分けてくれる仕組みがあってな、君のような魔法使いは献血してもらうと良い」

「け、献血ですか……!?」

 何やら痛そうなワードにビクッと震えるコレットを見て、ミドルセンは「すぐじゃよ、すぐ」と言ってホッホッホと笑う。

 サポート組合なんてあったっけ?
 というか、本当に自分は魔力ゼロだったのだろうか。高い魔力を持った大魔法使いとはいかなくても、自分の魔力で魔法を使っていた気がするのだけれども。

「………ほぉ?」

 訝しむコレットを目にしてミドルセンは笑うのを止めた。

「自分の力を知りたいのなら、一度保健室のウィンスター先生に診てもらえば良い。検測器が壊れてなければ正常な値を教えてくれるはずじゃ。もっとも、検測器を破壊するような生徒は今はおらんはずじゃがな……!」

 何が面白いのか、ミドルセンはそこで再び大きく笑う。「ほれほれ行ってらっしゃい」と皺の寄った手で肩を叩かれて、コレットはとりあえず校長室を出た。

 ファイルの中から校内の地図を引っ張り出して保健室の場所を探す。


「ええっと、養護教諭……レイチェル・ウィンスター……」

 ぽわんと思い出すのは白衣を着た赤毛の美女。

「そうだ、レイチェル!」

 コレットの記憶では、保健室のレイチェル・ウィンスターは前世のコレットの良い相談相手だった。二つ年上の彼女は色々な経験が豊富で、くよくよと愚痴を溢すコレットをよく叱ってくれたものだ。

(レイチェル、また会えるのね……!)

 懐かしい友との再会に向けて、硬いコンクリートの床を蹴る。やり直しだろうが逆行だろうが、親しい相手が一緒ならば心強い。

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