魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ

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第一章 魔法学校のポンコツ先生

13 臨時講師

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 一人中庭ではぐはぐとガーリックトーストを食べ終えたコレットは、午後に入って一年一組の生徒たちと共に飛行術と魔法社会学の授業を受けた。

 残るは五限目の魔法史だけ。

 プッチ副校長からは、先任のパウラ・キャリントンが育児休暇のため休職しているので、後任が見つかるまでの間は臨時講師を雇っていると聞いていた。前世では魔法塾の講師をしていた若い女が担当していたと記憶しているけれど、どうやらその辺りも二度目の人生で変更が生じているらしい。

(リンレイ先生? 変わった苗字ね……)

 見慣れない名前に首を傾げながら教室に向かって移動していると、ドンッと人にぶつかった。


「ごめんなさい!」

 コレットは顔を押さえながらすぐさま謝罪する。
 鼻の頭は痛むものの、自分の不注意が恥ずかしい。

 目前に立った男はコレットを見て不思議そうな顔をしている。一つに束ねた艶やかなストレートの黒髪に、あまり見かけない糸目。何処かの異国との混血なのだろうか。

「あの……大丈夫ですか?」

 長い沈黙に不安を覚えて問い掛けると、男はハッとしたように笑顔を作った。

「ああ、すみません。知らない方だったのでついマジマジと見てしまいました。私の後任の方ですか?」

「あっ、はい!コレット・クラインです」

「クライン先生、はじめまして。私の名前はシン・リンレイ。まぁ、挨拶を交わしたところでこの学校も今週一杯なんですけど」

「せっかくなのに残念です。短い間ですが、たくさん吸収させていただきますね!」

「ええ、ぜひ」

 笑顔を浮かべたままのリンレイは、暫くの間また口を噤んでスンスンと匂いを嗅ぐような素振りを見せた。コレットは思わずギクッとする。

 レイチェルにも注意されたガーリックトーストを食べたため、午後の授業が始まる前に念入りに歯磨きはしたつもりだ。幸い、生徒たちからもまだ指摘は受けていない。だけどもしかして、鋭い人には気付かれている?

「な……なにか匂いますか?」

 恐る恐る質問すると、リンレイは「勘違いでした」と言って詫びるように手を合わす。

「勘違い?」

「はい。よく知っている方と同じ匂いがした気がしたんです」

「え? へぇ………」

 いったいそれが誰なのかは見当も付かないものの、きっと相当なニンニク臭を放つ人なのだろう。自分を棚に上げて、見知らぬ相手に同情を示しつつ、コレットは安堵の息を吐いた。

 リンレイはセレスティア王国から遠く離れた東の国から仕事を求めて移り住んで来たらしい。異国の地で教員を務めるなんて、言語や文化などの違いを考えると、とんでもないことだ。


「すごいですね……」

 素直な感想にリンレイは首を傾げる。

「べつに普通ですよ。人間誰だって、目的のためなら頑張れるでしょう?」

「そこまで教育に真摯に向き合えるのすごいと思います……私、実は三回試験に落ちて四回目で採用されたんですけど、リンレイ先生も諦めずに本採用目指して頑張ってください!」

「そうですね、またこの学校に戻って来るために頑張ります」

 コレットはリンレイと握手を交わす。

 プリンシパル王立魔法学校に限らず、魔法学校を卒業した者の進路として、教師は特に人気があるわけではない。むしろ、業界の教員不足は結構深刻で、学びたい生徒の数に対して教員の数が足りないことは随所で問題視されていた。

 いつか、もう少し先の未来、同じ魔法史を専門とする者同士としてリンレイのような強い志しを持った人と一緒に働けたら良いと思う。吸収するだけではなく、知識を与える側として。

 
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