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第一章 魔法学校のポンコツ先生
15 結晶と操縦
魔力切れ?なんで今?
結界の穴を塞いだ程度でコレットの魔力は底を尽きてしまったということだろうか。あれだけで使い切ってしまうとは到底思えないのだけど。
「クライン先生!前にっ……!」
アストロの声に顔を上げた瞬間、間近に迫った黒い羽がコレットを後方に吹き飛ばした。頭の後ろに強い衝撃を感じて、そのままずるずると床に崩れ落ちる。
「………うぅ、」
「先生!大丈夫かよ!?」
「だいじょーぶ……痛いけど」
攻撃の強さのわりに身体への負担はそこまで無い。考えなければいけない。反撃出来なくても、他の先生が来るまでなんとか生徒たちを守らなければ。
どうしたものか、と頭を悩ませていたら視界の隅でノエルがふらりと立ち上がるのが見えた。驚いてそちらへ顔を向ける。
「ノエルくん……!座ってて!」
「倒す算段でもあるんですか?」
冷静な声にコレットは言葉に詰まる。
「ない……けど、生徒に戦わせるわけには、」
「そんな綺麗事言ってる場合じゃないですよ。使えるものは全部使ってでも撃退した方が良い」
「分かってるわ!でも、もう少しだけ粘らせてほしいの。今の私でも注意を引き付けることぐらい出来るから!」
「注意……? 何を───」
ノエルの言葉を待たずにコレットは床に転がっていた箒をカラスの方へと投げた。それは赤い目の近くに当たって、こちらに背を向けていた巨体が再びゆっくりと振り返る。
「先生なんで魔法を使わないんだよっ!そんなの魔力を載せて攻撃すりゃもっと効果が、」
「うん、そうだよね……でもごめんね、ファッジくん。先生実は、魔力がゼロなんだ」
「はぁ……!?」
奇声を上げながらブンッと振りかぶった黒い翼をなんとか避けながら声を張り上げる。
「みんなに知られるの恥ずかしくて言ってなかったんだけど、本当は貴方の言う通りポンコツなの。だけどね……」
大きく開いた嘴が目前に迫ってくる。
咄嗟に払った拍子に、腕に鋭い痛みが走った。
怖いし、泣き出したい。自分の力でどうにもならないことはよく分かっている。だけれど、いくらノエルやアストロが魔力を持っているとしても、まだ未熟な彼らの手を借りるわけにはいかない。ただでさえアストロは、彼の力をコントロール出来ていないことが分かっているのだから。
足に力を入れて姿勢を正す。
「弱くても、ポンコツでも……私は貴方たちの先生よ。生徒を守ることを放棄したりしない」
もっと強い魔力があれば、この場を切り抜けるだけの賢い頭脳があれば。たらればの言葉はいくつでも頭の中に浮かぶ。だけどもコレットはコレットにしかなれない。
それならば、今の自分でベストな結果を出す方法を探すしかない。
何度目かの攻撃を喰らって吹き飛ぶとき、黒い巨体の一部が妙に盛り上がっていることに気付いた。よくよく目を凝らすと、尖った何かが羽毛から突き出している。
「………っ、結晶だわ!」
「え!?」
「カラスの首の付け根、うなじの辺りに魔力の結晶があるみたい!深く削ぐか、首を落として分離すれば、もう身体は動かないはずよ!」
「そんなのどうやって、」
途中で聞こえなくなったアストロの声に目を遣ると、小さな少年はノエルにもたれかかるようにして目を閉じていた。
「ファッジくん……!?」
驚いたコレットの前が突然真っ暗になる。
回り込まれたのだと気付いたときには、すでに燃えるような灼熱が自分の周りを包んでいた。チリッと皮膚の表面が熱を持ち始める。このまま丸焼きにされてしまう。こんなことなら、もっと鶏肉を食べておけばよかった。
そんなバカなことを考えていたら、バタバタとこちらに走って来る足音が聞こえた。ミナが呼んでくれた教師たちがこの場所を見つけてくれたのだろう。
「ノエルくん……ファッジくんをお願いね」
果たして伝わったのかは分からないけれど、なんとか力を振り絞って言葉を紡ぐ。二度目の人生が一週間も続かなかったなんてお笑い種だが、まぁボーナスステージみたいなものだったし仕方ないか。
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