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第一章 魔法学校のポンコツ先生
17 ドライブ
レイチェルの愛車は黄色い小さな二人乗りのもので、彼女らしい丸いフォルムが可愛いと思った。慣れた様子で自分の荷物とコレットの鞄をトランクに仕舞うと、バタンと扉を閉める。
「今更だけど魔法使いが車で移動って不思議よね」
ふふっと笑いながらそう言われて、コレットは「確かに」と相槌を打った。
魔法薬学のピクシー・ベルーガもそうだが、通勤の際はほとんどの教師が何かしらの乗り物に乗って来る。学校では飛行術の授業があって、学習の一環としては空の飛び方から瞬間的な移動の方法まで習うのだけれど、魔力を使った移動はいかんせんコスパが悪い。魔力とて無限に溢れ出るわけではないので、日々の移動如きに使っていたら、いざ本当に必要なときに枯渇した状態になってしまうのだ。
頭の中で考えながら、コレットは自分の魔力を使い切ってしまったことを思い出した。運転するレイチェルに一通りの経緯を話して、再度供給を受けることが出来るか確認する。
うーん、とあまり好ましくない唸り声が聞こえた。
「発注は掛けておくけど、来週になっちゃうかもしれないわ。今回みたいな事件に備えて自衛したいなら、ミドルセン校長に携帯出来る武器を頼んでみると良いかも」
「武器?」
「ええ。私もあまり魔力のコントロールが上手い方じゃないから、魔力を実装した小型の銃は所持してるわ。いざとなったら自分の身ぐらいは守れるようにね!」
「そうね……検討してみる。ありがとう」
魔力を宿した武器の存在については、コレットも聞いたことがあった。通常であれば魔法使いは自分の魔力を自由自在に操って、正の魔法を掛けたり、生活の利便性を向上するために使ったりする。
だけど、確か数年前から国は魔力を道具などに実装して一般人でも使えるようにする研究を進めていた。応用魔法学と呼ばれるそれは比較的新しい研究で、コレットは教員採用試験を受けるにあたって何度もこの分野で涙を呑んだ。それぐらい難解な研究なのだ。
もうすでに一般化されてるなんて。
前世の記憶を辿っても、コレットが魔力を融合した武器を所持していた覚えはない。やはりどうも、記憶との間に差異が生まれている気がする。自分の頭が信用に足るのか、分からない。
「大丈夫?」
赤信号になって車は静かに停車する。
心配そうなレイチェルの声に頷いて返した。
「結局、今日の一件は何だったのかしら?カラスの首元に核があった気がするんだけど、先生たちは何か言ってた?」
「ああ、あれね。結晶化した魔力はなかなか融解出来ないから検証が難しいんだけど…… 幸い、頼れる人が居てね。一度お願いしてみようって話になったのよ」
「そう…… 誰の魔力か分かれば、犯人についても知れると思うから待つしかないわね」
「うん。偏屈な彼が素直に引き受けるかちょっと不安はあるけど」
「え?」
「ふふっ、こっちの話」
レイチェルは軽やかに笑うとアクセルを踏み込む。車通りの少ない道路の上を、黄色い車は小さな星のようにスイスイと進む。
ようやく見慣れたアパートメントに到着したときには時刻は零時をとっくに過ぎていて、コレットは何度もレイチェルに謝罪と感謝を伝えながら手を振って別れた。
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