魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ

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第一章 魔法学校のポンコツ先生

22 他人の空似



「か~わいくないわ~~」

「こら、止めなさい。また何かあったの?」

 保健室のベッドに突っ伏してバタバタと脚を振るコレットを軽く叱って、レイチェルが問い掛ける。白衣の下に淡いパープルのワンピースを着た彼女は、今日も今日とて可憐だ。

 コレットがもしもレイチェルぐらいの素晴らしいプロポーションだったら、生徒たちももっと素直に懐いてくれただろうか、とぼんやり考える。おそらく見た目の問題ではないけど、多少なりとも結果は違うことだろう。


「クラスに……食えない生徒が一人居て」

「なんて子かしら?私も知ってる?」

「ノエルくんよ。金曜の襲撃のときに悪ガキと争ってたクールな転校生」

「あーはいはい、あの子ね!」

 レイチェルは手をパンッと叩くと、何かを思い出したように微笑んだ。不思議に思うコレットの前で、赤い紅の塗られた唇が開く。

「あの男の子、昔の知り合いに似てるの」

「え?ノエルくんが?」

 驚いて起き上がったコレットの目を見て、レイチェルは小さく頷いた。

「ええ。他人の空似だって分かってるんだけど、彼を見たら自分が学生だった頃を思い出すわ。よく一緒につるんでたのよ。まぁ、向こうは私たちに囲われて迷惑してたかもしれないけどね」

「レイチェルに話し掛けられて嫌な気になる人なんて居ないわよ。私なんてまだ就任して一週間なのに、なんだかすでにクラスの半分に煙たがられてそう……」

「悲観し過ぎよ、コレット!来週には三年生たちも学校に帰って来るし、貴女の授業数もドッと増えるわよ~」

「うげっ………忘れてた」

 そうなのだ。

 プリンシパル王立魔法学校の三年生とその担当教諭たちは先月から揃って校外学習に出ているらしく、コレットはまだ顔を合わせていない。一度目の人生の記憶から、なんとなく顔や名前は思い出せるものの、最近では新たに覚えることも多く、頭の中で記憶がごっちゃになっているのも本当。

 死んだ時の衝撃や痛みも、今となっては朧げにしか思い返すことが出来ない。これがコレットの頭のスペックの問題なのか、それとも時戻りが大抵そういうものなのかは分からない。


「まぁ、落ち込まないで。気合い入れていきましょう!夏に向けてイベントも増えるし、夏休みに入ったらもうこっちのものよ!」

「あぁ~~夏休みの課題まだ考えてなかったわ!小テストの丸付けも終わってないし、泣きそう」

「ふふっ、がんばって!コレット先生!」

 ニコニコと笑みを浮かべるレイチェルに背中を押されてコレットは保健室から出る。

 魔法学校の夏休みは、おおよそ二ヶ月ほどあって、学生たちはそれぞれ家族や友人と避暑地に旅行へ行ったり、魔法学校が有志を募って開催するサマーキャンプに参加したりする。教師としては、このサマーキャンプの担当に当たったら地獄で、せっかくの夏休みの貴重な一週間がボランティアのために泡と消えてしまう。

(絶対に今回は当たりたくない……)

 そう、何を隠そうコレットは前世でこのサマーキャンプの担当として駆り出された。真夏なのにどういうわけかセレスティア最北端の極地にある雪山で雪男を探す、という意味不明な目的を持ったキャンプで、発案者である魔獣生態学のルピナス・アーベルと共に二時間ほど遭難したことを憶えている。

 今回はサマーキャンプを回避したい。
 せめて雪山遭難だけでも、どうか。

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