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第二章 夏の宴と死者の森
28 写真
そよそよと開いた窓から風が吹き込む昼過ぎ。
コレットは保健室で一人横になっていた。部屋の主人である養護教諭レイチェル・ウィンスターは「喉が渇いたから購買へ行く」と行って出て行ったっきり、戻って来ない。おそらく何処かで男子生徒にでも捕まっているのだろう。
「あぁー暇だわー」
献血後は安静に、というレイチェルからの指示のもと、こうして休んでいるわけだが、話し相手も不在では面白みもない。
そうこうしているうちに開きっぱなしの窓からブーンと嫌な羽音が聞こえ、目を向けた先には子供の拳ほどの大きさがある蜂が飛んでいた。
「んぎゃっ!?」
慌ててベッドから飛び降りる。
自然豊かな魔法学校の特性上仕方のないことなのかもしれないけど、王都に位置するにも関わらず、校内にはとにかく生き物が多い。加えて、たまに授業や熱心な生徒たちによる自主学習で、魔法の作用によって大きくなったりした虫がその辺を普通に徘徊していたりするので気が抜けない。
今回の蜂も例に漏れず、どうやら魔法の犠牲になった状態のようだった。以前遭遇したカラスのように変な魔力は感じないから、単にサイズアップした個体なのだろう。
しかし、蜂は蜂。
出来れば退室願いたい。
ベッドを仕切るカーテンを盾にして分厚いファイルでバタバタと煽いでいると、なんとか蜂は向きを変えて窓から外へと出て行ってくれた。ほっと安堵するコレットの顔を強い風が撫でて、机の上に置かれたプリントが舞い上がる。
「あっ………!」
伸ばした手の隙間を擦り抜けて一枚の紙が床に落ちた。拾い上げるとツルンとした肌触りのそれは随分と色褪せた写真だ。
「レイチェル……と、誰?」
映っていたのは四人の男女。
ニコニコと笑顔で極太の注射器を二本持って笑う、今より若いレイチェル。彼女の足元には二人の男の子が恐怖の顔で跪いている。古い写真なので詳細までは分からないが、そのうちの一人はノエルに似た面影があった。そして、三人から少し離れた場所には腕を組んで困ったように笑う黒髪の少年の姿。
勝手に探るのは良くないと、我に帰ったところで保健室の扉が開いて、レイチェルの声が聞こえた。
「あら、もう授業の時間?」
「あ、ごめんなさい。風が吹いて落ちちゃって……」
コレットが手に持った写真を見て、美しい養護教諭は目をぱちくりとさせる。
「忘れてた。手紙を書こうと思って、そのままだったのね。拾ってくれてありがとう」
セピア色の写真がレイチェルの元へと渡る。そこに映ったメンバーについて聞いて良いものか、コレットは頭を悩ませた。二つ上の彼女は、確か王立魔法学校を卒業していたはず。
目を泳がせて黙り込むコレットを見て、友人はフッと口元を緩めた。
「何が聞きたい?貴女って分かりやすいわ」
「………ごめんなさい」
「良いのよ。私に興味を持ってくれてるってことでしょう?そういうのって大歓迎。ちょうど冷たい飲み物も買って来たし、お茶にしない?」
そう言ってレイチェルは手に持ったココアの瓶を振って見せる。コレットは大きく頷いて、お礼の言葉を伝えた。
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