魔法学校のポンコツ先生は死に戻りの人生を謳歌したい

おのまとぺ

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第二章 夏の宴と死者の森

32 モノクロのヒーロー



「えー!先生って普通学校の出身なの?」

 驚いたように大きな声を上げるミナにコレットは頷く。

 昼食を食べた一年一組の生徒たちは、それぞれ好き勝手に昼休みを過ごしている。ミナ、ヴァレリー、アニアの女子三人は今日は室内で居たい自分らしく、揃って教卓を囲んでいた。

「先生の出身であるマゼンタスはそもそも王立魔法学校がないし、私立の魔法学校って学費がとっても高いのよ。そこで、普通科に併設された魔法科コースに入ったってわけ」

「なんか……苦労したのね」

「苦労ってほどではないけど」

 同情するような目を向けるヴァレリーとミナに返事をしていると、アニアが何やら顔を輝かせているのを見つけた。どうしたのかと名前を呼んでみる。

「アニア?」

「先生、私……先生みたいな教師になりたいです!」

「へ?」

「コレット先生はすごく努力家です!お家も決して太くなくて、恵まれた環境ではなかったのに、夢だった仕事に就くために…… 二回落ちても諦めないなんて!!」

「………三回ね」

 四度目の正直で受かったコレットは頭を掻きつつ訂正する。アニアのことだからきっと本心で感心してくれているのだろうけど、あまり自分が威張れる教師ではないのも事実。

 だけれど、可愛い教え子が同じ夢を抱いているのは嬉しいことだ。特に、アニアのような恥ずかしがり屋がそれを言葉で伝えてくれるなんて。


「先生ね、目標にしていた人が居たの」

「目標……?」

「うん、」

 遥か昔の若い自分を思い返しながら窓の外に目を向ける。

 青い空を二つに分断するように飛行機雲が伸びている。何処までも伸びる限りない白、何者にでもなれる色。希望と可能性に満ちた色。


「私がちょうど貴女達ぐらいの時にね、たまたま目にした新聞にプリンシパル王立魔法学校が紹介されていて…… ある学生がインタビューに答えてたのを読んだの」

「先生も新聞とか読むのね」

「図書館で暇だったから少し手に取っただけよ。ともかく、そこには在籍中の学生による受け答えが掲載されてて、誰だか知らないその生徒の言葉に私はビビビッときたってわけ」

「なんて書いてあったの?」

 頬杖を突いたままでミナが首を傾げる。
 コレットは前屈みになって丸い目を覗き込んだ。

「“魔法は光、人の世を切り拓く”」

 ハッとしたように目を見開くミナに、あの頃の自分の姿が重なった気がした。ただでさえ魔法使いの少ない片田舎で、自分の可能性を疑いながら学んだ学生時代。

 プリンシパル王立魔法学校のような魔法専門の学校ではなかったから、より深い知識を付けることは出来なかったけれど、故郷では少数派だった魔法使いという道を選ばせてくれた両親には感謝すべきだろう。


「ふぅん。先生にとっては偶然見掛けた魔法使いの生徒が、憧れってことね~」

「えぇっ!? じゃあ先生は、その記事を見てプリンシパル王立魔法学校の先生になったんですか?」

 ヘーゼルの瞳をキラキラさせてそう言うアニアにコレットは頷く。

「うん。幼いながらに感銘を受けたのよ」

「それで、その生徒には出会えたの?」

「いいえ…… 名前も載ってなかったから誰だったか分からないの。プリンシパルみたいな有名学校が特集されるなんて珍しいことでもないし、なかなか探すのは難しくって」

 首を振りながら答えたら、三人の女子生徒は残念そうに「なんだぁ」と項垂れた。

 コレット自身も出会えるものなら会ってみたい。もう何年も前の話だから、件の生徒はとっくに魔法学校を卒業して一流の魔法使いになっているだろうけど。
 白黒の写真で見た姿を思い浮かべて、フッと頬を緩める。

 実際に会うことが出来なくても、今までコレットの心の支えになってくれただけで感謝すべきこと。まだ若い一年一組の生徒たちにも、そんな存在を見つけてくれれば良いと思う。

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