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第二章 夏の宴と死者の森
43 マゼンタス6
「みんなおはよう。あれ?アーベル先生は?」
「まだ寝てる」
アストロの返答にコレットはずっこける。
穏やかな朝食時間。
あらかじめ買っておいたパンとチーズが配布されて、生徒たちはそれぞれが好みでジャムやバターを塗って食べている。必死の思いで買い出しに行った甲斐があったというもの。
いよいよ今日からチームを組んで赤い森の捜索に入る。同じマゼンタス出身であるコレットも足を踏み入れたことがない土地なので、なんとも言えない緊張感は感じていた。
アーベルの事前調査の通り、赤い森では行方不明者が毎年数名出ている。森自体がかなり規模が大きく、加えて生い茂った木々が視界を塞いで道を見失いやすいのだ。そんな場所に素人同然の自分達が挑んで問題ないのか、と言われれば困るのだけれど。
「えー!リンレイ先生、登山が趣味なの?」
驚きに満ちた高い声の方を見ると、一年生の女子たちに囲まれてリンレイがニコニコと話していた。
「先生はワコンの出身なんですよね?私の父がワコンからの陶器を扱う仕事に携わっているんです」
「そうなの、イヴリン?陶器ってどんな?」
「ワコンは美しい絵柄の入った白磁機の産出国として有名なのよ。まだセレスティア国内では出回っていないけど、芸術品にうるさい貴族からは人気だから、オークションで高い値が付いたりするみたい」
「そうなんだぁ。今度お父様に聞いてみなきゃ」
おっとりと相槌を打つアニアの隣でミナも目をキラキラと輝かせている。もしかしなくても、平民出身かつ堕落した生活を送っている自分はここにいるどの生徒よりも無知かもしれない。
魔力ゼロのポンコツ先生、という汚名を返上するために二度目の人生を生きる決意をしたのだから、もう少し積極的に色々と挑戦すべきでは?
(今日の捜索活動では教師らしく……!)
静かに気合を入れてぎゅっと拳を握っていると、背後でフッと笑い声がした。
「また気負ってるんですか?」
「……っ、ノエルくん!」
昨日あんな場面を見せてしまった手前、若干の気まずさは感じるものの、相手は気にしていない様子。アストロとバロンに挟まれた彼は今日も子供らしくないスンとした表情を浮かべている。
「私のことは置いといて、今日は捜索チームの発表があるでしょう?みんなと仲良く一緒に協力しあってちょうだいね。単独行動は禁止!」
「はいはい」
「返事は一回!」
注意するコレットを遮ってアストロがノエルに話し掛ける。この二人が敵対し合わなくなったのは良いことだけど、交友関係の広がり故かノエルが若干捻くれて来たような気もする。
ううむ、と唸っていたらドスドスと廊下から足音が響き、勢いよく部屋の扉が開いた。
「おはよう諸君!朝だっ!!」
「そうですね。どう見ても完全に」
呆れ顔のバロンが窓の外を指差しながら言うと、三年や二年もそれを聞いてドッと笑った。アーベルは後ろ頭を掻きながら、丸まった大きな紙を壁に広げていく。「チーム組分け表」という文字を見て、生徒たちが静まり返った。
サマーキャンプ残りの六日間は今日発表されるチームで行動を共にすることになるため、組分けはかなり重要な意味を持つ。
「今年の参加者は十六名、教員は助っ人のリンレイ先生を含めて三人だからチームを三つに分けようと思う!」
そう言ってバンッとアーベルは黒板を叩く。
「先ず、チームアーベル!誇り高きこのチームには一年生からゴンザレス・フィンとミナ・レイトン、イヴリン・ランカー、二年からはロビン・ウッド、それに三年のハビエル・グリッド」
「残念。コレット先生のチームじゃないみたい」
ミナが肩を落としてこちらを見上げる。
隣ではアニアも不安そうに手を組んでいた。
十五人の生徒は各学年入り混じって五人ずつ三つに均等に分けられる。続くリンレイのチームには一年からバロン、アストロ、ローリー、二年からはヒューゴとニックが参加することになった。
「じゃあ……私のチームは、アニアにノエルくん、モモに二年生のナナ、三年生のケリーくんね!」
「よかった……!ノエルくん、私たちはコレット先生のチームだから安心だね!」
嬉しそうに頬をゆるめるアニアにこちらまで嬉しくなるも、ノエルは相変わらず表情の変化がない。ナナやケリーといった上級生のリードに期待しつつ、コレットはチームのメンバーを呼んだ。
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